高配当株ETF7本中5本で「かぶった」通信キャリア株は? プロが買う高配当株のべ95銘柄リスト後編【新NISA応援】
高配当の日本株30〜100銘柄をまとめ買いできるETF(上場投資信託)は、高配当株の中でも「選ばれし銘柄」が組み入れられている。ETFで特に多く買われている=株価が底堅い日本株はどれなのか、人気の高配当株ETFの中身を検証した。この記事は後編です。前編はこちら【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025夏号」から抜粋しています】
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高配当株ETFで買われている個別株についてもう少し掘り下げよう。楽天証券外国株式事業部リーダーの上田さんはこう語った。
「高配当株ETFは運用のプロが個人投資家にはまねのできないデータ分析を繰り返したうえでルール化され、設定されます。倒産しづらく、値動きも安定的な高配当株を厳選してくれているのです」
高配当株ETFには、その時点での「選ばれし銘柄」が入っているわけだ。
プロが投資家の「代わり」に調査して、定期的に「運用ルールから外れていないか」をチェックし、外れていたら除外して新しい銘柄に入れ替える。個別株で高配当株に投資する際、銘柄選びの参考にできる!
「高配当株ETFを個人投資家が買うと、ETFの運用側は全体配分に合わせて買い増しをします。
全体相場が暴落しても、ETFの組み入れバランスが保たれている限りは売却しません。
つまり、高配当株ETFの中に入っている銘柄は『プロの買い』が株価の下支え役になっているわけです」
高配当株ETFの採用銘柄は暴落時も底堅い。日経平均の高配当株ETFなどだと、日経平均から除外されることで一定量を売られてしまうが、それはまた別の話。
ETF組み入れ銘柄が底堅いなら、さまざまな高配当株ETFに重複している銘柄は「もっと底堅い」のでは。
そこで、本記事で紹介した7本の高配当株ETFの組み入れ上位で重複の多い銘柄を調べた。
主要な高配当株ETFが重複して保有する銘柄はコレだ。
●ソフトバンク(重複保有5本)
●三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、JT、ホンダ(同4本)
●武田薬品工業、SOMPOホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、キヤノン(同3本)
●日本製鉄、アステラス製薬、川崎汽船、日本郵船、MS&AD、任天堂、コマツ、NTT、東京海上ホールディングス、KDDI、伊藤忠商事、SBIホールディングス、キリンホールディングス、INPEX、三菱商事(同2本)
5本の高配当株ETFで重複したソフトバンクは特に手堅そうだ。
※検証した高配当株ETFのそれぞれの組み入れ銘柄は、本記事の最後にすべて画像で紹介しています
ソフトバンクは通信キャリア大手3社中3位だが、その中で予想配当利回り3.98%(2025年3月21日現在/以下同)と一番高い。
みずほFGはPBR(株価純資産倍率)が1倍前後と割安をキープ。予想配当利回り2.91%はメガバンクの中で現状、一番高い。
■東証ETFか投資信託か
ところで、高配当株のETFもいいが、高配当株が組み入れられた(通常の)投資信託もあり、こちらも人気だ。ETFと通常の投資信託ではどちらがいいのだろう。
前出・楽天証券の上田さんは、分配金に着目して比較した。
「組み入れ銘柄から払われる配当を日々の生活費などに使いたい人は、分配金が定期的に必ず払い出されるETF。
配当を再投資に回してより効率よく資産形成をしたい人は、分配金を抑制するタイプの投資信託を選んでみては」
日々のお小遣いが欲しい人はETF、資産を1円でも多く最短で増やしたい人は投資信託。
たとえば三菱UFJアセットマネジメントが運用する東証ETFの「MAXIS米国株式(S&P500)上場投信」と投資信託の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、中身は同じ。どちらも米国の株価指数S&P500への連動を目指す。
ETFの「MAXIS米国株式」の分配金利回りは年率0.99%(2025年3月24日現在)。
投資信託の「eMAXIS Slim 米国株式」は分配金を抑制し、ファンド内で再投資するので、複利効果により資産が増えやすい。
「運用コストも見てみましょう。
この2本を比較すると、信託報酬はETFのほうが低いです。
ただ、ETFには指数の商標使用料や東証への上場料が信託報酬とは別に基準価額から差し引かれます」
商標使用料や上場料も含めた運用コストの合計はETFの「MAXIS米国株式」が0.13525%(税込み、年率、上限/以下同)。
投資信託の「eMAXIS Slim 米国株式」が0.0814%。
長期運用では投資信託のほうが効率よく資産形成できる。
■高配当株ならETF
現状、新NISAのつみたて投資枠で高配当株の投資信託は買えないが、成長投資枠なら買える。
つまり高配当株のETFも高配当株の投資信託も、新NISAで投資するなら成長投資枠を使う。
高配当株を組み入れた投資信託は分配金が出るタイプが多い。
高配当株が好きな投資家は当然ながら配当が好きなので、そのニーズに応える投資信託が発売されるのは自然な話。
ETFは年2〜4回の分配金支払いが多いが、新NISAで買える高配当株の投資信託には隔月(年6回)で支払うタイプもある。
年4回の「SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)」や「楽天・高配当株式・日本ファンド(四半期決算型)」はコストも安く人気だ。
「ETFは配当だけをそのまま分配金として支払うので、透明性が高いです。
投資信託は組み入れ銘柄の配当からも、値上がり益からも分配金を出せます」
【この記事の元「AERA Money 2025夏号」に掲載された高配当株ETFの図版7つをすべて掲載します。それぞれの組み入れ上位銘柄を比較してみてください】
取材・文/中島晶子(AERA編集部)、安住拓哉
上田 明(うえだ・めい)楽天証券 外国株式事業部 リーダー。関西学院大学卒業後、楽天証券に入社。新NISAや投資関連サービスの企画・開発、個人投資家への情報提供に従事
編集/綾小路麗香、伊藤忍
『AERA Money 2025夏号』から抜粋