ドジャース佐々木朗希の乱調「まだ未完成…先発ローテはしんどい」NHK解説者が語る“山本由伸、今永昇太との違い”とは?「2回、3回でバテていた」―2025上半期 BEST5

3回を投げて5四球と制球に苦しんだ佐々木朗希のメジャー初登板。解説者の目にはどう映っていたのか
2024ー25年の期間内(対象:2024年12月~2025年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。東京シリーズ部門の第5位は、こちら!(初公開日 2025年3月24日/肩書などはすべて当時)。
東京ドームに日本人選手たちが凱旋し、大きな注目を集めたカブスとドジャースの開幕シリーズ。米球界の事情をよく知る識者は、この2試合をどう見たのか。ドジャース傘下マイナーでコーチを務めた経験を持ち、NHKのメジャーリーグ中継でも解説を担当する元横浜ベイスターズ監督の山下大輔氏に話を聞いた。(全2回の2回目/前編へ)
佐々木朗希の乱調「まだメジャーのローテはしんどい」
――山本由伸、今永昇太が好投した一方で、佐々木朗希は3回56球を投げて5四球、1失点と制球に不安を残す内容でした。メジャー初登板の率直な印象を聞かせていただけますか?
山下大輔(以下、山下) たった1試合ですから、それだけで判断はできないんですけども。正直、山本や今永のタフさと比べると、佐々木の身体的な幼さ、未完成な印象というのは感じました。まだ若いですし、芯の強さが足りていないのかな、と。
――初回は160km台を連発するなど、勢いを感じさせる投球でしたが……。
山下 コンディション的にそんなに出来上がっていないのに、最初から飛ばしているなと思いました。相当気持ちが入っていたんでしょうけど、1球1球が全力投球で、ちょっと力が入りすぎていたかな。あのまま4、5回まで投げられたらすごいことですけども、このペースでいったらなかなかもたないんじゃないか、と。持っているもの以上のものを出そうとしすぎた。結果的に2回、3回ですでにちょっとバテてしまっていた印象です。
――ピッチクロックやボールへの適応も制球が乱れた理由のひとつなのでしょうか。
山下 それよりもバランスを崩していたことが大きいですね。もちろん3月ですから、フィジカル的にはピークの状態ではない。ただマウンドでの余裕のなさは気になりました。あのペース、あの精神状態で常に全力で投げていると、長いシーズンのローテーションピッチャーとしてはしんどい。そこはメジャーの壁ですよね。相手バッターのパワーやボールの待ち方も変わってくるので難しいところはあると思いますが、5回まで投げる試合をどれくらい作れるかな、という不安は感じました。
マイナーで体力作りをする選択肢も
――力配分が今後の課題になりますか。
山下 力配分も大事なんですが、コンスタントに先発で投げる投手になるためには、それだけのスタミナを蓄えることができるかが重要です。ボールの力はすごいものを持っている。ただそれを1年続けていく体力、芯の強さがあるかを考えると、フィジカル的にそこまで身体ができていない。まだ23歳ですからね。日本時代から故障もありましたし、無理をさせないという判断もあるかもしれません。
――つまり、マイナーでの体力作りも十分に考えられると。
山下 そうなる可能性もあるでしょう。史上最年少で完全試合をやって、すごい投手が出てきたなと思いましたけど、ピッチャーはコンスタントにパフォーマンスを出せるようになることが一番大事ですからね。年齢的にも、その強さがついてくるのはもうちょっと先なんじゃないかなと個人的には思います。
大谷翔平「ギリギリのホームラン」をどう見たか?
――大谷翔平についても聞かせていただければ。第2戦ではホームランを放ちましたが、山下さんの目にコンディションはどう映りましたか?
山下 あのホームランはもっと余裕で入っていたような手応えに見えたんですけどね。気候の違いなのか、アメリカのほうが飛ぶ感覚はあるのかもしれません。ただ、ギリギリだったのはそんなに問題じゃないでしょう。元々スイングやボールの捉え方には天性のものがありましたが、そこにパワーが年々ついてきて、手がつけられないバッターになった。変に気負いすぎることもなく日本での開幕でしっかり結果を残して、さすがだなと思って見ていました。
――昨季は史上初の「50-50」を達成してホームランと打点の二冠王に輝きました。今季はどんな成績を残しそうでしょうか。
山下 二刀流の復活は遅れそうだと言われていますよね。盗塁は去年のようにはいかないとしても、打者に専念する時間が長くなれば、連続でのホームラン王の可能性はかなり高いでしょう。逆に言うと、去年の成績はDHに専念していたおかげも多少あると思う。特に二刀流をやりながらアベレージを残すのは大変ですから。本人は「投げて、打って」という思いが強いでしょうし、どっちも100%でしょうけど、去年の成績を見ちゃうと……。もし打者に絞ったらとんでもない記録を打ち立てるんじゃないかと思ってしまいますね。
――ワールドシリーズで負傷した左肩の手術の影響は感じましたか?
山下 可動域は元の状態には戻りきってはいないんじゃないかと思いますが、バッティングをするうえでの違和感はないんじゃないでしょうか。投手としてはどうなんでしょう。来日する前にブルペンを回避しているのでまだ万全ではないのは確かです。ただ去年、野手に専念してキャンプから意欲的に盗塁のスタートを磨いたことで、野球選手にとって重要な下半身がより強くなった。これは結果的にピッチングにも生きるんじゃないかなと。復活したときの投球を楽しみにしています。
<前編とあわせてお読みください>