近本光司はFA移籍か残留か、巨人OB見解 不振原因…名将解説

近本光司

移籍か残留かー。8月19日に国内フリーエージェント(FA)権を取得した阪神の近本光司外野手(30)は、メディアの報道によって今季オフの巨人移籍の可能性が取り沙汰され、巨人OBらがこれに見解を示すなど、去就に注目が集まっている。

こうした中、近本は22日のヤクルト戦(神宮)以来〝無安打地獄〟に陥っていたが、31日の巨人戦(甲子園)の第4打席で、39打席ぶりとなる安打を放った。近本の連続無安打は38打席でストップした。

近本は2点を追う七回2死一塁の場面で、左翼線への二塁打を放ち好機を拡大させた。

続く中野拓夢内野手(29)の2点適時二塁打で同点、森下翔太外野手(25)の適時三塁打で勝ち越し、佐藤輝明外野手(26)にも右翼への適時二塁打が出て、この回一挙4得点で一気に逆転。チームは5-4で勝利した。阪神は優勝へのマジックは「7」に減らした。

近本はこのまま不振脱却となるのか。阪神監督時代の2005年と2023年にリーグ優勝、2023年は日本一にも輝いた名将で、現在は阪神のオーナー付顧問を務める岡田彰布氏(67)は、30日のラジオ番組「ショウアップナイター」(ニッポン放送)の中で、この日の巨人戦(甲子園)の解説をした際、近本の打撃不振について、「近本は当分打てないね。疲れてる。バテだね」「素振りを見ても、上半身ばかりで振っている。下半身が使えていない」と指摘した。

阪神の岡田彰布オーナー付顧問

岡田顧問は、31日の巨人戦(甲子園)のスカイAの中継で解説をした際には、近本が初回の第1打席で横川凱投手(25)に対し、遊ゴロに倒れると、「疲れもあるんだろうけど、バットが振れていない」とコメント。

上林誠知

7回に近本が39打席ぶりとなる安打となる二塁打を放った際には、岡田顧問は、「一か八かで行ったね。調子が悪いからこそ打てた球」と語った。

31日までで出場119試合、打率.277、リーグトップの27盗塁という成績を残している近本だが、打撃不振のほかに足の状態も不安視されている。

28日のDeNA戦(横浜)でベンチスタートとなった近本について、29日の「サンケイスポーツ」によると、藤川球児監督(45)は「選手おのおののコンディションはなかなか伝えることができない」とコメント。

こうした中、近本は足の状態が悪いことを、盗塁王を争う中日の上林誠知外野手(30)によって明かされたのだ。

30日のDeNA戦(横浜)で2度の盗塁を成功させ、今季の盗塁数を26に伸ばし、トップの近本に1盗塁と迫った上林だが、28日のヤクルト戦(バンテリン)後のヒーローインタビューの中で、近本の足の状態が悪いことに言及。上林はいったい何を言ったのか。

高橋尚成氏

28日の上林は逆転の2点適時打を放ち、チームは4-3で勝利。試合後にはお立ち台にあがった。

そして上林はこのヒーローインタビューの中で、自身の体の状態について、「8月1日に30歳になったんですけど、結構体がボロボロでして。休みなんかもちょくちょくもらいながら出てるんですけど」「まだ26試合あるんで、まあボロボロな体で頑張ります」とコメントした後、盗塁王を争う近本について、「いやぁ、オールスターで近本さんとその件について話したんですけど、お互いに足がちょっと悪いので」「けがだけは避けたいんで、足と相談して走りたい」と語った。

この近本の足の状態について上林が言及した部分が、29日までに「中日スポーツ」や「日テレNEWS」で報じられ、X(旧ツイッター)上では、ヒーローインタビューの該当部分のインタビュアーとのやり取りが書き起こされて拡散され、阪神ファンたちからは怒りの声が上がっている。

上林はなぜ近本の足の状態に言及したのか。拡散されている書きおこしを見る限り、インタビュアーから自身の体の状態を質問された流れで、近本との盗塁王争いについても聞かれており、これに答えた際の回答が、近本の足の状態への言及につながったようだ。

