【権力の偏執】習近平主席、忠実な側近まで粛清…“スターリン型”権力集中で統治の不安定化進む

出典:AFP通信
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は20日付コラムで、習近平国家主席による側近粛清が相次いでいる現状について「権力の弱体化ではなく、忠誠派であっても互いに競わせ、自身の統治を維持するための偏執的な執着から生じている」と分析した。
NYTはまた、習近平国家主席の政治的粛清は、ゼロコロナ政策の長期化による経済停滞といった政策的失敗の後に必ず現れる権力集中化の典型であり、スターリンや毛沢東の歴史的事例と重なると指摘。現在進行中の粛清は「習近平国家主席が窮地にあるのではなく、巨大なシステムを統治することの難しさを示している」と論じた。

引用:朝鮮日報
相次ぐ高官の失脚と消息不明
15日には、中国の次期外相候補と目されていた劉建超・中国共産党対外連絡部部長が拘束されたとの報道が流れた。
さらに、中国軍のナンバー2であり習近平国家主席の側近とされていた何衛東(68)中央軍事委員会副主席も、3月11日の全国人民代表大会閉幕以降、公の場に姿を見せていない。
2025年5月には、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)に董軍国防部長が突然欠席。中国の最高位の閣僚が同会議を欠席するのは21年ぶりであり、その後も董軍国防部長は公の場に姿を現していない。理由は不明とされる。

引用:gettyimageskorea
イギリスのフィナンシャル・タイムズは昨年11月、董軍国防部長が「汚職容疑」で調査を受けていると報道。これに対し中国外務省の報道官は「捕風捉影(風を捕らえ影をつかむ=根拠のない噂)」と一蹴した。
なお董軍国防部長の前任者である李尚福前国防部長も、わずか7か月で解任されている。いずれも習近平国家主席が任命した人物だった。
2022年10月の中国共産党第20回全国代表大会では、胡錦濤前国家主席が突然退場させられた出来事も記憶に新しい。また、2023年10月には李克強前国務院総理が心臓発作で急死し、その経緯を巡っても憶測が飛び交った。
こうした事例から、習近平国家主席の権力弱体化説や、中国指導部内での権力闘争激化説など、さまざまな噂が広まり、微細な動向を分析して政治の変化を推測する「政治ルーモア分析家」と呼ばれる人々がインターネット上で人気を博しているとNYTは伝えている。
米国でも相次ぐ「権力変動」論
アメリカでも同様の見方がある。トランプ政権初期に国家安全保障補佐官を務めたマイケル・フリン氏は、習近平国家主席の側近が次々と排除されている状況について、SNS「X」で「中国では明確なリーダーシップの再編が進んでおり、これは重大な結果をもたらしかねない」と投稿。習近平国家主席の権力基盤に揺らぎが生じている可能性を示唆した。
また、グレゴリー・スレイトン前駐中国米国大使も昨年6月のニューヨーク・ポスト寄稿で「中国軍は張又侠・中央軍事委員会副主席を中心に再編されており、習近平国家主席は退任するか名誉職に退く可能性がある」と主張した。
「忠誠派すら切り捨てる粛清」
NYTの中国籍記者・李源氏は「習近平国家主席はなぜ忠誠派をも粛清するのか」と題したコラムで、米国の中国専門家の分析を紹介した。
それによると、習近平国家主席の粛清は「エリート層を統制し、一人の絶対的権威を確立するために、忠実な側近すら容赦なく排除するスターリンや毛沢東の伝統に従うもの」とされる。
スタンフォード大学フーバー研究所のスティーブン・コトキン上級研究員は「共産主義体制で最も驚くべき点は、忠誠心の厚い人々すら殺されること。変わらず忠実であっても、政権の偏執と暴力の対象になり得る」と語った。
中国共産党の公式統計によれば、2024年には省・中央政府の幹部73人を含む88万9千人の党員が処分され、特に軍は大きな打撃を受けた。2023年以降だけでも45人以上の人民解放軍および軍需産業の高官が失脚。2024年6月には李尚福前国防部長とその前任の魏鳳和前国防部長が、汚職や「習近平国家主席への背信」の罪で党から除名され、起訴された。
政策失敗と中央集権化の連動
スタンフォード大学の政治学者・呉国光氏は「スターリン、毛沢東、習近平国家主席に共通するのは、政策的失敗の後に粛清と権力集中が強まる現象だ」とNYTに語った。
スターリンの大粛清は政策失敗による飢饉の後に、毛沢東の文化大革命も大飢饉の後に発生。習近平国家主席の場合も、ゼロコロナ政策や経済の後退、外交摩擦が続いた後に大規模な粛清が進められている。
NYTは「政策失敗が大きければ大きいほど、粛清の規模と権力集中は拡大する」と指摘した。
エリート層の動揺と政権のリスク
NYTは「習近平国家主席の権力掌握に関する推測は、統治の終焉を意味するものではなく、むしろ党エリート層との緊張の高まりの兆候」と分析した。
元中央党校教授で、現在は共産党批判者の蔡霞氏は「粛清と経済問題はエリート層の利害に直接的な打撃を与える。粛清が続けば、エリートは習近平国家主席ではなく、党そのものが崩壊すると考えるかもしれない」と述べた。
コトキン氏も「習近平国家主席は健康が許す限り10年以上権力を維持できるだろうが、政権の最大の弱点は、エリート層が権力者への信頼を失うときだ」と語った。
米中央情報局(CIA)も今年、中国共産党エリートの不安や分裂を突く映像を制作して公開しており、その中には「昇進すればするほど、上司が突然失脚する姿を見てきた。私の運命も同じく不確かだ」とのナレーションが含まれている。
NYTは「習近平国家主席の粛清がどれほど効果を持つのか、いつ終わるのかは分からない」と結んでいる。
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