【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も
【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も
カスピ海北岸に面するカザフスタン・アティラウ州の村落カスピー。かつては国営の漁業集団の拠点だったが、現在は人けもなく荒れ果てている
<世界最大の湖とされるカスピ海の面積は、日本の国土総面積(37万8千キロメートル)とほぼ同じ。その岸は驚くべきスピードで後退し、21世紀末にはほぼ砂漠化すると予想される地域もある。カザフスタンのカスピ海沿岸からのフォト・ルポルタージュ>
ロシアやカザフスタンなど5カ国に囲まれた世界最大の内海、カスピ海が急速に縮小しつつある。水位は1990年代半ばから約2㍍低下し、今世紀末までにほぼ干上がるともいわれる。海岸線が50㌔後退した地域もあり、石油産業などの経済や人々の生活に深刻な打撃が及んでいる。
最大の原因は水源であるボルガ川やウラル川にダムが建設され、水の流入量が減ったこと。気候変動による蒸発量の増加も追い打ちをかける。
だが周辺国の対応は鈍い。ウクライナ紛争を抱えるロシアは、環境よりも河川流域の経済的利益を優先している。最も影響を受けるカザフスタンは水資源の管理に取り組んでいるが、成果は乏しい。
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【21世紀末のカスピ海の水位予測。ほぼ砂漠化する地域も】
資料:Samant, R., Prange, M. Climate-driven 21st century Caspian Sea level decline estimated from CMIP6 projections. Commun Earth Environ 4, 357 (2023)
ウラル川河口に位置するカザフスタンの村ダンバでは重機が浅瀬を絶えず掘削しているが、立ち往生した船が放置されている。一方でロシアが大量の水を放流し、下流の町が浸水することも。干上がった荒地と水没した町という両極の光景が、カスピ海の惨状を象徴している。
Photographs by Julien Pebrel
撮影:ジュリエン・パブレル 1983年フランス生まれ。旧ソ連圏の領有権が定まらない土地の社会課題などの作品で知られる。現在は、ジョージアの首都トビリシと仏パリを拠点に、ジョージア社会の多様な側面を取材し、長編のドキュメンタリー映画を製作中。
【連載21周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」 2025年8月26日号掲載
(以下引用)
(左)かつて海だった場所に取り残された魚の死骸(右)ウラル川の河口付近に位置する村ダンバでは、河口の浅瀬から掘り出された 土砂が積み上げられている。鳥が集まっている一帯の水深はわずか数センチだ
(以上引用)
(以下引用)
ウラル川での漁業は禁止されているが、地元住民は規制を無視して漁を続けている
(以上引用)
(以下引用)
アティラウ州の町イサタイではラクダの飼育が重要な生計の手段となっている
(以上引用)
(以下引用)
ウラル河口の村ダンバで、身動きが取れなくなり放置された船を移動させる人々
(以上引用)
(以下引用)
(左)ザナ・ジャンバイとカスピ海を結ぶ荒地に放置された船。かつては一帯に海が広がっていた(右)アティラウ州ザナ・ジャンバイに暮らすイブラギム・ボザカエフ(68)と生後9カ月の孫。この村は約30年前、海面上昇による集落の水没を懸念した当局が、住民の移住先として造成した。だがその後、海岸線の後退が続き、今では村は海から30キロも離れている
(以上引用)
(以下引用)
イサタイの入り口に広がる砂丘
(以上引用)
(以下引用)
ウラル川を巡回する環境監視員
(以上引用)
(以下引用)
砂漠化が進むアティラウ州クルマンガジでほこりや砂の除去作業をする人々。呼吸器系の疾患も増えている
(以上引用)
(以下引用)
ダンバの河口付近を掘削する重機。水位が低すぎて魚が産卵のために川を遡上できない
(以上引用)
(以下引用)
ロシアがウラル川上流で大量の水を放出した影響で水没したアティラウ市の遊歩道
(以上引用)
Photographs by Julien Pebrel
【連載21周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」 2025年8月26日号掲載