ずぶ濡れの畳の下、木の床も泥が覆う…寝る場所ままならず「どうすれば」――住宅地を襲った濁流、頼みのボランティアが復旧後押し 鹿児島市和田

床上まで浸水した自宅を掃除する藤元ミエ子さん(右)=24日午前、鹿児島市和田3丁目

 鹿児島県本土を横断した台風12号は県内各地に大きな被害を出した。21日夕方、近くの川が氾濫した鹿児島市和田3丁目は、地元有志らの聞き取りで、80棟を超える住宅の浸水被害が確認されたがまだ全容は見えない。災害から3日たった24日、被災住民らは片付けに追われた。家財道具が水没し途方に暮れる姿も。ボランティアも続々と現地入りし復旧を後押しした。

 「大事なものも何もかも水に漬かった。どうすればいいのか」。和田川近くに住む藤元ミエ子さん(93)は困惑する。24日は早朝から、一緒に暮らす息子の修司さん(65)らと家族3人で片付けた。庭はぬかるんだまま。ぬれた畳は前日取り払ったが、むき出しとなった木の床は湿ったままで泥が大量に付着する。

 和田川が氾濫した21日は午後5時ごろにかけ、床上まで水が押し寄せた。「あっという間に水が来た。怖かった」と振り返るミエ子さん。平屋のため、今も寝る場所がままならず「何もかも困っている。どれぐらい費用がかかるのか心配」。修司さんは「お互い無事だったのが何より。前を向いていきたい」と語った。

 被災住民の力となっているのがボランティアだ。地元の有志ら6人は22日、ボランティアの受け付けなどを担う拠点を立ち上げた。場所を提供したのは地元の妙行寺。近くに住む防災士の合原千尋さん(45)を中心に被害確認を開始した。

 23日までに220戸から聞き取り、非公式ながら床上17棟、床下64棟の計81棟の浸水を確認。22〜24日はボランティアのべ150人を受け入れた。南九州市頴娃から駆け付けた農業久保山晋治さん(48)は藤元さん宅を支援。「できるだけ早く元の生活に戻れるよう手伝いたい」と話した。

 合原さんは「1人暮らしの高齢者や空き家もあり課題は山積している。町内会と連携しきめ細かく対応したい」。住職の井上従昭さん(63)は「地域で助け合い災害を乗り越えられれば」と語った。

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