2024年のインド株急落の背景は?トランプ関税の影響は?インド株投資信託のファンドマネージャーが解説!

2027年にはGDP世界3位まで浮上するといわれるインド。投資家からの注目度は高く、インド株は長期で大きく成長してきた。しかし、2024年秋には株価が急落する局面も。はたしてインド株は本当に“買い”なのか。NISAのつみたて投資枠で唯一買えるインド株型投信「iTrustインド株式」ファンドマネージャーのプラシャント・コタリさんに、足元の投資環境と長期的な見通しを聞いた。(須賀彩子、ダイヤモンド・ザイ編集部)
2024年秋の急落は中国の影響が大!
この調整により株価の割高感は解消へ
――インド株が2024年の秋に急落した原因は?

プラシャント・コタリさん ●ピクテ・アセット・マネジメントの投資信託「iTrustインド株式」のファンドマネージャー。インド株のアナリストとしてメディア、小売、自動車、金融などを担当した後、ファンドマネージャーとしてインド株運用に従事。20年以上の運用経験を持つ。インド工科大学ボンベイ校卒業(化学工学)、インド経営大学院アフマダーバード校修士(マネジメント)。 Photo by Hiromi Takano
コタリ コロナ以降、中国の経済成長が鈍化したため、世界中の投資資金が中国から退避していました。2024年は、その中国が景気対策や金融緩和を実施したことで、機関投資家の資金がインドから中国にシフト。これが、インド株の急落につながりました。
――今の株価水準は割高? それとも割安?
コタリ 現状のPERは過去の平均と同じくらいです。インド株はとくにコロナ以降に人気化し、歴史的に見ても割高感がありました。PERは、コロナ前だと16倍程度でしたが、株価がピークとなった2024年秋には、22~23倍にまで拡大していたんです。ただ、その後株価が調整したことで、足元のPERは18~19倍程度に落ち着いています。
――世界が警戒するトランプ関税の影響は?
コタリ 世界中で米国による関税の影響が警戒されています。しかし、インドは米国関税の影響がもっとも限定的な国の一つです。国内消費がGDPの6割を占め、輸出は2割に過ぎません。インドでは、米国関税によるGDPへの影響はわずか0.1%と推定されます。

調整により割高感が解消!

――パキスタンとの紛争の影響は?
コタリ インドとパキスタンの間では、数年に一度、紛争が起きています。インドとしてはパキスタンに対して強硬な姿勢で臨むことで、状況が悪化しないようにと考えています。
2048年まで生産年齢人口は増え続ける見通し
年齢の中央値が30歳以下で、若さと勢いがある!
――インド経済の長期の成長ストーリーとは?
コタリ インドの強みは若い人口の多さで、年齢の中央値は30歳以下です。中国は高齢化が進み、すでに生産年齢人口(15~64歳)が減り始めていますが、インドは2048年まで増え続ける見通しです。

――ITがお得意? 教育水準レベルは?
コタリ 教育の質も高く、科学系学位の取得者数は世界1位で247万人います。2位の中国は198万人、3位の米国は90万人です。サイエンスやエンジニアリングの分野で活躍する人材が多く、マイクロソフト、グーグル、アドビなどの米国IT企業のCEOはインド系です。
――インド株がコロナ後に人気化したワケは?
コタリ 以前のインドには小さい企業が数多くありましたが、コロナ禍で再編・淘汰が進みました。大企業が力をつけ、売上高も利益率も伸びるフェーズに入りました。また、州ごとの税金が撤廃され、大企業が州をまたいで全国的に事業を展開しやすくなりました。
インド企業のROEは16%と非常に高く、世界主要国でトップの米国企業の19.5%に次ぐ水準です。なお日本企業は9%です。インド企業は、倹約を通じてコスト管理を徹底しており、高いROEを出し続けています。株価の長期的な成長は、利益成長のほかにROEの高さも寄与しています。
――日本以外の国でもインド株は人気なのか?
コタリ 欧州、米国、中東、シンガポールなど世界中の資金がインド株に集まっています。その中には、政府系ファンドの資金も含まれます。
また、インド国内では個人投資家向けに積立プログラムがあり、多くの人が投資信託を積み立てています。投信の運用資産額は66兆ルピー(約111兆円)と、17年間で13倍に増えました。個人投資家からの安定した資金流入が長期で株価を下支えしています。
――インドで注目される投資テーマは?
コタリ いくつかありますが、その一つがヘルスケア分野です。インドでは生活習慣病が蔓延しており、糖尿病患者数は世界最多で1億人います。インドの病院は、小さな民間病院が全体の59%を占め、大規模な病院チェーンは2%しかありません。今後、統廃合が進み成長する余地があります。
また、インドの医薬品市場は毎年10%のペースで成長しています。売上増に加えて平均寿命も延びているので、医薬品市場は今後も一貫して伸びていく市場です。
――インド株投資でリスクを抑える方法は?
コタリ インド株は上昇率が大きい一方、下落する時の下落幅も大きい。これとどう付き合うかが重要になります。1999年以降、6カ月間で株価が15%以上も下落した局面は、25回ありました。このうち1年後に株価がプラスになったのは17回で、率にして68%です。さらに3年後には92%、5年後には100%プラスになりました。5年でみると勝率100%になります。
要するに、下落局面は大きな投資のチャンスということ。時間分散や積立が効果的な市場です。
ダイヤモンド・ザイ NISA投信グランプリとは
ダイヤモンド・ザイでは1年に1回、「NISAで買える本当にイイ投資信託」を部門別にランキングし、上位のファンドを表彰している。人気や知名度ではなく、データを最重視した完全実力主義のアワードだ。「1.どれだけ上がったか(上昇率)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの独自基準で評価を行う。また、非常に人気があり多くのお金を集めているにもかかわらず成績が振るわない投資信託も、「もっとがんばりま賞」として発表している。
<ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025> [2025年]受賞投資信託30本一覧
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