上林に対しては、阪神ファンたちから、「上林、そういうの勝手にバラすのは辞めて欲しいウチの監督がずっと黙ってきた意味がない」「上林が近本の足の状態暴露してるのどう考えてもやばい」「てかそもそもなぜ記者は近本の話を振ったんや上林のヒロインなんだから上林の話を聞けよ」などと批判の声が寄せられた。

上林が31日のDeNA戦(横浜)で藤浪晋太郎投手(31)から死球を受けると、X上では、これを冗談交じりに解釈したユーザーのたちの、「近本の内情を喋った上林にぶつける藤浪晋太郎、猛虎魂を隠しきれてないぞ」「藤浪上林に当てたのか。近本さんの機密情報バラしたからか?」などという書き込みも散見された。

一方で、上林を擁護する声も少なくなく、「言葉のあやで思わずポロって出てしまった可能性もあるので上林を責めることはできない」「プロ野球チームのスコアラーも馬鹿ではないから、上林が言わなくても、近本が足ちょっと痛めてるくらいは見ててわかってるよ」という反応もある。

気になる近本の今オフの動向についてだが、26日のFRIDAY DIGITALが、「巨人が阪神・近本光司獲得に向け『調査開始』…『総額約30億円』&家族へのサポートで熱烈勧誘か」という見出しの記事を配信したほか、27日の日刊ゲンダイDIGITALは、「阪神は引き留め料“大出血”必至…国内FA近本光司の残留に使う巨額マネー」と題した記事を配信し、球界関係者の話として、近本の争奪戦が起きた場合のソフトバンク〝参戦〟の可能性を伝えた。

26日配信の「AERA DIGITAL」の、近本は阪神残留の可能性が高いとする報道もある。

球界OBたちは、近本の移籍の可能性についてどう考えているか。現役時代に巨人やDeNA、メジャーでもプレーした野球解説者、髙橋尚成氏(50)は28日、自身のユーチューブチャンネルに、「【禁断】阪神近本の巨人FA移籍はあるのか?補強ポイントにズバリ⁉︎巨人が30億円出しても獲得した方が良い理由とは?」と題した動画を投稿し、次の通りに解説した。

近本選手欲しい球団なんていっぱいいるんじゃないかなって思うんですよね。ただタイガースが絶対引き止めますよ、100%引き止めますよ。

これもし近本選手出したら、多分阪神ファンの方たちがとんでもないことになるんじゃないかなという風に思うんですよね。ジャイアンツもねもちろん行くでしょうけど取れないような気がしますけどね。

30億でもし近本選手が獲れたらこれ大万歳じゃないですかね、っていう風に僕は思いますけどね。

近本選手もちろん成績ももちろんですけど、それ以外にやっぱりある程度、1番バッターとして出てくれて盗塁はできるわ出塁はできるわヒットは打ってくれるわ、他の後ろに打つバッターに対しての影響力とか、例えば若手に対しての影響力とかかなり大きいと思うんですよね。

僕はねただFA権を取得してから、正規として複数年契約を結びたいという近本選手の多分思惑じゃないかなという風に思うんですね。

選手としてはやっぱりね権利をしっかり取ってから、そういうことに進んでいった方が多分いろんなもしもしかしたらですよ、例えばタイガースが渋ってたら、他の球団にもいろいろ条件聞いてみたいですよっていうのをできるような状況を作っておいたら、やっぱり選手の価値っていうのはかなり上がっていくと思うんですよね。

そういうことを近本選手はしたかったんじゃないかなという風に思うんですよね。

現役時代は横浜や日本ハムでプレーし、DeNAの1軍ヘッドコーチなども務めた野球解説者、高木豊氏(66)は25日に自身のユーチューブチャンネルに投稿した動画の中で、近本を欲しがる球団として、巨人、中日、DeNA、ヤクルト、ロッテ、ソフトバンクの名前を挙げ、契約金額について、「(年俸は)5億は下らないと思うよ。5億の4~5年(契約)」と予想した。高木氏が語った主な内容は次の通り。

巨人なんかは絶対欲しいだろうね、1番バッターというのはね。中日も欲しいだろうし、ほとんど欲しいと思うよ、安ければね(笑)。そりゃDeNAだあって1番候補はいるにしても安定感にかけるからさ、近本・桑原(将志)で1・2番組ませたら嫌だぜ。巨人とか、ヤクルトももちろん欲しいよな、来てくれるんだったら。

パリーグだってロッテだって欲しいだろうな。ソフトバンクも欲しいだろうな。(外野は)いるけど、1番・近本、2番・周東(佑京)、逆でもいいよ、嫌だぞ?

