「サイキは衝撃だった。メジャー球団がすぐ調査するね」ドジャース米国記者が一番驚いた阪神・才木浩人26歳「巨人で印象に残った選手は…正直いなかったね」―2025上半期 BEST5

「サイキはスゴいピッチャーだ」ドジャース番記者が絶賛した阪神・才木浩人(26歳)

2024ー25年の期間内(対象:2024年12月~2025年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。東京シリーズ部門の第3位は、こちら!(初公開日 2025年3月22日/肩書などはすべて当時)。

視聴率30%を超えた東京ドームでのMLB開幕シリーズ。普段はロサンゼルスでドジャースを取材する米国人番記者の目に日本の野球はどう映ったのか? 米国専門メディア「ドジャース・ネーション」のダグ・マケイン記者にNumberWebが直撃取材した。【全3回の中編/前編、後編も公開中】

アメリカ野球と日本野球「決定的な差」

――マケインさんはMLB開幕シリーズでドジャースの4試合を取材されました。ずばり日米のチームで野球はどう違いましたか。

ダグ・マケイン記者(以下、マケイン)​ 近年、アメリカの野球は極端なまでにシンプルになっている。打撃は、ヒットより本塁打、単打から繋いだり盗塁したりして次の塁を目指すより最初から二塁打や三塁打を狙うといった具合に。分析データからそれが勝利につながると信じられているんだ。シングルヒットを狙う選手は減少傾向で、強打者を揃えたチームが大差で勝つ試合が多い。投手にしても、何よりも球速が求められる。2011年の平均的な速球は91マイル(約146km)だったが、今は94.5マイル(約152km)。あらゆる投手がほぼ全球でできる限り速く投げようとするからケガも増えているんだよ。

 それに対して日本の野球には、ホームランと三振以外の“中間部分”が残されている。巨人と阪神との試合でもそうだったけど、シングル安打を2本続けようとか、ベースランニングで次の塁を狙うとか。チームで得点を挙げようという意識が残っているね。

「スネルだよ? 正直、阪神はかなり強かった」

――もちろん公式戦ではなく、あくまでプレシーズンです。それでも昨年のワールドシリーズを制したドジャースが、東京開幕シリーズで唯一敗れたのが阪神でした。

マケイン 正直に言うと、阪神はかなり強かった。ドジャースのスターティングラインナップを見ても明らかだよね。欠けていたのはムーキー・ベッツくらいだった。それ以外は主力メンバーで、先発した投手もサイ・ヤング賞を2回受賞しているブレイク・スネルだよ? 球を見る限りスネルの調子も良かった。ドジャースも本気で勝ちにいったけど、阪神が上回ったという印象かな。

――じつは試合中、阪神スタンドから「ドジャース倒せ!」とチャントが響いていたんです。

マケイン そうなの?(笑) やっぱり阪神ファンはスゴいね。あの情熱的なスピリットが大好きなんだよ。阪神とドジャースの試合を見て痛感したことがある。阪神の選手たちは自分たちのプレーに自信を持っていたよね。ワールドチャンピオンのチームである、ドジャースをまったく恐れてなかった。選手たちからもファンからも、絶対に勝つんだという気迫が伝わってきた。昨年の韓国開幕戦前のプレゲームも取材したんだけど、相手チームは少し緊張しているように見えたんだ。その結果、ドジャースの圧勝だった。特にリーグ戦でなく1回限りの試合は選手たちの気持ちに左右される面も大きいからね。

「サイキはメジャー球団がすぐに調査する」

――阪神と巨人でどの選手が印象に残りましたか。

マケイン スゴい選手が一人、いたね。阪神の先発投手だったサイキ(才木浩人)。衝撃だった。調べてみたら、彼は昨シーズンの防御率が1点台(1.83)だったんだね。すごい投手を発見できて幸せな気分だったよ。

――ドジャースのデイブ・ロバーツ監督も試合後、「投げた球はメジャー級でスプリットも良くて制球もいい」と称賛していました。具体的に才木投手のどこが優れているのでしょうか。

マケイン 制球力と頭の良さだね。たとえばショウヘイ(大谷翔平)の第1打席。初球、2球目ともに外角ギリギリのファストボールで攻めて、そのあとはフォークを3球、執拗なまでに続けて三振を奪った。ショウヘイが嫌がる投球術を心得ていたんじゃないかな。少しでも球が中に入ればショウヘイにホームランを打たれる。それがわかっていたから、決め球はストライクゾーンで勝負しなかった。客観的に見て、サイキは世界一のバッターを終始圧倒していたよ。彼はまだ26歳。はっきり言っておくけど、サイキが大型契約を獲っても、まったく驚かない。いまメジャー球団間で急速に名前が広がっているんじゃないかな。対して巨人の選手は……強烈な印象を残した選手はいないね。サイキのように、メジャー球団がすぐに調査するだろう、という選手はいなかった。

――来季は日本のスラッガー、村上宗隆選手のメジャー挑戦も濃厚とされています。

マケイン あくまで個人的な意見だけど、ドジャースに移籍する可能性は低いと見ているよ。映像を見る限り、ムラカミはたしかにパワーはある。それはデータでも証明されていた。ただ、守るポジションは限られるだろう。もっと言えば、(ヤクルトで定位置の)三塁手ではなく一塁手になると思う。ドジャースにはフレディ(・フリーマン)がいるし、DHにはショウヘイがいる。アメリカメディアで有力な移籍先に挙げられているように、ヤンキースが合っていると思うな。

<続く>