米コネティカット州の小さな港町で味わう「ロブスターロール」…新鮮な素材をガブリ、うまみ満喫
ニューヨーク支局長 山本貴徳
にぎやかなニューヨーク市中心部を離れ、車でおよそ2時間。コネティカット州クリントンは、ロブスター漁やカキの養殖で栄えてきた。港町の一角で、ロングアイランド湾を望むレストランが「ロブスターランディング」だ。
仕上げに溶かしバターとレモン、飽きない味と香り

最後に温かいバターをかけるコネティカット式のロブスターロール
2001年にホットドッグの屋台として始まり、数年後にロブスターロールに切り替えると、たちまち人気店となった。別棟の小屋では地元産ロブスターやムール貝などを販売している。
レシピを生み出した初代オーナーが引退を考えていた22年、アンジェラ・モランダーさん(30)とレイチェル・デイビッドさんが経営を引き継いだ。10代からこの店で働いており、オーナー夫妻も、現場を支えてきた2人に託すことを喜んだという。

アンジェラ・モランダーさん
シンプルな調理で素材のうまみ引き出す
調理はシンプルだ。漁師が毎朝届けてくれる新鮮なロブスターの身を熱湯の鍋に入れ、殻を取り除き、軽く焼いた8インチ(約20センチ・メートル)の細長いロールパンに詰める。尾の肉を使い、甘みとやわらかさを引き出しているのが特徴だ。レモンを搾り、溶かしバターをかけて仕上げる。

プリっとした甘み、口の中に広がる
口に入れると、温かいバターの香りとともに、プリッとしたロブスターの甘みが広がった。レモンの爽やかさが後味を引き締め、最後まで飽きがこない。ロブスターの殻などからうまみを引き出した濃厚なビスクスープとの相性も抜群だ。
昨年の嵐を受け、小屋は改修したが、内装は以前のままだ。モランダーさんは、「リラックスできて、カジュアルな雰囲気とシンプルさが魅力なのだと思う」と語る。ワインや前菜などを持参して、そよ風を感じながら、木製デッキでゆったりと過ごす人たちもいるという。海の幸を気軽に味わおうと、多くの人が小さな港町に足を運んでいる。

4月に改修工事を終えた「ロブスターランディング」
メーン州ではマヨネーズで爽やかに
ロブスターロールは米北東部メーン州の名物でもある。コネティカット風は温かいロブスターの身にバターとレモンを添え、メーン風は冷やした身をマヨネーズやセロリなどであえる。
世界有数の魚介料理大国
米国は世界有数のシーフード消費国で、エビやサーモン、ツナ、白身魚などの人気が高い。健康志向の高まりによって需要は拡大し、国内だけでは供給が追いつかず、アジアや南米などからの輸入に頼っている。スーパーには冷凍や加工済みのシーフードが豊富に並び、家庭でも手軽に調理できる。
地域ごとに食文化は多様で、東海岸では欧州からの移民の影響を受け、ハマグリ、カキ、ロブスターを使った料理が発展した。ニューイングランド地方のクラムチャウダーやロブスターロールはその代表例であり、かつてニューヨークもカキの産地として名をはせた。

観光客や地元住民でにぎわうロブスターランディング
地域に根付く多様な食文化
西海岸では太平洋サーモンやウニが親しまれ、すしや刺し身、海鮮丼などの生魚を使った料理は定番となっている。西海岸を起点に全米に広がっている。
一方、南部ではザリガニ、ナマズ、エビなどを使ったクレオール料理やケイジャン料理が地域の味として根付いている。ハワイではマグロやマヒマヒを使ったポケなど、太平洋諸島の伝統と多様な移民文化が融合した食文化が見られる。
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国内外の総支局長が、地域の自慢の味を紹介します。