高木氏は25日の動画の中で、かつて阪神の正捕手だった梅野隆太郎捕手(34)の今オフの移籍の可能性についても言及した。

梅野は2021年に国内FA権を行使せず結んだ4年契約の最終年で、今季推定年俸は1億6000万円。

今季の出場はここまで43試合。昨季は95試合に出場していた。梅野は正捕手の座をつかみつつある坂本誠志郎捕手(31)の陰で出場機会が減っており、今季終了後FA権を行使して移籍する可能性がある。

前出の高木氏は、梅野を欲しがる球団として、高木氏は、中日、オリックスの名前を挙げつつ、「阪神は(移籍を)全力で止めると思う。それはなぜかと言うと、坂本(誠志郎)の後だとすると、まだ梅ちゃんだもんね。榮枝(裕貴)出たけども、まだまだ経験値だとかいろいろ考えると梅ちゃんだしな」「でもそれでも出たいというんだったら、どこか獲るところはあると思う」と語った。

梅野と並んで今季オフの動向が注目される近本は、昨年オフには複数年契約の提示を断り、単年契約を結び、今季推定年俸は、3億7000万円。

球団側は全力で近本を慰留する方針で、粟井一夫球団社長(61)は今月18日までに、「準備はしている」とコメントし、阪神の竹内孝行球団副本部長は、「シーズンが全部終わってからしっかり話はしたいなと思っております」というコメントが19日の「サンケイスポーツ」で伝えられた。近本本人はどう考えているのか。

近本はFA権を取得した今月19日、「まずここまでけがなくこれたことと、毎年試合に出ることができたというところで、いろいろな人に感謝しながら、7年間関わった人、またそれまでに関わった人、色々な人に感謝したいなと思います」と話している。

近本本人は、昨年オフの契約更改交渉を終えた後の会見で、FA権を行使した結果、残留を選択した阪神の同僚でチームの主砲の大山悠輔内野手(30)について、「すごく悩んでいたし、ストレスもあったと思う」「僕も来年、その立場になるかもしれない。そういうことも踏まえていろんな話を聞いていました」と語っていた。

大山の争奪戦には、巨人や西武も参戦したことで〝FA狂騒曲〟となり、〝場外TG戦〟としても注目されたが、大山は結果、5年総額17億円プラス出来高払いで残留した。近本は今季オフ、どう動くか。

■近本光司(ちかもと・こうじ) 平成6(1994)年11月9日生まれ。兵庫県・淡路島出身。兵庫県立・社高校、関西学院大学、大阪ガスと進み、2019年にドラフト1位で大阪ガスから阪神に入団。1年目から故・長嶋茂雄さんが持っていた153安打のセ・リーグ新人記録を塗り替える159安打を放ち、2年目以降も阪神の中心選手として不動の地位を築いた阪神のスター選手。

2021年は178安打で最多安打のタイトル、2019年・2020年・2022年から2024年と盗塁王は5度獲得。俊足を生かした守備では21年から4年連続で外野手でゴールデングラブ賞を受賞した。

■梅野隆太郎(うめの・りゅうたろう) 平成3(1991)年6月17日生まれ。福岡県那珂川市出身。福岡・福岡工業大学附属城東高校、福岡大学と進み、2013年にドラフト4位で福岡大から阪神に入団。2018年から3年連続で捕手でゴールデングラブ賞を受賞した。

2019年には、123補殺を記録し、捕手のシーズン補殺日本記録を65年ぶりに更新。阪神の捕手のシーズン最多盗塁となる14盗塁も記録した。日本代表が金メダルを獲得した2021年夏の東京五輪にメンバーに選出され、プレーした。

