退役進む“エアバス唯一の平屋4発機”「A340」の歩みといま 現役の会社・路線はどこ?

フランクフルト国際空港 2025年5月2日撮影 D-AIHX エアバスA340-642X ルフトハンザドイツ航空

1991年に初飛行したエアバスA340型機。エアバス初の4発機であると同時に、同社唯一の「平屋4発機」として世界的にも希少な機種です。かつてはルフトハンザドイツ航空やスイスインターナショナルエアラインズの機体が日本に飛来し、国内でも目にすることができた機体ですが、登場から約30年が経過し今ではその数を減らしています。そこで今回は、A340の各タイプについて振り返ると同時に、その見どころや現在の運航路線をご紹介します。

◾️ETOPSに翻弄され少数派に A340の歩みとタイプ紹介

A340は、1987年に開発がスタート。双発機であるA330と同時並行で開発された、航空業界では異例の存在です。同時開発の背景には、「ETOPS」の策定による航空会社の需要の分裂がありました。

1980年代、エンジン性能や信頼性向上を背景に双発機での洋上飛行要件を緩和する「ETOPS」の策定が始まります。しかし、策定当初は「ETOPS」の認証要件が厳しく、洋上飛行の多いアジアの航空会社は4発機を求める一方、アメリカの航空会社では燃費の良い双発機を要望。欧州キャリアは会社ごとに異なるなど、需要が分裂。それら全てに対応するため、A330とA340は同時に開発されました。

当初開発されたのは、短胴型のA340-200と長胴型のA340-300の2種類。B747やDC-10の置き換えを想定し、-200は約12,000km、-300は約10,000kmの航続距離を備えて設計されました。1993年には、両機種ともに初就航を果たしています。

© FlyTeam キリンガラナさんカタールアミリフライトのエアバスA340-200。VIP機として活躍している。 2024年7月22日成田空港にて撮影

© FlyTeam Hariboさんチューリッヒ空港 2005年8月5日撮影 HB-JMF エアバスA340-313X スイスインターナショナルエアラインズ

しかし、「短中距離はA330」「長距離はA340」というエアバスの想定に反し、航空会社の要望やETOPS認証制度の拡大によって双発機はその運用範囲を拡大。1995年には洋上飛行を含む長距離飛行に対応した双発機・ボーイング777型機が就航します。双発機の運用拡大を受け、エアバスは第2世代として約16,000km飛行可能な超長距離型のA340-500、約14,000kmの航続距離を誇る胴体延長型A340-600を開発。-600は2002年、-500は2003年より運用を開始しました。

© FlyTeam サンドバンクさんクウェート政府のエアバスA340-542。2025年5月に羽田空港へ飛来し、話題となった。 © FlyTeam LacnorさんルフトハンザのA340-600。主翼前方の胴体が他の機体に比べて特に長いのが特徴。

超長距離・胴体延長型の「第2世代」A340-500/600ですが、ライバルである777の長距離型として2004年には777-300ER、2006年には777-200LRが登場。4発機として燃費の悪いA340の発注は伸び悩み、2013年に発注を打ち切り。総生産機数は377機と、1,400機以上が製造された777シリーズや1,100機以上製造されている姉妹機A330よりも少数派の存在です。

◾️今や“激レア”のA340、一体どこで飛んでる?見どころは?

第2世代も登場から約20年が経過し、退役が進んでいるA340。現在はルフトハンザやスイスインターナショナルエアラインズ、スイスのエーデルワイス航空などで活躍しています。ルフトハンザでは、フランクフルト発着の北米線や一部アジア路線など36路線で、A340-300や-600を運用中。スイスインターナショナルエアラインズでは、チューリッヒ〜仁川・上海(浦東)・ムンバイ・ヨハネスブルグ線でA340-300が活躍。エーデルワイス航空では北米・アジア・アフリカなど33路線でA340-300が使用されています。また、定期便以外ではカタールやクウェートなどの政府専用機、VIP機などでも運用されており、日本への飛来実績もあります。© FlyTeam Lacnorさんエーデルワイス航空のA340-300。スイスインターナショナルエアラインズのグループ会社で、アジアにはプーケットなど3都市にA340-300が飛来している。

一部のA340には、他の機体には見られない珍しい機内設備も。それは、なんとトイレ。通常の機体ではギャレー付近のキャビンと同じフロアに設置されていますが、ルフトハンザのA340-600ではトイレが「階段の下」に。平屋建ての機体でありながら、階段を通ってトイレを利用するという、珍しい体験が楽しめます。

© FlyTeam MaplecroftInnkeeperさんルフトハンザドイツ航空 ミュンヘン → JFK 2019年03月搭乗 写真:トイレ・化粧台

今では国内でもほとんど見る機会のないA340。4発機としての経済性の悪さや老朽化も進んでいることから、定期便での活躍期間はさほど長くはないと考えられます。活躍を続けている今のうちに、その姿を撮影し、利用してみてはいかがでしょうか。