ウクライナ戦争における対ドローンDIY装甲、ますます「マッドマックス」的になる

ドローン攻撃に対抗するためにケージ装甲に覆われたウクライナ軍の車両。

  • ウクライナ戦争では、ドローン攻撃に対抗するための「コープケージ」がますます高度になっている。
  • ロシアとウクライナの両軍は、車両に手作りのケージ装甲を装着するようになっている。
  • 装甲の効果には差があるものの、乗員保護の面では一定の役割を果たしている。

ウクライナとロシアの戦闘車両に装着されるケージ装甲は、ますます過激になっており、映画『マッドマックス』やビデオゲームに登場する過剰にカスタマイズされた世紀末の車両を彷彿とさせる。

ケージ装甲とは、ドローン攻撃から車両と乗員を守るための即席の装備のことをいう。その最新バージョンが、ウクライナのドネツク州北部のコスティアンティニフカで2025年8月11日に撮影された。これはウクライナ軍の車両で、アメリカ製のハンヴィー(HMMWV)と思われる車両に保護用装甲が施されている。

車両は金属製ケージやネットで覆われ、上部や側面からは棒が突き出ている。

このような写真は、戦場で最大の脅威であるドローンから軍用車両を守ろうとする不断の努力を捉えており、ドローンの低コスト化が戦争のあり方を変えていることを示している。

ロシアもウクライナ同様、車両の保護を強化している。しかし、装甲が車両に標準装備されているわけではないため、両軍の兵士は手作りの装備を車両に取り付けることがある。

ロシア軍の車両の中には、ケージ装甲によって車種の判別すらできないものもある。7月に撮影された戦闘映像には、大きなケージと大量のネット、さらにその他の資材で覆われたロシア軍の戦車が映っていた。

これらの装甲は「コープケージ」とも呼ばれ、2023年から戦場で見られるようになった。その頃、数百ドル程度の安価なドローンが数百万ドルの戦車を撃破するなど、深刻な脅威になっていたからだ。戦場でドローンの存在感が増すにつれて、こうした装甲は急速に普及していった。

ケージ装甲の外観や効果はさまざまで、急ごしらえで粗雑に作られたものもあれば、工夫を凝らして取り付けられたものもある。当初は戦車などの装甲戦闘車両にしか見られなかったが、次第に多様な兵器システムに広がっていった。

T-64戦車に取り付けるための格子状の装甲を用意するウクライナ軍修理大隊の兵士。2024年2月3日、ウクライナ・ドネツク州にて撮影。

これらの装甲には、金属製ケージやネット、鎖、スパイク、金属板などが用いられ、車両の最も脆弱な部分を守るために、爆発反応装甲が併用されることもある。また、車両の速度や機動性に影響を及ぼしかねない複雑で重い構造のものや、迷彩の素材やネットを用いたものも見られる。ロシア軍のコープケージの中には、装甲が亀の甲羅のように車両全体を覆っていることから「亀戦車」と呼ばれるものもある。

これらのケージは、対戦車兵器やFPVドローン(first-person-view drones:操縦者がドローンから見た視点の映像をリアルタイムで見ることができる)に対しては防護効果が期待できるが、実戦における運用面でどれだけの影響を与えられるかについては疑問が残る。

ロシア軍の「亀戦車」。2025年8月初旬、ウクライナ、ドネツク州のクラスノホリウカ近郊にて撮影。

このような装甲が導入されて以来、軍や防衛企業が一部のデザインを標準化し、戦闘車両に実装するようになっている。

爆薬を搭載した安価なホビー用無人機をはじめとするドローンの脅威は、戦車や装甲車両、戦場で動くあらゆるものに及んでおり、ウクライナ戦争における支配的な要素のひとつとなっている。ロシアとウクライナの双方が多用するこうしたドローンは、わずかなコストで数百万ドル規模の高価な戦車を損傷・破壊したり、その乗員を死傷させることができるという非対称的な戦闘効果を実証している。

FPVドローンが、コープケージで覆われた車両に接近する様子。ウクライナ軍第10山岳旅団「エーデルワイス」第8大隊が、2024年5月6日に公開した映像からのキャプチャー画像。

コープケージはドローン攻撃に対する最後の砦だ。この他の防衛手段として、ロシアとウクライナは戦場で盛んに電子戦を行い、操縦者とドローンの通信を遮断したり、GPSや位置情報に干渉したりしている。