レクサス「IS/RC」生産終了、車種整理と販売戦略

2025年6月に発表され、8月頃から500台限定で販売予定のレクサスIS500特別仕様車“Climax Edition”(写真:トヨタ自動車)
レクサスからの案内によれば、1999年にFR(フロントエンジン・リアドライブ)のコンパクトスポーツセダンとして誕生した「IS」の生産を今年11月に終了するとのことだ。インターネット上のモデル一覧でISを選択すると、その情報が得られる。
【写真を見る】レクサスのIS500 特別仕様車“Climax Edition”、RCおよびRC Fの“Final Edition”について(43枚)
生産終了を前に、500台限定のIS500特別仕様車「Climax Edition」が6月から発売されている。V型8気筒ガソリンエンジンによる迫力ある加速をISで手に入れる最後の機会になりそうだ。
ISと時を同じくして、2ドアクーペの「RC」も今年11月をもって生産を終了するとの案内だ。注文が11月の生産台数まで達した段階で販売を終了するという。また、RC Fの200台限定モデルとなる「Final Edition」の販売は、すでに終了している。
2025年、生産終了相次ぐ。レクサスの車種整理について

レクサスRC F“Final Edition”(写真:トヨタ自動車)
レクサスで今、販売している車種一覧を見ると、SUV(スポーツ多目的車)の選択肢が充実しており、その数は「LX」から「LBX」まで大小8車種におよぶ。なおかつ、それらのうち「RZ」と「UX300e」は電気自動車(EV)であり、「RX」にはプラグインハイブリッド車(PHEV)を設けている。ちなみに、ガソリンエンジンのみとなるのは「GX」だけだ。
それに対し、4ドアセダンはフラッグシップの「LS」と、前輪駆動の「ES」の2車種のみで、クーペはフラッグシップの「LC」のみになる。4ドアセダンのレクサス「GS」は、すでに2020年に生産終了している。
世界的な人気・不人気の市場動向は、レクサスにおいても受け入れざるをえない様子が感じられる。

2025年8月4日発売のレクサスIS350 特別仕様車“F SPORT Mode Black Ⅳ”。ISに関しては、IS500 / IS350 / IS300h(AWD) / IS300について、2025年11月での生産終了がアナウンスされ、それ以外のグレードは今のところ継続予定(写真:トヨタ自動車)
ところでレクサスは、2019年に電動化ビジョン「Lexus Electrified」を発表し、2030年までにEVフルラインナップを実現して、2035年には世界でEV販売100%を目指すという意欲的な挑戦のもとにある。
トヨタの基本姿勢は、BEV(バッテリー電気自動車)だけではなく、HEV(ハイブリッド車)やFCEV(燃料電池車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、そしてバイオ燃料などを視野に入れたエンジン車の存続などなど、あらゆる手段を駆使した「マルチパスウェイ戦略」だ。その中でレクサスは電動化推進の役割を担うことがうかがえる。
実際、トヨタが「bZ4X」を発売して間もなく試乗したレクサスRZは、より上級ブランドであるとはいえ、上質で仕上がりのよいEVならではの乗り味を体感させた。
2025年度、3車種のEV導入をアナウンス

上海モーターショーで初公開された新型ES(プロトタイプ)(写真:トヨタ自動車)
そのうえで、今年3月には、この先12カ月の間に3車種のEVを導入することを発表している。
まずRZにFスポーツが追加される。そして上海モーターショーでは新型ESが発表され、EVとHVの選択肢を設けている。日本での発売は、来年春を予定する。さらに将来のコンセプトが発表される予定だ。
トヨタのマルチパスウェイ戦略の傘下にあっても、HVとPHEV、そしてEVを充実させ、そのなかでレクサスらしさはもちろん、この先期待されるのは、モーター駆動であることによる運転支援の強化や自動運転の実現に向けた開発ではないか。それはトヨタ全体の技術力や商品性を高めていく基盤にもなっていくだろう。

レクサスRZ550e“F SPORT”(写真:トヨタ自動車)
単に脱二酸化炭素だけでなく、モーター駆動であることが自動運転の実現を後押しする理由は、モーターがエンジンに比べ1/100速い応答性を持つからである。
万一の突発的な危険回避において、センサーによる検知とコンピューターによる演算および判断の早さはもちろん、それを実行する動力制御の素早さが、自動運転の実用化に不可欠だ。EVとなることこそが、自動運転につながる最善の道筋なのである。
テスラのFSD(フル・セルフ・ドライビング)に見られるように、たとえ現状のレベル2においても自動運転を実行できるようになれば、運転の疲労は大きく軽減されるはずだ。
事故回避と電動化の親和性
また事故は、その9割が人間の見落としや操作間違いなどによるとされるので、事故ゼロを目指すうえで、レベル2であっても自動化を進めることには意味がある。
さらに、自動運転の社会的な受容性においても、レベル2の段階で自動運転できるクルマの走行が増えれば、町を歩く人々の自動運転に対する懸念が軽減されていくきっかけになるだろう。
そして本当の意味での完全自動運転の時代を迎えることができれば、まさに老若男女を問わず、また健常者であるか障害者であるかを問わず、クルマが万人のための個人的な移動手段へ発展していく期待が高まる。

レクサスIS500 特別仕様車“Climax Edition”のインテリア(写真:トヨタ自動車)
すでにアメリカの一部で実用化されている自動運転のタクシーは、目の不自由な人が1人で利用できることを実証している。目の不自由な人でもスマートフォンを利用できれば、呼び出しも、代金の支払いも、何不自由なくできる。またタクシーの車両も、GPSによって顧客の位置を特定し、停車位置が多少ズレる場合は、スマートフォンへ情報を知らせることで、目の不自由な人でも呼び出したタクシーにたどり着けるのである。
さらには、運転免許証の返納を心配する高齢者も、運転の自動化が進めば、返納すべき時期を遅らせることができるかもしれない。
電動化で変わる移動の概念

レクサスRC F“Final Edition”のインテリア(写真:トヨタ自動車)
つまり、EVと自動運転の組み合わせは、クルマという個人的な移動手段の価値を拡張する。だからこそ、アメリカや中国では、EVと自動運転が前へ進もうとしている。
これこそ、SDV(ソフトウェア・デファインド・ヴィークル=ソフトウェアにより機能をアップデートできるクルマ)の本質でもあるだろう。
プレミアムブランドであるだけでなく、先進性を満たしながら、より上質な暮らしを求める消費者に対し、レクサスの進化が問われていく。今進められる車種整理の動きは、進化を後押しするためのひとつと見ることができるのではないか。