高齢者ほど食べた方が良いもの3選、絶対飲むべきものナンバーワンは?【医師が教えるコレステロールの真実】

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「高齢になったらコレステロール値を上げる食品は控えなければ」と思っていないだろうか?実は、食品の摂取がコレステロール値の上昇に影響する部分は大きくなく、むしろ低コレステロールは健康に悪影響を及ぼす可能性もある。高齢者医療の専門家である和田秀樹氏が、健康寿命を延ばしたい高齢者こそ積極的に牛乳を飲むべきだと指摘する。※本稿は、和田秀樹『医師が教える長生きする牛乳の飲み方 たんぱく質をおいしくとって健康寿命をのばす!』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。
コレステロール値が上がるから
牛乳は危険というウソ
血糖値、血圧、コレステロール値。どの数値も年を重ねれば重ねるほど高くなりがちですが、できれば低く抑えたほうがいいと思っていませんか?
そして数値を気にするあまりに、あれも食べないほうがいい、好きだけど少しだけにする……と自分の体のためだと思って、我慢している人も多いのではないでしょうか。でも我慢を続ける人生は果たして本当に正しいといえるのか。またその人生は充実しているといえるのでしょうか。
特に、生活習慣病や心・脳血管系の病気のリスクが心配で、コレステロール値の検査結果に一喜一憂している人がかなり多くいる印象を受けます。動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞など、病名が並んだだけでも嫌な感じですよね。
コレステロール値を上げる食品は?と聞かれてイメージするのは脂身の多い肉や乳製品という人も多いでしょう。こうした理由から、牛乳はコレステロール値が高いものとして嫌われるのです。
しかし結論からいうと、コレステロールは食事では増えません。
コレステロールが多く含まれている食品を食べると、一定量までは「コレステロール値」は確かに上がります(図1参照)。しかしそれを超えると変わらなくなります。一定量まで増えた値を「天井値」といい、それに達するとその後はまったくといっていいほど増えません。

同書より転載
コレステロール値が低いと
がんになる確率が上がる!?
そして、コレステロール値の出元は食品に含まれると思っているかもしれません。だから「コレステロール値の高い食品を食べ過ぎると値が上がってしまう」という恐怖に怯えるのでしょう。
しかし実際は、コレステロールのおよそ8割が体内でつくられ、残りの2割だけが食物を摂取することでつくられます。ですから、コレステロールの多い食事をしても、少ない食事をしても、血中のコレステロール値はさほど大きな差が出ないのです。
つまり、肉や乳製品を食べるとコレステロール値が上がるから食べられないというのは、無駄な心配なのです。コレステロール値が上がるのは食事よりも、むしろ運動不足や喫煙、アルコールといったほかの要因が大きいということを知っていただきたいと思います。
とかく嫌われがちなコレステロールですが、なぜこんなにも嫌われているのかというと、かつて「コレステロール害悪説」が広まったからです。
1948年にアメリカで始まったフラミンガム研究によると、アメリカでは心筋梗塞で亡くなる人が最も多いことがわかりました。それを減らすためにさまざまな研究が行われたのですが、心筋梗塞にはコレステロールが深く関係しているという調査結果が導き出されました。
当時はアメリカの医学は最前線でしたから誰もが信じ、「コレステロールは悪いものだ」という考え方が浸透したのです。
ところが1993年に発表された追跡調査によると、60歳まではコレステロール値が高いほど死亡率が高いのですが、60歳を過ぎると死亡率が下がり、さらにコレステロール値が下がると、がんのリスクが高まるという結果が出ました。
このことからもわかるように、先の調査の最新の研究結果を知らない知識のなさによって「コレステロール害悪説」が誕生。それを信じたまま、コレステロールを多く含む乳製品が嫌われてしまうという流れが出来上がりました。
牛乳で五大栄養素が
バランスよくとれる
赤ちゃんの成長を支える栄養は母乳かミルクに委ねられています。その理由は、必要な栄養素がバランスよく含まれているから。それがたんぱく質、炭水化物(糖質)、脂質、ビタミン、ミネラルの主要五大栄養素です。
これらは赤ちゃんの健康な成長や健やかな発達になくてはならない栄養素なのです。このように、それだけで生きていける食品のことを「完全栄養食」といいます。
では牛乳は完全栄養食だと思いますか?正解は「限りなく完全栄養食に近い食材」といえると思います。というのも人間が生きていくのに必要な五大栄養素が含まれていますが、不足している栄養素もあるからです。五大栄養素とは次のうちの5つです。
(1)たんぱく質
筋肉、皮膚、髪、爪などの体の組織の成長と修復に不可欠。また、抗体や免疫細胞の一部もたんぱく質が材料になっているため、免疫機能を高める役割もあります。ほかにも必要に応じてエネルギー源としても使われ、体のあらゆる場所で重要な役割を担っています。
(2)炭水化物
主な役割はエネルギー源。また、牛乳に含まれる炭水化物(糖質)の一部は腸内で発酵して腸内細菌のエサとなって善玉菌を増殖。その結果、腸内環境を整えることにもひと役買ってくれます。
(3)脂質
エネルギーの供給源になるほか、細胞やホルモン、免疫細胞などの材料となります。またビタミンの吸収を助けるという役割もあります。

『医師が教える長生きする牛乳の飲み方 たんぱく質をおいしくとって健康寿命をのばす!』 (和田秀樹、アスコム)
(4)ビタミン
ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンDが多く含まれます。ビタミンB2とビタミンB12はエネルギー代謝を助ける大切な使命があります。またビタミンDはカルシウムの吸収を助けてくれます。
(5)ミネラル
カルシウム、カリウム、リンが豊富で、カルシウムとリンは骨や歯の健康に不可欠です。カリウムは体内の水分バランスを整えてくれます。
五大栄養素が含まれているということは、人間が生きていくために必要な基本的な栄養は摂取できます。体の成長やエネルギーの供給、細胞の修復、骨の健康など重要な役割を果たしていることには間違いありません。
しかし、あくまでも主要栄養素で、食物繊維をはじめ、免疫機能のサポートや抗酸化作用があり補酵素となるビタミンCやビタミンE、体内に酸素を運ぶ赤血球の生成に必要な鉄分はほとんど入っていません。
こうした理由で、牛乳は体にいいからといつも単体で飲むのではなく、ときにはほかの食材を合わせてとることが大切になります。牛乳を中心にさまざまな栄養を網羅できる食生活を、ぜひ目指してください。