50代・築56年団地暮らし。古いキッチンを「一番お気に入りの場所」に変えた工夫
神奈川県横浜市にある築56年の団地で、自分らしい空間づくりを大切に暮らしているShihoさん。YouTubeチャンネル『団地の朝』(@danchinoasa)には、観葉植物や、長年愛用する道具たちが並び、心地よく過ごせる工夫がちりばめられています。
YouTubeチャンネル「団地の朝」Shihoさんの住まい
今回は、Shihoさんのお気に入りの場所であるキッチンや、物を長く大切に使う理由について聞きました。
◆YouTubeのコメント欄は“大人の居場所”
Shihoさん
ShihoさんがYouTubeチャンネル『団地の朝』を始めたのは2024年から。娘さんの一言がきっかけでした。
「娘が、『他の人の生活の様子を見てみたいな』と言ったんです。SNSで普段の暮らしの様子を投稿している人は、今ほど多くなかったのかもしれません。それを聞いて、だったら私が投稿してみようかなと思って、朝ご飯の風景を撮影してみました。娘は、私の生活が見たかったわけではなかったと思うのですが(笑)」
YouTubeチャンネルのコメント欄を、Shihoさんは「大人の居場所」として捉えています。
「コロナ禍では子どもの居場所がないと言われていましたが、大人も同じだと感じました。だから、コメント欄が大人達の集まれる場所になったらいいなと思ったんです。最初のうちは批判的なコメントが書き込まれることもあって、どう対応しようかなと考えたのですが、それも含めてすべて引き受けていこうと思いました。どんなコメントに対しても、『ありがとうございます』と返信していると、そのうちそういったコメントはこなくなりました。
YouTube投稿を続けていると、いろいろな方達から『頑張っていますね』と励ましの言葉をいただくようになり元気付けられましたね。大阪だったり、高知の方だったり、全国の方とコメントを交わすようになって、会ったことのないお友達がたくさんできたようで楽しいです」
◆自分好みにカスタマイズしたキッチン
そんなShihoさんが、家の中で一番気に入っているのがキッチンです。料理をしたり、洗い物をしたり、「そこで過ごしているだけで、何となく落ち着く」と話します。もとは白いキッチンでしたが、自分で赤く塗り直しました。
Shihoさんが海外製のペンキで赤色にしたキッチン
「わざとラフな感じに塗っているんです。海外製の塗料を使ったので、ほとんどニオイがしません。日本のペンキは塗った後に丸一日換気が必要なほどニオイが強いのですが、欧米では飽きたら気軽に塗り替える文化があるらしく、ニオイの少ない塗料が多いようです。うちは賃貸ですが、自由に塗ってOKなので、軽い気持ちで試してみています」
キッチンには、セメントにタイルを埋め込んだ作業台が2つあります。塗料の瓶を土台にして、高さを少し底上げしました。
キッチンにはタイルの作業台が2つ
「このキッチンは私には低すぎるので、こうして高さを出しているんです。タイルを使っているので、熱いフライパンや鍋もそのまま置けます」
塗料の瓶で高さを出している
◆自作した棚にはシンプルな調味料や豆、昆布などが
キッチンの正面には鏡が取り付けられており、「なるべく顔を見るようにして、たるみ防止を心がけているんです」とShihoさんは笑います。
冷蔵庫には、家族の似顔絵や「ソファがくるのが楽しみ」「あそこのどら焼きおいしかった」など、心に残った出来事がメモされており、何気ない日常の楽しみが伝わってきます。
キッチンの奥の窓を半分塞ぐかたちで取り付けられた収納棚は、Shihoさんが「2×4材」(厚さと幅の規格が統一されているDIY用の木材)を使って作ったもの。北向きの窓から柔らかい光が差し込み、3畳のキッチンでも開放感があります。
Shihoさんが自作した棚
「調味料や豆、昆布などはこの棚に置いてあるものですべてです。見えないところに仕舞い込むと使わなくなったりするので。減ってきたら、ここに継ぎ足すぶんだけ買っています」
◆ホーローのボウルがお気に入り
手元を照らすペンダントライト
キッチンのシンクには、手元を照らす位置にペンダントライトが設置されています。洗い物を入れるホーロー製の水切りボウルは、50年ほど使用されている物だそう。
ホーローの水切りボウルは特にお気に入り
「母の友人が手放して、私の実家にとってあったものを10代のときにもらったんです。色が可愛いですよね。ホーローはガラス質でコーティングされているので錆びにくいし、変形しにくいので長く使えます。さすがに少し剥げちゃっていますが。そこも可愛いし愛着が湧きますね」
◆好きな物を長く、大切に使う理由
カトラリー類を収納しているチェスト
40年以上使っている木製のチェストには自家製の梅ジュースを漬けた大瓶が置かれています。引き出しと戸棚の中に、すべての食器やカトラリー類が収まっています。
「昔は食器が大好きだったのですが、ほとんど処分してしまいました。今は日用品や雑貨なども見えるところに置いておくようにして、引き出しの中にはなるべく物を入れないようにしています。これからは物を減らしていかないと、子ども達に迷惑をかけることになってしまいますから。なるべく増やさず、好きなものを大切に使うようにしています」
<取材・文/都田ミツコ 撮影/市村円香>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。