改修用の旧式戦車も枯渇か
保管施設に動きが見られる
戦車保管施設を監視していたアカウントが報告
改修可能性を調査するプロセスだった可能性も
これまでも旧式戦車を活用していた
より旧式の戦車に頼り始めた
オリジナルの採用は1973年
ウクライナ国防省情報総局も報告
損失を旧型戦車で埋める
70年代の装備すら底を尽きつつある
東部軍管区から持ち出される
改修後も多くの問題が
固定砲台としても使われている
これまでのロシアの戦車喪失数
OSINT組織による集計
T-62は1961年から生産されていた

改修用の旧式戦車も枯渇か

戦車不足にあえぐロシアが、旧式の戦車を改修して前線に投入していることはこれまでも報じられてきた。だが、最新の衛星画像を分析したところ、そのロシアがさらに旧式の戦車の改修すら検討している可能性が指摘されている。これは、いままで改修用としてきた戦車すら枯渇しつつあることを示唆している。

保管施設に動きが見られる

X上で「Jompy」というユーザーネームのアカウントが複数の衛星画像を分析したところ、ロシアの戦車保管施設に変化がみられたと報告している。

画像：X @Jonpy99

戦車保管施設を監視していたアカウントが報告

ウクライナ政府系メディア「United24」によると、「Jompy」はロシアによる軍事侵攻開始直後から戦車保管施設を監視していたという。そのアカウントが今回、複数の施設で大きな動きが見られると報告したのだ。

「T-72A」を蔵出しか

「Jompy」は戦車保管施設の画像に大量の「T-72A」戦車が映っていたとし、これはロシアが「T-72Aを再び運用しようとしている」可能性があると指摘した。

改修可能性を調査するプロセスだった可能性も

たとえばロシアの第349戦車保管基地で観測されたような動きは、改修可能なT-72Aを特定するためのプロセスだった可能性がある。

これまでも旧式戦車を活用していた

「United24」によると、これまでもロシアは失った戦車の穴埋めに旧式戦車を改修して利用していたが、それには主に「T-72B」もしくは「T-80」が利用されてきたという。だが、今回の動きが示唆するように、これらのモデルはすでに使い尽くされたのかもしれない。

より旧式の戦車に頼り始めた

戦車保管施設の観測結果から、ロシアはいまでは「T-72A」や、さらに旧式の「T-72」の改修まで視野に入れつつあると「Jompy」は分析している。

画像：Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0

オリジナルの採用は1973年

「United24」によると、T-72Aはソ連時代の第2世代主力戦車だという。元となった「T-72ウラル」が最初に赤軍に採用されたのは1973年で、T-72Aは70年代後半に登場した。

画像：Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0

ウクライナ国防省情報総局も報告

また、ウクライナ国防省情報総局（HUR）が6月28日に出した報告によると、ロシアはより近代的な戦車を失ったことでできた穴を、さらに旧式の「T-62」戦車の改修で埋めているとされていた。

損失を旧型戦車で埋める

HURはこう述べている：「ロシアはウクライナへ仕掛けた戦争において大規模かつ修復不可能な損失を武器・兵器に被り、その穴を旧式化した戦闘車両を大量に再配備することで埋めようとしている」

70年代の装備すら底を尽きつつある

HURはさらにこう続けた：「1970年代の装備すら底をつきつつあり、ロシア軍はいまやより旧式の、T-62戦車まで配備し始めている」ウクライナ国営通信社「ウクルインフォルム」が伝えている。

東部軍管区から持ち出される

一連の報告は6月28日、HURのテレグラムチャンネル上に投稿された。報告では回収作業の詳細も述べられており、東部軍管区の倉庫から持ち出されたT-62はザバイカリエ地方アタマノフカにある第103装甲修理工場で改修されているという。

改修後も多くの問題が

だが、T-62戦車はほとんど保守されずに屋外で保管されてきたため、改修を受けてウクライナに配備されても、多くの技術的問題を抱えているという。

固定砲台としても使われている

HURの報告によると、近代的な装甲車両の生産には限界があるため、改修されたT-62戦車は装甲を活用した攻撃に利用されているのみならず、防衛ラインで固定砲台として使われてもいるという。

これまでのロシアの戦車喪失数

ウクライナ軍参謀本部は7月15日、ロシアはウクライナへの全面的軍事侵攻開始以来、1万1,002両の戦車を喪失したと報告した。とはいえ、この数字はロシアと直接交戦中の相手から出されたものだという点には留意が必要だ。

OSINT組織による集計

オランダのOSINT組織「Oryx」は、写真や動画による直接的証拠に基づいて、宇露双方の損害を開戦当初から集計している。それによると、7月15日時点でロシア側が失ったと確認できた戦車は4,071両だという。ただし、そのすべてが再起不能となったわけではない。

確認された数は

「Oryx」の分析では、ロシアの損害のうち2,987両は破壊が確認されたという。そのうち158両がダメージを受けていて、393両が放棄され、533両が鹵獲された。だが、「Oryx」もウェブサイト上で注意を促しているように、その分析手法から、ロシアが実際に失った戦車の数はこれよりもかなり多いとみられる。