日本株、新NISAで買いたい「高利回り&安定配当」が期待できる「プロ厳選銘柄5選」を実名紹介

株主還元の指標にDOE(株主資本配当率)を導入する動きが広がっている。DOEは企業の純利益に応じて配当を決める「配当性向」と異なり、株主資本(株主から集めた資本金や、過去の利益の蓄積など、株主の持ち分)を基準に配当額を決定する指標だ。短期的な業績変動に左右されにくく、配当額がブレにくいという特徴を持つ。

2025年1月から5月にかけて、DOEを導入する企業は前年同期比6割も増加した。今や全上場企業の約1割に相当する規模へ広がった。DOEが注目される背景のひとつに、東京証券取引所が上場企業に求める「資本コストや株価を意識した経営への要請」がある。株主の持ち分である株主資本を基準とするDOEは、まさに株主目線の経営を直接アピールできる効果的な指標だ。

加えて、貿易摩擦や円高など、不透明な経済情勢への対抗手段としても有効だ。例えば、多くの企業が減益に陥りそうな状況下でも、投資家側が抱く「減配への懸念」を払拭できる効果がある。短期的に業績が悪化したとしても、安定した配当を継続できることを投資家に示すことができれば、長期的な資産形成を目指す個人投資家にとっては魅力の高い投資対象となるだろう。特に新しい少額投資非課税制度(NISA)を利用して、長期的に安定した投資を好む投資家層にとっては、安心感の高い選択肢となろう。

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日本触媒(4114)

■株価(8月8日時点終値)1760.5円 予想配当利回り 5.68%

強みは「独自性の高いニッチ製品」を多数擁している点だ。世界トップシェアを誇る高吸水性樹脂(SAP)は、新興国の人口増加に伴う日用品需要に支えられ、中長期的な安定需要が見込める。また、今後の収益成長に向けてはリチウムイオン電池(LiB)材料や医薬品原体など、ソリューションズ事業への経営資源の集中を加速させている。経営資源の集中は、「競争優位領域」への投資を進める合理的で効率的な戦略として、株式市場からの評価も高い。

なお、2026年3月期の配当額は2025年3月期比で減少する見込みだ。現行の中期経営計画において、全ての利益を配当へまわす配当性向100%の方針を適用しているからだ。一方、2028年3月期に向けて大幅な増配を目指す姿勢を示しており、長期的な株主還元を強化する意図が明確だ。

さらには「配当性向100%またはDOE2.0%のいずれか大きい金額を配当する」という方針を掲げている。DOEの導入により、業績が一時的に悪化した場合でも配当の下支え役となることが期待され、将来の減配リスクを抑え、安定的な配当を継続する可能性を高めている。

THK(6481)

■株価(8月8日時点終値)4117円 予想配当利回り 5.98%

直動案内機器(直線的な動きを精密にガイドする機械部品)の分野で世界シェア50%超を誇るトップメーカー。主力製品であるリニアガイドやボールねじは、工作機械や半導体製造装置、ロボットなど、幅広い産業機械に不可欠な部品として供給されている。自動化や省力化といった世界的なトレンドが追い風となる中、圧倒的な市場シェアは強みとなろう。

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工作機械やロボットなど、幅広い産業機械向けの製品需要は中長期的な安定が見込まれる。加えて、自社独自の生産装置を活用することで、製品の精度や耐久性において高い水準と評価を維持していることも強みだろう。2025年12月期の年間配当計画は一株246円。会社側では、円高リスクも考慮した「減配リスクを回避可能な最低ライン」として示しており、かなり保守的な水準といえそうだ。

2025年12月期は、関税の影響による設備投資の短期的な減速から業績は下振れるリスクはある。しかし、関税の影響がなければ第4四半期にかけて業績の上方修正の可能性も示唆された。主力事業の安定性と構造改革による収益性改善を踏まえると、配当利回り銘柄としての魅力は大きいと考える。

エノモト(6928)

