牧場の子牛が脱走!「全くモーッ」実は生まれた直後も脱走の前科者、ミルクを見せると戻ってきた

「ぎゃー!!ヤンチャ!!またか!!!」

千葉県で牧場を経営する「西岡牧場」(@nishiokabokujou)さんが投稿されたのは、子牛が道路の上を走り回る姿を捉えた写真です。西岡牧場さんは今年の3月にも子牛に脱走されたばかりで、対策を講じていた矢先に再び逃げられてしまったのだそう。自由奔放な子牛による逃亡劇、いったい何が目的だったのでしょうか? 

「お母さんのお腹の中の頃からヤンチャっ仔なんですね😅」

「全くモーッ」

「ミルクを見せると捕まる☺️…銀の匙で描いてあった!」

「投票箱がちゃんと空か確認しに行ったんじゃないですか?🗳️」

ちなみに、事件が起きたのは7月20日の早朝。世間では参議院議員選挙の当日だったこともあって、「ゼロ票確認ガチ勢説」まで疑われました。

しかし、まだ生まれて間もない子牛の逃亡劇には投稿者さんも肝を冷やしたはず。できるだけ早く捕まえないと大きな騒ぎにもなりかねません。実はこの子牛、生後間もないころにも脱走したという「前科」を持っているとのこと。脱走から捕獲までの一部始終をはじめ、牧場でのお仕事やそのやりがいについて西岡牧場さんにお話を伺いました。

やんちゃな子牛さん、2回目の脱走!(提供:西岡牧場さん)

子牛が脱走したときの状況は?

ーー今年の3月にも脱走があったとのことですが、その時と同じ子牛でしょうか?

「その子牛とは別の子です。今回の子は2回目の脱走の1週間前に生まれたばかりの子で、生まれてすぐに脱走して行方不明になり、みんなで探し回った子でした」

ーー脱走した時の状況は?

「新生児を入れる部屋から、水と餌を自由に摂れる部屋に移してすぐ逃げ出しました。まだ小さかったのもあるのですが、餌を食べるときに顔を出すところから無理やり出たようです。隣の子にミルクをやってベーベー騒いでいたので、『すぐ持ってくるからちょっと待っててね』と言ってミルクを取りに行った20秒足らずの間に逃げ出し、道路を走り回ってました」

ーー前回の脱走を受け、対策を講じられていたのでしょうか?

「対策としては顔を出すところを狭めて出れなくしました。それと一番初めにミルクをやるようにしてます。お腹いっぱいになると落ち着くので」

ーー脱走してから捕まえた時の状況は?

「まずミルクを持ってきたら柵の中にいなかったので、『え!!』と思ってすぐ横の道路を見たら、子牛がピョンコピョンコ跳ね回ってました。それがXに投稿した写真です。

とりあえずミルクを置いて捕まえに行ったら逃げまわって、道路の反対側の親牛の牛舎に突進していきました。首輪を掴んで戻そうと道路の真ん中まで引っ張ったのですが、しゃがみこんで動かなくなったので、ミルクを見せて『ほらほら〜』って呼んだらミルクに気づいて柵の中まで戻ってきてくれて捕獲できました。

逃げた柵からはほんの10メートルくらいの範囲です。ちなみに、1回目の時は生まれたばっかりのはずなのに100メートルほど逃げてます」

酪農家の多忙な1日のお仕事

ーーすごいですね。西岡牧場さんの毎日のお仕事の内容は?

「酪農全般です。細かく1日の流れを伝えると、朝4時半すぎに牛舎へ。まずは子牛の哺乳、育成牛(まだ分娩する前の牛)と乾乳牛(分娩前の産休中の牛)に餌やり、5時半に従業員が出勤したらみんなで搾乳牛を搾乳する牛舎へ移動し、餌やりや搾乳をします」

餌を食べる牛たち(提供:西岡牧場さん)

搾乳中(提供:西岡牧場さん)

「搾乳が終わった牛から順次、搾乳以外の時間は自由に餌食べたり休むことのできる『フリーバーン牛舎』へ戻します。あとは搾乳牛舎の掃除をして、だいたい9時半ごろ終わります。昼は堆肥の切り返しや配達、牛の人工授精、牛床の掃除をしたり機械のメンテナンスをします。あとは牛が調子悪ければ獣医師に診療をお願いしたり、餌や酪農資材などの営業の対応などです。何もない時は遊びに出かけたり、昼寝をしたりもします」

牛舎の掃除も大切なお仕事!(提供:西岡牧場さん)

「夕方3時半からまた朝と同じ工程で搾乳してだいたい7時半に全て終わる感じです。従業員は一日8時間労働です。私は9〜12時間くらいで365日です」

ーーそれは大変ですね。何頭の牛を飼育されていますか?

「今は、経産牛(お産を経験した牛)51頭、育成牛(お産してない牛)30頭飼育しています」

分娩補助の一場面(提供:西岡牧場さん)

ーー牧場のお仕事で、楽しいこと、つらいことは?

「一番楽しいことは牛にちょっかい出して牛と戯れあってる時。牛はビビリのくせに好奇心旺盛です。慣れてくると甘えてきてとてもかわいいですよ。あと意外と日本語が通じます」

一番しんどい時は牛が体調悪くなってしまった時です。もう回復の見込みはないけど抗生物質を注射してしまった時は、休薬期間を過ぎないと食用のお肉として屠場に出荷できないので、その期間は牛の面倒を見るのですが、日に日に弱っていく姿を見てる時は自分の無力さを実感してとても辛いです」

牛乳は数少ない国産100%の食料、飲んで応援して

幸いなことに今回はすぐに捕獲されたとのことで、大きな騒ぎにならず一安心でしたね。また、一年を通して朝早くから夜遅くまで働く酪農家さんの仕事っぷりには頭が下がるばかりです。さらに、西岡牧場さんは酪農業界の過酷な現状についても教えてくれました。

「コロナ以降、2022年くらいから円安やロシア・ウクライナ戦争の影響で酪農はかつてない危機に陥りました。多くの仲間が離農し、生き残った酪農家の多くもなんとか乗り切るために借金をして経営を回している状況が続きました。

その間2度の乳価の値上げをしていただき、この8月から3度目の値上げをしていただきます。おかげさまでなんとか赤字からやや黒字に傾いてきましたが、酪農経営は餌代、機械代にとてもお金がかかります。正直、正常な経営まで戻すにはもう少し時間がかかるとおもいます。

消費者の皆様にとって、この物価高が続く中での牛乳・乳製品の値上げは厳しいと思います。ですがどうか牛乳を飲んで応援していただけると嬉しいです。牛乳は余ってしまうと脱脂粉乳にし、倉庫に保管することになります。

それには経費がたくさんかかり、酪農家の負担も増えます。牛乳は手軽にカルシウムとタンパク質を補える素晴らしい食品です。また数少ない国産100%の食料です。次の世代にも国産の食料を残すために、今、国産の食料を食べて、飲んで応援していただけると嬉しいです。

また、酪農家の仲間が毎月30日の夜8時から10時の間に『#牛乳でスマイルプロジェクト』をつけて、牛乳・乳製品の写真を投稿する牛乳で乾杯という活動を行っています。ぜひ参加して盛り上げていただけると嬉しいです」

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・行橋 友)