「もう学校には行けないかも」不登校に悩む母娘の葛藤を描いた『娘が小1で不登校になりました』著者インタビュー

1もう学校には行けないかもなぁ

2023年の文部科学省の調査によると、不登校の子どもは11年連続で増え続けているそうです。

友人とのトラブルや先生との関係など原因が明確にわかっている場合もあるけれど、いくつもの理由が重なっていたり、理由がわからない…というケースも少なくありません。今や特別なことではなく、誰でも不登校になる可能性があるのです。

『娘が小1で不登校になりました 先生が怖くて学校に行けない』は、入学して早々に不登校になってしまった娘と、戸惑いながらも娘に寄り添って支える母親の姿を描いたセミフィクションコミックです。

早速、『娘が小1で不登校になりました 先生が怖くて学校に行けない』のあらすじをご紹介しましょう。

不登校になったきっかけは、「宿題」でした…

緊張しながらも入学を楽しみにしていたこっちゃん

小学1年生になるこっちゃんは、真面目で不安が強いタイプ。新たな環境に緊張しながらも、入学を楽しみにしていました。

入学3週目で、うめきながら何かを訴え始めて…

そして、ついに学校生活がスタート!初めは「おともだちできたよー」と楽しそうに通っていましたが、週を重ねるごとに元気がなくなり、うめきながら何かを訴えるように…。様子がおかしいと感じながらも原因がわからない中、こっちゃんの話を聞きながら、なんとか楽しく学校に通えるよう試行錯誤するママ。

この目はママの目だよ

頑張らない時間があってもいいんだよ

「頑張らない時間があってもいいんだよ」と伝えたり、学校に行きたくないという娘の気持ちに共感したり、ポイント制を導入したり…。そうする中で、なんとか学校に通えていました。

ママ!「お」のプリントがないよ!

ところがある日、宿題のプリントがない!と騒ぎ出すこっちゃん。ママやパパも一緒に探したけれど見つからず…ついに泣き出してしまいます。「ダメなの!おこられるから!」と、ただ事ではない様子で学校に行きたくないと訴えるこっちゃんに困惑するママ。

がっこうヤダいきたくない

次の日の朝、ついにこっちゃんは学校に行けなくなってしまいます。落ち着いてから話を聞いてみると、唯一わかったのは担任の先生が「こわい」ということ…。

担任の先生と相談してもどことなく話が噛み合わず、戸惑いを感じます。さらに担任がこっちゃんの腕を無理にひっぱる様子や、子どもたちへ高圧的な態度を取っているのを目撃して、ママの不信感は募っていくのでした。入学して早々に不登校になってしまったこっちゃんに、「このまま登校させなくていいの?」という不安や焦りを感じたママは…。

不登校に悩む母娘の葛藤がリアルに描かれているセミフィクション作品。著者・ことりさんは、なぜ本作を描こうと思ったのでしょうか。また、どのような想いで描いたのでしょうか…? お話を聞きました。

「ありのまま」を描いた育児日記が電子書籍に

――SNSやブログで育児漫画を投稿されていることりさん。漫画を描き始めたのはいつですか?そのきっかけも教えてください。

ことりさん:7年前の、娘が2歳の時から育児日記として描き始めましたが、途中から娘が大人になった時に「こんな気持ちで育てていたんだな」と知ってほしい気持ちも入っていました。日々の言葉だけでは伝えられない、可愛くて愛しくて大好きで、でも悩んで辛くて泣いた日々。過ぎてしまえば、どれも愛しい日々となり忘れてしまうので、過去が美化されてしまう前にありのままを描こうと思って描き続けています。

色々なことを頑張っているんだろう

――電子書籍化の話を聞いたときのお気持ちをお聞かせください。

ことりさん:正直、「なにかの詐欺か?!」と思いました(すみません)。自分が育児日記として描いたものが電子書籍になるとは思いもしなかったので。それと同時に、不安もありました。せっかくお声がけいただいたのに、ちゃんとできるだろうか、売れなかったらどうしよう…などなど。でも担当の方が真剣に作品と向き合い、より良いものにしようという熱意が伝わり、「やるしかない!」となりました。

――ことりさんと担当さんの熱がこもった作品なんですね!読者からは、どのような反響がありましたか?

ことりさん:公立小学校の制度や先生のやり方の古さを指摘するコメントや、お子さんやご自身が同じような経験をして苦しかったとのコメントが多かったです。まだ未就学の子の親御さんは、不安になってしまった方もいたようです。

はいはい、すぐ準備するー

自分でやりなさい!

モヤモヤした気持ちも、娘を想って悩んだ証

――本作は「不登校」というデリケートな内容ですが、描くまでに葛藤はありましたか?

ことりさん:葛藤はありました。娘自身が私の漫画をみているので、私の投稿やコメントに傷つかないか、辛い思いをしないかと悩みました。ですので、ある程度心が落ち着いて生活が安定してから、娘の許可を得て描いています。学校関係やご近所の方、娘の友人関係に、一切この漫画のことを話していないので描けたのかもしれません。

この子の笑顔を守りたい!でただ…

――作中には母親としての葛藤や子どもを応援する気持ち、モヤモヤとした心情などが詳細に描かれていて、読者も一緒に悩んだり、わかる!と共感できる部分が多くあると思います。本作を描くうえで心がけたこと、気をつけたことはなんですか?

ことりさん:ありのままを描くことです。もっと美化して上手くいっている内容を描きたくもありましたが、将来娘に見せるための日記と考えると、それはできませんでした。モヤモヤした気持ちも私が娘を想って悩んだ証だと思うと、ありのままを記録したいと感じました。

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本作のテーマである不登校だけでなく、育児をしていると悩みが尽きませんよね。そんな日々でさえいつかは愛おしく思えるはずと、ありのままの育児日記を描き続けていることりさん。作中では、現代において誰にとっても身近な不登校について、「ありのまま」に伝えてくれています。親として悩み、揺れながらも子どもに寄り添う姿に、多くの人が勇気づけられるはずです。

取材・文=松田支信