【後期高齢者医療】《2割負担の人》10月1日から自己負担が増える?「配慮措置の終了で75歳以上約370万人に影響か」

2025年9月末に75歳以上向け2割負担の「配慮措置」が終了するのはご存知でしょうか。制度のポイントと負担増への備えを解説します。

後期高齢者医療「2割負担」ができた背景, 「2割負担」の対象者はどんな人?高額療養費制度の活用も, 高額療養費制度のしくみ, 配慮措置の終了で「自己負担額はどれくらい増える?」, 正しい制度理解で、今の不安を未来の安心につなげよう

【後期高齢者医療】《2割負担の人》10月1日から自己負担が増える?「配慮措置の終了で75歳以上約370万人に影響か」

日本の医療制度は、年齢や所得によって自己負担の割合が異なります。2022年10月からは、75歳以上で一定以上の所得がある方を対象に、医療費の窓口負担が2割に引き上げられました。

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それぞれの年代の自己負担割合について

しかし、急な負担増を避けるための「配慮措置」が設けられており、これが2025年9月末に終了します。これまでの負担増抑制策がなくなることについて、それってどうなの?と疑問に思う方もいるかもしれません。今回は、この「2割負担」ができた背景と、配慮措置終了後の家計への影響、そして負担増に備えるためのポイントを解説します。

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後期高齢者医療「2割負担」ができた背景

2022年に一定以上の所得がある方を対象に窓口の負担割合の見直しは行われたが「そもそも、なぜ見直されたのか」背景をみていきましょう。

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現役世代の負担がさらに大きくなることが懸念

令和3年度から7年度にかけて、75歳以上の人口は約300万人増える見込みです。背景には、団塊の世代が75歳以上になりはじめ、医療費の増加と現役世代の負担拡大が懸念されたことがあります。

同じ期間に、現役世代からの支援金は約1.3兆円増えて、令和7年度には約8.1兆円に達すると予想されていました。このまま見直しがなければ、医療費の財源の多くを現役世代が支え続ける構造が強まり、若い世代の負担がさらに重くなります。

そこで、後期高齢者医療制度では、これまで75歳以上の多くは1割負担でしたが、一定以上の所得がある人は「2割負担」に変更されました。この見直しにより医療制度の持続可能性を高め、所得に応じた公平な負担と現役世代の負担軽減を両立することが目的とされたのです。

「2割負担」の対象者はどんな人?高額療養費制度の活用も

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後期高齢者の窓口負担割合及び高額療養費自己負担限度額

2022年10月から75歳以上の医療費の自己負担に「2割区分」が新設されましたが、その対象である「一定以上所得者」とは以下の通りです。

「一定以上の所得」→課税所得が28万円以上145万円未満の方

年金収入+その他の合計所得金額で、

・単身世帯なら年収約200万円以上

・夫婦ふたり暮らし世帯なら年収約320万円以上

この「一定以上所得者」は、後期高齢者の約2割にあたる約370万人にのぼります。もともと1割だった医療費の窓口負担が2割へと引き上げられたため、外来医療については月3000円までにおさえる「配慮措置」が導入されてきました。

ただし、この配慮措置は2025年9月30日で終了予定です。その後は負担軽減がなくなる分、自己負担が急に増える可能性もあります。

医療費が高額になったとしても「高額療養費制度」によって自己負担の上限は設けられています。事前に「限度額適用認定証」を窓口に提示すれば、はじめから自己負担限度額までの支払いで済みます。

高額療養費制度のしくみ

高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その超えた分が健康保険から払い戻される制度です。これにより、高額な医療費を支払うことになっても、家計への負担が軽減されます。

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《70歳以上》自己負担の上限額

70歳以上の方も、この高額療養費制度の対象です。所得や年齢、入院・外来の別によって自己負担の上限額が決められており、例えば「一般」所得の方は、外来の負担上限が月1万8000円、入院と合わせると5万7600円となります。「限度額適用認定証」を事前に取得して窓口に提示すれば、はじめから自己負担限度額までの支払いで済みます。提示しない場合は、一度は医療機関や薬局で全額を支払う必要があるため、後から払い戻しを受ける形になります。

外来のみの場合は配慮措置の方が優先されていたため、この配慮措置が終わることで、今後は支払額が増える月が出てくる可能性があります。

配慮措置の終了で「自己負担額はどれくらい増える?」

2割自己負担の配慮措置が9月30日に終了した後、「負担はどのくらいに増えるのか?」試しに計算をしてみます。例えば、1か月の医療費が合計11万円で、A病院に2回、B病院に1回かかった場合で考えてみましょう。

内訳は、

・A病院(1回目)医療費5万円/2割自己負担額1万円

・A病院(2回目)医療費4万円/2割自己負担額8000円

・B病院で医療費2万円/2割自己負担額4000円

→医療費は合計11万円で、本来の2割負担だと窓口で支払う金額は合計2万2000円になります。

配慮措置適用中は自己負担の増加額が月3000円に抑えられていたため、配慮措置適用中の窓口での支払いは合計1万6000円でしたが、高額療養費制度を利用すれば、最終的な自己負担額は1万4000円となります。

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例:1か月の間に計3回、複数の医療機関を受診した場合

しかし、措置終了後はこの上限がなくなるため、本来の2割負担である2万2000円を窓口で支払うことになります。結果的に、このケースのような場合だと配慮措置の終了後は負担が月に8000円程度増える可能性があるといえます。

通院頻度の高い高齢者の方にとっては、配慮措置終了後の負担増がじわじわと家計に影響を及ぼすかもしれません。高額療養費制度の活用も踏まえ、ご自身の医療費負担がどう変わるのか、改めて確認しておくことが大切ですね。

正しい制度理解で、今の不安を未来の安心につなげよう

今回は「2割負担」区分ができた背景などもふまえて後期高齢者医療制度やこの配慮措置終了について解説しました。2025年9月末で医療費2割負担の「配慮措置」が終了し、対象となる約370万人の負担額が増える可能性があります。しかし、国の制度を正しく理解し、事前に備えておくことで、未来の不安は大きく軽減できます。ご自身の所得区分や、もしものときに活用できる高額療養費制度、そして事前に申請できる「限度額適用認定証」の存在を改めて確認してみましょう。いざというときでも慌てずに、安心して医療を受けられるように、今から準備を始めることが大切です。

参考資料

・厚生労働省「医療費の自己負担について」

・厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

・東京都後期高齢者医療広域連合「自己負担割合が「2割」となる方への負担軽減(配慮措置)」

・政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」