「1銘柄の株式」VS「複数銘柄に投資する投資信託」、損益のブレが小さいのはどちらか? 正解者の割合は【回答者の年収も公表】
「1銘柄の株式」VS「複数銘柄に投資する投資信託」、損益のブレが小さいのはどちらか? 正解者の割合は【回答者の年収も公表】
初歩的な金融知識について、多くの人はどのくらい理解しているのか。金融庁が実施した「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査」で問われた質問への回答から読み取ることができる。
9722人調査から分かった金融リテラシーの実態
同調査の回答者(全国18歳以上、9722人)の内訳は以下のとおりだ。
・投資経験者:7000人(72.0%)
・投資未経験・検討者:1504人(15.5%)
・投資未経験・未検討者:1218人(12.5%)
性別では男性60.5%、女性39.5%。年代別では40代が20.6%と最も多く、70代19.1%、50代18.7%、60代18.5%の順で続く。
なお、調査では回答者の年収も聞いている。結果は200万円未満が33.3%と最も多く、次いで200万〜400万円未満が29.0%、400万~600万円が18.5%。ここまでで8割を占め、600万円以上は19.3%となっている。
有効回答数と回答者の基本属性
出所:金融庁「令和6年リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」
●前編「金利が上昇すると債券の価格はどうなるか?」正しく答えられる人の割合は【9722人調査】
分散投資の効果
調査ではいくつかの金融リテラシーに関する質問を行っている。例えば「1つの企業の株式を購入する場合と、複数の企業の株式に投資する投資信託を購入する場合では、一般的に、どちらが損益の振れ幅が小さいと思いますか」という分散投資の効果を理解しているかを問う質問だ。
出所:金融庁「令和6年リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」
選択肢は「複数の企業の株式に投資する投資信託を購入する場合」「1つの企業の株式を購入する場合」「どちらともいえない」「分からない」の4つ。
正解は「複数の企業の株式に投資する投資信託を購入する場合」だが、この問題の正答率は以下のとおりだった。
「分散投資の効果」正答率
・投資経験者:76.3%
・投資未経験・検討者:55.1%
・投資未経験・未検討者:23.9%
投資経験者の4人に3人以上が正解した一方、投資未経験・未検討者では正答率が23.9%にとどまり、中でも「分からない」と回答した人は61.3%に上った。
年代別に見ると、投資経験者では60代の正答率が最も高く79.9%、次いで50代の78.3%だった。最も低かったのは若年層である18~29歳で69.9%となっている。
投資未経験・検討者でも同様に60代の正答率が59.0%と最も高く、反対に最も低かったのは30代で48.9%だった。投資未経験・未検討者の正答率は60代が34.5%と最も高く、18~29歳が14.2%と最も低い。
分散投資の理解に関しては投資未経験・未検討者の正答率が如実に低い点が気になるところだ。将来の資産形成にも影響する懸念がある。今からでも遅くない。少しずつでも金融知識を身に付けるべく行動していくことが望まれる。
分散投資とは? なぜ損益の振れ幅が小さくなるのか
分散投資とは、資金を複数の異なる投資資産や銘柄に分散して投資することで、リスクを抑えることを狙う投資手法だ。
質問のように、1つの企業の株式だけにしか投資していないと、その企業が業績不振に陥って株価(市場からの評価)が下がったり、さらに財務内容の悪化などによって上場廃止に追い込まれたりした場合、投資家は投資資金の多くを失うことにつながる。一方、複数の企業の株式に分散投資すれば、一部の企業が不振でも他の企業が好調であれば損失を相殺できる可能性が高まる。
なお、投資信託は、プロの運用者が多数の対象資産に分散投資する運用商品だ。個人で複数の投資対象資産をあまねく保有するには限界がある。投資信託は、分散投資を検討する上で選択肢となりえる代表的な商品のひとつといえる。
調査回答者の金融リテラシーはどのくらい?
なお同調査では、「金利と債券価格の関係」「金利とインフレ率の関係」「分散投資の効果」の3つを質問しているが、それぞれの正解率を公表している。全問正解者の割合は以下のとおりだった。
全問正解者の割合
・投資経験者:30.1%
・投資未経験・検討者:9.8%
・投資未経験・未検討者:4.1%
これらの結果から、投資経験者でも全問正解は3割程度にとどまることが分かった。特に投資未経験・未検討者では、全問不正解の割合が64.2%と高く、金融経済教育の必要性が浮き彫りとなった。
なお、投資の有無にかかわらず年齢が上がるにつれ全問正解者の割合が高くなっている傾向にある。これは金融知識が経験とともに蓄積されていく可能性を示唆している。
疑問を放置せず、解決する癖をつけていこう
調査結果からは個人の金融リテラシーに改善の余地があることが分かる。特に若年層や投資未経験者において基本的な金融知識の普及が急務だ。金融リテラシーを高めることは、適切な資産形成や老後の資金計画に直結する重要な課題だ。より合理的な投資判断のためには金融知識に磨きをかけることが欠かせない。気になる疑問を放置せず、解決する癖をつけていくこともおすすめだ。
調査概要 調査名:「令和6年リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査」 調査主体:金融庁 調査実施期間:2024年1月~2月 有効回答者数:9722人(全国18歳以上、金融機関従事者除く)
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。