8億円稼いだかぶ1000さんが「一生持ち続ける高配当株8」配当太郎さんも【新NISA応援】

■資産リッチで地味め, ■配当太郎さんの銘柄選び, ■配当金ダルマ育成, ■「配当が育つ」とは?

 35年以上の投資歴で8億円以上の富を築いた「かぶ1000」さんが一生持ち続けたい高配当株8銘柄を公開。【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025夏号」から抜粋しています】

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 かぶ1000さんは現在51歳。5歳のときからコツコツ貯めた40万円を元手に、中学2年生だった1988年に株式投資をはじめた(親権者の同意あり)。

 2025年3月時点の保有資産は日本株4億8445万円、預貯金443万円、金や美術品など約1億円で総額6億円近い。

 これまでの出金額は約3億7381万円とのこと。株式市場での累計利益は「8億円ぐらい」だという。

■資産リッチで地味め, ■配当太郎さんの銘柄選び, ■配当金ダルマ育成, ■「配当が育つ」とは?

 かぶ1000さんは「不動産や、現金化しやすい(正味の)流動資産の含み益たっぷりの銘柄」を好む。「隠れ資産バリュー株」だ。バリュー株とは、企業の本来の価値より株価が安い銘柄のこと。

 配当利回りは「1株当たり配当÷株価×100」で計算されるので、分母の株価が安い銘柄には高配当株が多い。

 株価が安い理由はさまざまだが、優良なのに投資家に注目されず、放置されている銘柄は意外にある。

 この手のバリュー株は全体相場が悪化したり、悪材料が出たりしても株価が乱高下しにくい点も魅力。

 投資ファンドが内容のわりに株価が割安であることに目をつけ、事業価値向上を狙って大量に買うこともある。MBO(経営陣や従業員による買収)や親会社によるTOB(株式公開買い付け)もありうる。

■資産リッチで地味め

 かぶ1000さんが保有する104銘柄の中から「一生持ち続ける予定」の8銘柄を表にまとめた(本記事2ページ目の上参照)。

 ソフトバンクグループや三菱地所など値上がり益重視の株も含まれるが、保有株の多くは「地味め」だ。

 東京の京成線千住大橋駅前に広大な土地を持つ隠れ資産株のニッピ(医薬品原料メーカー)。現在の配当利回りは3.73%(2025年3月19日現在/以下同)だ。

 保有する有価証券の評価額が時価総額以上の岡谷鋼機(名古屋の鉄鋼メーカー)は2.13%、12期連続で減配のない矢作建設工業は5.91%、自動車向けピストンリングが主力のリケンNPRは4.85%、タイヤメーカーのTOYO TIREは4.59%。

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 ニッチな分野で安定収益を稼ぎ、増配も多いのに株価が割安な銘柄たちを早い段階で買っている。

 かぶ1000さんのリケンNPRの平均取得単価は1437円、1株当たり配当は130円(2025年3月期第3四半期決算の期末予想)なので「自分利回り」は9.05%。現在の株価に対する配当利回り4.85%の2倍近い。

 資産リッチにもかかわらず株価が割安な銘柄に厳選投資しているからこそ、高配当株のリスクである減配(配当が減る)や無配転落(配当がゼロになる)に見舞われる可能性が低くなる。

「高配当株を選ぶときは自己資本比率の高さなど、財務内容を厳しく調べます。『減配リスクの低さ』をかなり重要視しますね」

 石橋をたたいて渡るように会社の財務を調べ上げ、資産リッチな地味株を見つける手腕はさすがだ。

■配当太郎さんの銘柄選び

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 2006年に元手100万円で株式投資をスタートした配当太郎さん(30代)は十数銘柄の配当株に絞って厳選投資している。

 半導体シリコンウェハーで世界シェア首位級の信越化学工業、ご存じ世界のトヨタ自動車、三菱商事など、ピッカピカの優良配当株が大好きな配当太郎さん(保有資産の総額は非公開)。

 投資対象は「参入障壁が高い」をキーワードに銀行、商社、通信キャリア、保険の4業種がメイン。

 業界1位か2位、市場シェア3割以上の銘柄を選ぶ。

「この企業がダメになったら日本経済も終わりだな」と思うような、「稼ぐ力・安定感・実績」の三拍子がそろった超優良株。「この企業の株なら一生持ち続けられる」と納得するまで買わない。

 配当太郎さんが保有するNTTやKDDIといった通信株は、顧客が携帯電話の契約を結べば、そこから企業は労せず安定収益を得られる「ストック型ビジネス」がメイン。安心して保有できる。

 まずは年間240万円など「自分がもらえる配当額」の目標額を決めることが大切だという。その達成に向けて、次の3つのエンジンをフル回転させる。

■資産リッチで地味め, ■配当太郎さんの銘柄選び, ■配当金ダルマ育成, ■「配当が育つ」とは?

