日本は核武装すべきか否か 田母神俊雄氏「核は究極的な抑止用兵器。国が潰れるほど追い込まれない限り使われない」安部敏樹氏「日本が核を持つと世界的な核保有の合図になる」

日本は核武装すべきか否か 田母神俊雄氏「核は究極的な抑止用兵器。国が潰れるほど追い込まれない限り使われない」安部敏樹氏「日本が核を持つと世界的な核保有の合図になる」

国会議員による日本の核武装に関する発言が目立っている。参政党・塩入清香参議院議員が「核武装が最も安上がりで、最も安全を強化する策のひとつ」と発言したことをきっかけに国会でも物議を醸すと、自民党・松川るい参議院議員もロイターの取材に対し「トランプ氏は予測不可能だ。常に私たちは『プランB』を考えておかなければならない。プランBはおそらく独立し、核兵器を持つ決断をするということかもしれない」とも述べた。このほか自民党の有力議員からも、アメリカによる拡大核抑止、いわゆる「核の傘」の信頼性を高めるために非核三原則を再解釈する案を検討すべきという発言もあった。

「ABEMA Prime」では日本の核武装に対して賛成派、反対派による討論を実施。実際に撃たれることはないという前提でも核武装が抑止につながる意見、また唯一の被爆国である日本が核武装に踏み切ることが、世界的な核の拡散につながるという意見などがぶつかった。

■核ミサイルは戦闘機より安い?

参政党の顧問を務める元航空幕僚長・田母神俊雄氏は「さや(塩入)議員に核武装は安上がりだと教えたのは私だ」と前置きし、コストメリットを語る。「戦闘機1機と核ミサイル1発、どちらの破壊力が大きいと言えば核ミサイルだが、戦闘機の方がはるかに高い。核武装はしていないより、していた方が安全だ。なぜなら周りの国がみんな核武装国だからだ」。

拓殖大学国際学部教授の佐藤丙午氏は「核を持つべきか持たないべきかという議論があるのは、すごく健全なこと」とし、その上で「日本がなぜ非核三原則を維持すべきなのか、核を持たない選択をするのかは、議論がなされた上での合理的な結論だ。核が抑止力として機能するには、それだけの数を持たなければいけないし、相手が日本の核兵器を怖がらなければいけない。また、その段階に至るまではかなりの時間がかかる。果たして現実的な安全保障政策なのか踏みとどまって考えなければいけない」と述べた。

田母神氏は、核弾頭の保有数に各国に大きな差はあれど、保有していることでの抑止に意味があると訴える。「昔は核兵器も通常兵器と同じで、同じ数だけ持たないと抑止にならないという理論だった。しかし最近では通常兵器と違って、戦力のバランスを必要としない兵器だとなっている。北朝鮮が50発、アメリカが5000発持っていても、北朝鮮の抑止力は成り立つ。なぜなら一発の破壊力が大きいからだ。この2国で核ミサイルの撃ち合いになったとして、アメリカが北朝鮮の50発を完璧に全部撃ち落とすのは無理で、必ず1発か2発は入る。そうするとニューヨークが消えてしまうかもしれない。(アメリカが勝ったとしても)ニューヨークが消えたのに戦争は勝った、とは言えないだろう」。

さらに核は通常兵器と異なり、使う目的ではなくあくまで戦争抑止を目的としたものだと主張する。「核兵器は先制攻撃用の兵器ではない。追い詰められてもう殺されてしまう、もうみんな死んでしまう、国が潰れてしまうという状態まで追い込まれなければ使われることはない。なぜなら使えば必ず核の報復を受けるからだ。相手に大損害を与えても同じだけ自分も被害を受ける。核兵器は徹底的で究極的な抑止用の兵器だ」。

■日本が核を持ったら世界にも広がる?

一方で、リディラバ代表・安部敏樹氏は世界で唯一の被爆国である日本が、核武装をすることの意味合いは非常に大きいと語る。「日本が北朝鮮と同じように、自国を守らなきゃいけない状況になったら、核開発をすることが正解になる可能性もあるとは思う。ただし原発の最終処分場すら作れない国で、放射性物質の話を一足飛びに決めるのは歴史的な背景を見ても無理ではないか」と、国内での反発の大きさを想像する。

さらに「日本が核を持つことは、世界的な核保有におけるエスカレーションの合図になる可能性が高い。これだけ『被爆国です』『核は持たないようにしましょう』と言っていた日本が『核を持ちます』と言うと、各国でも持ちましょうという話になるのではないか。日本が外交上も含めて考えるのであれば、日米同盟をしっかり引き寄せ続け、核は持たないが何かあった時にしっかり戦える状態を作った上で、あくまで核を廃絶させる方向のポジションでいる方がいいと思う」と述べた。

佐藤氏は、アメリカの“核の傘”の信頼性について注目する。「今回のウクライナ戦争においてロシアが核兵器を使う可能性、もしくは核の使用を現実的に検討したと報道されて、それに対してアメリカが、やはり核の脅しによってロシアの核の使用を押しとどめたとも報道されている。その点においては核の傘が成り立った。核の傘はある程度、信用はしている」と評価する。

ただし、広島県・湯崎英彦知事が6日に行われた平和記念式典の際に「核抑止はフィクション」といった趣旨の発言をしたが、これにも理解を示す。「フィクションであることは間違いない。そのフィクションが今、維持されていることが非常に重要で、フィクションをどれだけ維持していくかが我々にとって非常に重要な政策になることは間違いない」。また改めてウクライナを例に出し「日本は日米安保、核抑止のもとにあるが、アメリカの核抑止から離れて単独の国家になった時、まさにウクライナと同じ状況に陥る」とも述べていた。

(『ABEMA Prime』より)

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