脱インテルの次は、脱エヌビディアが加速する…AI半導体の競争激化でさらに躍進する「真の王者」とは?
AI分野での巻き返しは容易ではない
インテルの低迷が続いている。
2025年4〜6月期は約4300億円の最終赤字で6四半期連続の赤字となった。同社は2016年の微細化技術での躓きを皮切りに、顧客の要求に応えられず市場シェアを失い続けている。2021年に発表したファウンドリ事業への進出も大きな利益を生み出すことができておらず、損失の元凶となっている。
一方でTSMCは水平分業とEDAアライアンスによる協業体制で優位性を確立。かつてインテルのサプライヤーだった日本企業の中には、脱インテルを進め、エヌビディア向けの取引拡大で株価が急伸しているところもある。
前編記事〈エヌビディアに詳しい投資家はみんな知っている…脱インテルで株価が爆上がりした「日本企業の名前」〉で、詳しく解説している。
インテルはAIチップ分野での出遅れにより、サプライヤーとの関係維持も困難になっている状況だ。
AIの性能向上には、半導体の処理性能の引き上げが欠かせない。

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そのためにTSMCやGAFAMは設備投資を積み増している。エヌビディアの要求を満たすHBM開発に取り組んでいる韓国サムスン電子も巻き返しを狙っているが、SKハイニックスに追いつくことは容易ではない。
収益力低下が深刻なインテルがAIチップ分野で巻き返しを図ることはかなり難しいだろう。
世界のAI関連分野ではソフトとハードの両面でいち早く付加価値を生み出した企業が、加速度的に利得を確保する状況が鮮明だ。
インテルにはスピード感がない
そうした中、インテルはコストを削減するために設備投資計画を引き下げざるを得なくなった。足元、インテルはドイツとポーランドでの工場建設計画を撤回した。
8月初旬、わが国の株式市場では東京エレクトロンの株価が一時18%下落した。割高感に加え、主要顧客の一つであるインテルの需要減少懸念に影響された側面があったようだ。インテルは汎用型の半導体分野でも競争力を喪失しつつあると考えられる。
ドイツでの工場計画の撤回は、追加のコストカット策が加速する兆候と解釈できる。

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他方で、車載用半導体分野では独インフィニオン、ルネサスエレクトロニクスの業況は厳しい。報道によると、ルネサスエレクトロニクスはすでに人員の削減と定期昇給見送りを決定した。独インフィニオンも人員削減を行なった。
大型の工場建設の計画撤回をこのタイミングで出しているところに、インテルの構造改革のスピード感のなさが窺われる。
微細化に躓いて以降、インテルはTSMCに先端分野の技術を頼り、自社の生産能力は車載用のチップ分野に一部再配分することで収益力を維持しようとしたが、AI分野の成長への対応の遅れによって業績立て直しは一段と難しくなっているようだ。
脱エヌビディア時代の王者は?
米オープンAIやグーグル、メタといった企業も、自前のチップ開発に取り組み始めた。それに伴い、現在GPUトップのエヌビディアはこれまでの顧客企業とも競争することになるはずだ。
最終的に半導体分野で最も重要性が高まるのは、受託製造企業との見方は多い。TSMCはその筆頭だ。

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そうした観点から今後の世界のAI関連分野の展開を考えると、ポイントとなるのが顧客にとって使い勝手の良いソフトウェア環境の構築だ。
エヌビディアはCUDAと呼ばれるプラットフォームを提供し、GPUユーザーのAI開発を強力にサポートしている。TSMCのEDAアライアンスにも同じことが当てはまる。水平分業が加速する中、オーダーメイドで顧客ニーズを満たすことの重要性は高まりこそすれ、低下することは考えづらい。
半導体企業が成功を収めるにはインテルの教訓を活かし、ハードウェアの製造技術向上のみならず、顧客の新しい発想の実現を可能にするソフトウェアの提供拡充が避けて通れない。
こうしたポイントを押さえつつ、AI需要の取り込みを狙わなければ、わが国半導体業界の再興と中長期的な成長は叶わないだろう。
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