(1)自己資金による追加投資。身もふたもない話だが入金力は大事。

(2)若いうちは配当をもらっても使わず再投資に回す。

(3)増配期待の高い銘柄を選び、企業にも働かせる(=配当増)。

「少額からはじめてみましょう」と本誌もよく書くが、運用の世界は元本の大きさがモノをいう世界ではある。

 だから(1)の入金力、(2)の再投資が(当たり前だが)重要だ。

 資金が少ないうちは100株(1単元)で買えない銘柄もあるだろうが、主要ネット証券には1株から日本株を買えるサービスがある。

 SBI証券は「S株」、楽天証券は「かぶミニ」、マネックス証券は「ワン株」、三菱UFJ eスマート証券は「プチ株」という名称だ。

 株価1500円の銘柄なら通常は100株単位なので15万円の資金が必要なら、こういった1株投資サービスを使うと1500円から株を買える。

 さて、(3)に関して配当太郎さんが注目するのは、毎年何%ずつ配当が増えているかを示す「増配率」だ。

■配当金ダルマ育成

 入金力と配当の再投資が自助努力による投資だとすると、増配だけは自分の財布からお金を出す必要がない。

 その銘柄を長期保有しているだけで配当が勝手に増えていくわけで、ありがたい話だ。

 増配率が高ければ、あなたの資産増加のスピードは加速する。「年間配当を目標まで引き上げるためのメインエンジン」だという。

 保有する株の増配率が10%を超えれば、自己資金や配当金を再投資に回さなくても、その株を長期保有し続けるだけで勝手に増えることになる。

 増配率が10%なら当初、年間12万円だった配当は16年後に50万円台となり、24年後には100万円を超える。

 振り込まれた配当を再投資に回し、雪ダルマを大きくするように資産を増やすことを配当太郎さんは「配当金ダルマ」と呼ぶ。

 配当金ダルマを大きく育てるという意味で、新NISA(配当も非課税)と高配当株は相性がいい。

「業績や配当は2008年のリーマン・ショック以降の推移を見ることにしています」

 配当太郎さんは新NISAでも三菱UFJフィナンシャル・グループや三菱商事、KDDIなどを買い増している。

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 ところで、「1株当たり配当÷株価×100」で計算する配当利回りは、何%以上なら「高い」といえるのだろうか。

 米国トランプ大統領の「関税ショック」で一時急落したこともあり、日経平均株価225銘柄の平均予想配当利回りは2.49%。東証プライム上場の1634銘柄では2.96%になっている(利回りは2025年4月9日現在、プライム上場銘柄数は3月31日現在)。

 ちなみに「予想配当利回り」とは現在進行中の決算期の期末に企業が支払う予定(まだ払われていない)の配当が現状の株価に対して何%になるかを示したもの。

 配当利回りには、すでに終了した決算期、つまり過去の配当が株価の何%だったかを示す「実績配当利回り」もある。

 投資家にとって大切なのは過去ではなく「将来、どれだけの配当をもらえるか」。そのため、高配当株に投資する際は予想配当利回りに注目しよう。

■「配当が育つ」とは?

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「日経平均株価や東証プライム全体の平均予想配当利回りが2%台であることを考えると、現状は予想配当利回りが3%を超えれば高配当株と呼んでいいのではないでしょうか」(楽天証券国内株式事業部部長/伊藤愛さん)

「ただし、配当利回りが3%以下でも『ダメ』とは限りません。

たとえば毎年のように増配している銘柄なら、自分の買値に対する利回りは上がっていきます。

業績が拡大し、増配を続ける企業は『配当も育つ』効果に期待できるわけです。

利益が増えて増配を繰り返す企業なら、株価も上昇基調を維持する可能性が高いです」

「株価とともに配当が育つ」具体例を上の表に示した。

 買ったときの株価が1000円で1株当たりの配当が20円だと配当利回りは2%。100株購入すると年間2000円の配当がもらえる。

 この銘柄が毎年業績が伸びて増配を繰り返し、5年後に株価1500円、配当30円になったとする。

 株価1500円・配当30円なら配当利回りは2%のままだが、当初の買値1000円に対する配当利回りは3%に上がる。

 100株を保有したままなら、5万円の値上がり益(含み益)に加え、当初より1000円多い3000円の年間配当が受け取れる。これが長期保有を続けて「株価も配当も育つ」効果だ。

■資産リッチで地味め, ■配当太郎さんの銘柄選び, ■配当金ダルマ育成, ■「配当が育つ」とは?

「配当に着目した投資では、投資したあとに株価も値上がりし、増配によって『自分利回り』も向上するのが理想的です。

そのためには、業種的に配当が高めの銘柄から、配当利回り3%以上など利回りの『発射台』が高い銘柄から選ぶのも一つの方法です。

業績がこれまで伸び続けてきたかもチェックします。過去にも増配を繰り返している銘柄だと、自分利回りの向上にも期待が持てます」

 現状の配当利回りだけにこだわらず、その企業が「配当を増やしてくれそうか」も、高配当株投資の重要ポイントになるわけだ。

取材・文/中島晶子(AERA編集部)、安住拓哉

伊藤 愛(いとう・あい)楽天証券 国内株式事業部 部長。個人投資家の資産運用をサポートする施策を講じる。新NISA成長投資枠に適したポートフォリオを日々研究

編集/綾小路麗香、伊藤忍

『AERA Money 2025夏号』から抜粋