JPYCが国内初の「円建てステーブルコイン」発行へ。岡部社長が「暗号資産」との違いを強調

JPYCの岡部典孝社長。
JPYCは8月18日、資金決済法に基づく「資金移動業者」の登録(関東財務局長第00099号)を同日付で取得したことを発表した。これにより、日本円と1:1で連動する電子決済手段(ステーブルコイン)を発行可能になった。
同社が発行するステーブルコインの名称は、社名と同じ「JPYC」。日本円建てのステーブルコインとしては、国内初の例になるという。
8月19日に開催された報道陣向けの発表会には、JPYCの岡部典孝社長が立った。サービス提供開始の背景や、資金移動業者の登録を取得後の展開を取材した。
暗号資産とは異なるステーブルコイン「JPYC」

ステーブルコインについて、暗号資産との違いが強調された。
ステーブルコイン「JPYC」は、日本円と1:1で交換可能な日本円建てのステーブルコイン。ステーブルコインとは、価格が安定するように、法定通貨などを裏付けとして発行されるデジタル通貨の一種だ。JPYCの場合、裏付け資産は日本円(預貯金および国債)によって保全する。
初期発行は、イーサリアム(Ethereum)、アバランチ(Avalanche)、ポリゴン(Polygon)の3つのブロックチェーン上での発行を予定している。
岡部氏はJPYCについて、暗号資産との違いを強調する。
「暗号資産というよりも、どちらかといえばデジタル法定通貨やデジタル預金に近い。日本では、キャッシュフロー計算書上、現金として扱われる」(岡部氏)
今回発行されるJPYCは、資金決済法第2条第5項に基づく「電子決済手段」であり、価格が常時変動しやすく法定通貨への換価が保証されない「暗号資産(仮想通貨)」とは性質が異なる。
電子決済手段の特徴として、「同額の金銭で払い戻せる」「全額が保全されている」「市場が形成され流通性がある」などを挙げた岡部氏。JPYCを利用することで、海外への送金も低コストで実現するとうたう。

海外への送金も低コストで実現するという。
JPYCは、JPYCを発行・償還するためのサービス「JPYC EX」も発表。ユーザーは日本円と引き換えにJPYCをブロックチェーン上に発行し、JPYCを日本円に戻す(償還する)ことが可能になる。
JPYCとJPYC EXのサービス提供開始は、2025年秋を予定している。
JPYCが国内初の発行ライセンスを取得できた理由

JPYCは2025年6月に資金移動業者の登録を申請した。
今回JPYCが登録を目指していた「資金移動業者」については、2023年6月に改正資金決済法が施行。日本国内では信託銀行などに加え、資金決済法に基づく登録を受けた資金移動業者のみが、日本円に連動する電子決済手段(ステーブルコイン)を発行できることになっていた。
では、2019年に設立したばかりのスタートアップであるJPYCが、なぜ国内初の円建てステーブルコインの発行ライセンスを取得できたのか。
岡部氏は、主な理由として「(アメリカでステーブルコインを発行している)サークル社と協力体制を築けていたこと」「(社内に)専門家が揃っていたこと」などを挙げる。