■株価(8月8日時点終値)1528円 予想配当利回り 4.65%

半導体やLEDに使われるリードフレーム(電子部品を固定し、外部と接続するための枠組み)、そしてコネクタ用部品を製造する大手メーカー。精密な金型を自前で製作できることから、プレス部品の加工までを一貫して手掛ける技術力と体制を強みとしている。

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近年は電気自動車(EV)搭載パワー半導体の放熱性を高めるニーズが拡大している。強度が強く、熱導電率(放熱性)が高いリードフレーム方式への転換が急速に拡大していることは追い風だ。また、ウェアラブル端末においては小型化・複雑化がさらに進むとみられ、高い技術水準が要求されやすい傾向も同社の成長ポテンシャルを広げよう。

株主還元では「DOE2.5%以上を配当の数値基準とする」ほか、「キャッシュフローと成長投資額を勘案し、さらなる株主還元も検討」することを掲げている。事業環境には底入れ感が出てきており、オプト用リードフレームでは、大型受注案件が本格化し、コネクタ用部品も底堅く推移している。同社の技術力に対する評価から顧客内でのシェアも上昇しているもようで、2026年3月期以降の業績回復を後押しするだろう。

グンゼ(3002)

■株価(8月8日時点終値)3760円 予想配当利回り 5.74%

衣料品事業は依然として厳しい環境にあるが、近年はアパレル事業における工場の閉鎖や、タッチパネル事業からの撤退などを実行し、不採算事業の整理を進めてきた。機能性材料やプラスチックなどの非繊維事業を強化しており、現在の収益柱となっている。収益体質の改善は順調に進んでいるといえそうだ。

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機能性衣料品では、独自技術を活かした汗対策衣料「アセドロン」が絶好調だ。日本全国で想定を上回る猛暑が続く中、一時は品薄状態となったヒット商品だ。残暑が予想される今秋以降も需要拡大も期待できる。

中期経営計画では、連結ROE(自己資本利益率)8%以上の達成を目指すなどし、PBR(株価純資産倍率)1倍達成に向けた強い意志を示している。また、株主還元の方針では、従来の総還元性向100%から、DOE(株主資本配当率)を4.0%以上に引き上げることを表明した。さらに、ROEが8%以上になるまでは、総還元性向100%超(特別配当や自己株式取得など)を機動的に実施すると公表しており、株主還元への意識の高さを示している。

メイテックG(9744)

■株価(8月8日時点終値)3264円 予想配当利回り 5.36%

製造業向け技術者派遣の最大手企業。機械、電子、半導体の設計・開発を担うエンジニアを、日本の代表的なものづくり企業に派遣している。エンジニアの大半は同社の正社員として雇用されており、高い技術実績を背景に、突出して高い単価水準を実現しているのが特徴だ。製造業におけるエンジニア不足という環境は、同社の業績向上に大きく貢献している。需要が旺盛である一方、エンジニアの採用は困難な状況が続いており、契約単価の上昇を加速させている。

最大の強みは、安定した収益基盤と高い技術力にある。製造業のエンジニア不足が続く中、派遣技術者同士が経験を共有する研修を多数実施するなど、契約単価の上昇が収益を押し上げる構造を確立しており、多様化する顧客の技術的ニーズに素早く対応できる体制を整えることが高い安定感をもたらしている。

サービス業という特性上、大規模な設備投資が不要であり、キャッシュフローが安定しやすいことも大きな強みだ。配当性向は50%以上を原則に掲げるほか、配当の最低水準としてDOE5%を掲げている。増益期待の続く高配当利回り銘柄としても注目したい。

DOEを重視した投資の場合、企業の配当方針をしっかり確認することも重要だ。企業の決算短信には、直近のDOEと配当性向の実績が記載されている。企業が掲げる目標DOEが実績よりも高ければ、将来的な増配の期待も高まりやすい。増配を基本方針とする「累進配当」を掲げる企業とともに、今後も注目度が高まる配当方針となるだろう。

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