■上林誠知(うえばやし・せいじ) 平成7(1995)年8月1日生まれ。埼玉県さいたま市桜区出身。宮城・仙台育英高校から、2013年にドラフト4位でソフトバンクに入団。2018年にはシーズンフル出場を果たして、打率.270とキャリアハイの22本塁打の好成績を残した。2022年には右アキレス腱断裂の大怪我に見舞われた。

2023年オフに戦力外通告を受け、2024年からは中日でプレーしている。今季は8月31日時点で、112試合に出場し、打率.282、15本塁打、26盗塁をマークし、復活を印象付ける活躍。盗塁王争いでは、トップの阪神・近本の27盗塁に、1盗塁差と迫っている。

■岡田彰布(おかだ・あきのぶ) 昭和32(1957)年11月25日生まれ。大阪府大阪市出身。大阪・北陽(現・関西大学北陽)高校、早稲田大学と進み、1979年にドラフト1位で阪神に入団。1980年に新人王、1985年に二塁手でダイヤモンドグラブ賞とベストナインを受賞した。

1985年にはクリーンアップを組んだ掛布雅之・ランディ・バースに続いて、巨人の槙原寛己投手から放った「バックスクリーン3連発」で知られる。1994年にオリックスに移籍し、1995年限りで現役を引退した。

2004年から2008年にかけては阪神の監督を務めた。2005年はリーグ優勝したが、日本シリーズではロッテが4勝0敗で、4戦の合計スコアは33-4と圧倒し、阪神は日本一を逃した。

2010年から2012年はオリックスの監督、2023年から2024年には再び阪神の監督を務めた。2023年の阪神は18年ぶりのリーグ優勝を果たし、38年ぶりの日本一に輝いた。監督退任後の2024年11月には阪神のオーナー付顧問に就任した。

■髙橋尚成(たかはし・ひさのり) 昭和50(1975)年4月2日生まれ。東京都墨田区出身。東京・修徳高校、駒澤大学、東芝と進み、1999年にドラフト1位で東芝から巨人に入団。2007年に最優秀防御率のタイトルを獲得し、投手でベストナインを受賞した。2010年にはメッツとマイナー契約し、開幕直前にメジャー昇格。1年目で10勝を記録した。以降、エンゼルス、パイレーツ、カブス、ロッキーズを渡り歩き、メジャーでは4シーズンプレーした。

2014年からは日本球界に復帰し、横浜DeNAに入団。この年で現役を引退した。引退後は野球解説者として活動。2020年にはユーチューブチャンネルを解説し、ユーチューバーとしても活動している。

■高木豊(たかぎ・ゆたか) 昭和33(1958)年10月22日生まれ。山口県防府市出身。山口・多々良学園(現・高川学園)高校、中央大学と進み、1980年にドラフト3位で中央大から横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNA)に入団。1984年に盗塁王のタイトルを獲得。1983年に二塁手でダイヤモンドグラブ賞、1985年に遊撃手・1990年と1991年に二塁手でベストナインを受賞した。1994年は日本ハムでプレーし、現役を引退した。生涯通算打率.297を残した。

2001年からは古巣ベイスターズの1軍の守備・走塁コーチを1年間務めた。2004年のアテネ五輪では日本代表監督の長嶋茂雄さんの要請で、守備・走塁コーチを務め、銅メダル獲得に貢献。 2012年からは横浜DeNAの1軍ヘッドコーチを1年間務めた。野球解説者として活動しつつ、2018年にはユーチューブチャンネルを解説し、ユーチューバーとしても活動している。 3人の息子(高木俊幸・高木善朗・高木大輔)は、いずれもプロサッカー選手。

(zakⅡ編集部・小野田聡)

■小野田聡(おのだ・さとし) ライター歴2年。産経デジタル新卒入社6年目。現在はzakⅡ編集部に在籍。エンタメ・スポーツ分野の執筆経験が豊富。1996年生まれ。X(旧ツイッター)のアカウントは@zakdesk。