年間734杯食べた「ラーメン大好き芸人」の情熱

無類のラーメン好きとして知られる、お笑いトリオ「や団」の中嶋享さん。昨年は734杯を完食した。ラーメン愛にあふれた半生を聞いた(筆者撮影)
ラーメン好きのタレント、有名人はたくさんいるが、その中でも今極めてラーメンを精力的に食べ続けているタレントのひとりがお笑いトリオ「や団」の中嶋享さんだ。
【画像アリ】や団・中嶋が愛した「名店の一杯」と、「家系ラーメン部」遠征の様子
や団は2007年に結成し、今年で18年を迎える。「キングオブコント」では2022年から3年連続決勝進出。今年もすでに準決勝に進出し、その期待が高まる。

KOC芸人としてお馴染みのや団。知名度が上がってきたこともあり(?)、最近はラーメン芸人として、メディアにもちょこちょこ呼ばれている(筆者撮影)
中嶋さんはや団のリーダーで、無類のラーメン好きとして知られる。昨年は年間734杯を食べ、ラーメン評論家顔負けの活動となっている。筆者も中嶋さんとは7~8年の付き合いで、当時から彼のどこから生まれてくるかわからない深いラーメン愛を目の当たりにしてきた。
「キングオブコント」で結果を出してからラーメン関係での露出も増えてきているが、いったい彼の原動力はどこから来るのか、取材した。
大学では非公認のラーメンサークルを作って活動
まずは中嶋さんのラーメンの原点の話からしていきたい。
日大豊山高校でバスケットボール部に所属し、部活の後に池袋にラーメンを食べに行くのがお決まりだった。当時、池袋では東口の「屯ちん」「無敵家」「光麺」が大ブレイクしていた。中嶋さんは4日連続「屯ちん」に通ったこともあった。4日通って4日目がいちばん旨かったというエピソードも残っている。
誰がラーメン好きというわけでもなかったが、部活の後といえばラーメンだった。

「屯ちん」の「東京豚骨ラーメン」(筆者撮影)
大学に入って、バスケ仲間とラーメン遠征に行き始めた。そして、大学非公認のラーメンサークルを作って各地を食べ歩いた。
写メール機能の付いた携帯電話の1号機を早速買い、ラーメンの写真を撮り始めた。池袋の塩ラーメンの人気店「えるびす」では中嶋さんの写メの音が店内に鳴り響き、大爆笑が起こった。店員さんからは「写メは初めてです」と言われた。
高校3年で好きだった女性を連れて初デートした。初デートの場所は、渋谷の旭川ラーメンの名店「らーめん山頭火」だった。大学2年のときに初めて彼女ができたときは、門前仲町の「こうかいぼう」に連れて行った。学内でもエースと言われ、いつもラーメンがそばにあった。
事務所のラーメン部でも中嶋さんは「エース」
大学を留年して、5年生のときにや団を結成する。小学校時代からの友人で同級生の本間キッドさんと、大学の友人である海野健太郎さんと3人のトリオだった。
中嶋さんはもともと本間さんとお笑いをやろうと言っていたが、本間さんの大学のキャンパスが静岡だったこともあり、なかなか実現しなかった。そこで、本間さんが卒業するタイミングで結成に至ったという。
ソニー・ミュージックアーティスツに所属し、1年目から評価が高かった。そして、そのうち事務所の中にもラーメン部が生まれた。若手の芸人を集め、その中でも中嶋さんはエースだった。

芸人としても、ラーメン好きとしても、周囲からは実力を認められてきた中嶋さん(写真:中嶋さん提供)
ラーメンのトークライブを開催し、ゲストにラーメン店主を呼ぶようになる。第1回のゲストが「ラーメン二郎 八王子野猿街道店2」の店主・野口征磨さん、第2回のゲストが「きら星」の店主・星野能宏さんだった。年間1000杯以上のラーメンを食べていた星野さんとラーメンクイズ対決をし、ボコボコにされた中嶋さん。ここから完全に火がついた。
「年に1000杯もラーメンを食べている人がいるんだとカルチャーショックを受けました。ここが完全にターニングポイントですね。ここから年間500杯ペースでラーメンを食べるようになったんです」(中嶋さん)
ラーメンがお笑いの悩みを吹き飛ばしてくれる
20歳からラーメン屋でアルバイトをしていて、お笑い以外はほとんどラーメンに費やした。
2007年に海野さんが脱退し、新たにロングサイズ伊藤さんが加入する。当時や団が事務所の1軍だったところ、伊藤さんは6軍の最下位。マネージャーからは「華があって演技力があるが、ネタがくそつまらない男がいる」と紹介された。ここから新生や団は1〜2年で深夜のテレビ番組に呼ばれるようになる。
2008年からは「キングオブコント」に出場し、2009年に準決勝に進出する。スタートダッシュはよかったが、ここからは何度も準決勝で負け続ける時代に突入する。
「ライブではウケているのに、なかなか勝てずどうしたらいいのかと考える日々でした。
2020年にはガキ使の『山-1グランプリ』で優勝し、ダウンタウンの松本さんから『絶対、決勝行けると思う!』とエールを送ってもらいましたが、翌年も準々決勝で負け、諦めかけていました」(中嶋さん)
そんな中、毎日食べているおいしいラーメンが悩みを吹き飛ばしてくれた。ラーメンがなければ、お笑いを辞めていた可能性もあると振り返る。

ラーメンが、お笑いを続ける支えになっていたそうだ(筆者撮影)
そこから2年経ち、2022年に決勝に進出する。「キングオブコント」の決勝の当日も「大つけ麺博」でラーメンを食べてから会場入りした。過去のファイナリスト史上いちばん遅い入り時間だったという。2022年の結果は第3位だった。
「ここから明確に仕事が増え、地方に営業に行けるようになりました。今まで地方のラーメン屋さんはほとんど食べたことがなかったので、ここぞとばかりに食べまくりました」(中嶋さん)
ライブの前後にラーメンを食べに行く中嶋さんの姿を見て、モグライダーのともしげさん、トム・ブラウンの布川ひろきさん、お見送り芸人しんいちさんなど一緒に食べる仲間ができてきた。ナイツの塙宣之さんが一緒に来てくれたこともあった。
地方の仕事が増えるとラーメンとの出合いも増える

「家系ラーメン部」のラーメン遠征。右から2番目が中嶋さん(写真:家系ラーメン部提供)
2017年から中嶋さんは「家系ラーメン部」に参加。横浜家系ラーメン好きの芸人が集まるトークライブだ。筆者はここで中嶋さんを紹介される。ここから何度も車で一緒にラーメン遠征をするようになり、その本気のラーメン愛を知ることになる。

「NRYラーメン大賞」収録の様子(筆者撮影)
年間アワード「TRYラーメン大賞」の予想をガチで行う「NRY(ヌライ)ラーメン大賞」を筆者のYouTubeで放送すると、ラーメン店主からの注目が一気に集まる。
「キングオブコント」での知名度とともに、中嶋さんは芸能界トップのラーメン好きとして知られるようになってくる。
「ラヲタさんとの会話がいつもとても楽しいです。ただラーメンが好きなおじさんたちとの会話は幸せです。
これからはもっと地方の仕事が欲しいです。特に目標はないですが、もっともっとおいしいラーメンを食べたいです」(中嶋さん)

地方の店を訪れたい、だからこそ地方の仕事が欲しい…と語る中嶋さん(筆者撮影)
昨年は年間734杯食べた。仕事が忙しくなればなるほど行ける場所が増えて、おいしいラーメンが食べられる。中嶋さんはこれからもおいしいラーメンを原動力にお笑い道を歩み続ける。