ChatGPTに相談しないほうがいいこと6つと、その理由(悩み、金融、法律…)
ChatGPTは、どんな質問にも答えを持っているように見え、あらゆる問題解決の頼れる相棒となりつつあります。
しかし、その洗練された能力にもかかわらず、まだ限界があるのも事実。特に使うべきではない重要な領域がいくつか存在するのです。
1. コーディング:「書ける」けど「信じるな」

ChatGPTをコーディングに活用する。これはもはや、突飛なアイデアではありません。
AIチャットボットの黎明期から、多くの人々がプログラミングに利用してきましたし、サイバー犯罪者が悪意のあるコードを書かせるために使った例も報告されています。
最近では「vibe coding(雰囲気コーディング)」という言葉も生まれ、経験豊富な開発者を雇う代わりにAIで済ませてしまう動きもあるほどです。
念のために言っておくと、ChatGPTはコードを書けます。その能力は年々向上しており、ウェブやスマホアプリから直接Pythonを実行することさえ可能。
標準的なスニペットや、簡単なカウンタープログラム(たとえば、ウェブサイトでボタンが押された回数を数えるような単純なプログラム)のような基本的なものであれば、非常に便利な選択肢となるでしょう。経験豊富な開発者にとっても、簡単なコードの生成や、見慣れたコードのレビューには役立ちます。
しかし、もしプログラミングの経験が浅いなら、話は別。細心の注意を払う必要があります。
ChatGPTは、エラーが原因で実行不能だったり、不正確に動作するプログラムを書くことで知られています。もしコーディングに使うつもりなら、信頼できるコードチェッカーを準備しておくか、コードが長すぎなければ自分で徹底的にレビューすることが不可欠です。

ちなみに、OpenAIが2025年5月にリリースしたエンジニアリングエージェント「Codex」は、ChatGPTをより信頼性の高いコーディングツールに変えるかもしれません。
これはChatGPTの有料プランに追加された機能で、コードが読めない人でも使えるように設計された、クラウドベースの多機能コーディングツールです。
もし利用してみようと思うのであれば、まだ初期段階のソフトウェアなので、Codexが生成したコードも別のツールでレビューすることを忘れないでください。
無料版のChatGPTではこのツールは利用できないため、やはりほかの選択肢を検討すべきです。
また、一度エラーを犯したChatGPTに、そのコードをレビューさせるのは禁物。一度見逃したエラーは、レビューでも再び見逃す可能性が高いからです。ChatGPTでリスクを冒すくらいなら、世の中にはもっと優れたAIコーディングツールがたくさんあります。
2. 心理セラピー:感情の複雑さは理解できない

感情や心の機微に関わる領域で、AIチャットボットが人間の代わりになることはありません。
ChatGPTに悩みを打ち明けると、うつ病や孤独などについてアドバイスをくれることがありますが、そもそも複雑な感情の対話に対処できるようには設計されていないのです。
話せる相手がいないとき、手軽なChatGPTに心の悩みを相談したくなる気持ちは分かります。何しろ、人間との対話を模倣するよう訓練され、膨大なデータを持つ大規模言語モデル(LLM)なのですから。
しかし、それでもなお、ChatGPTは人間とその感情理解能力を代替するようにはつくられていません。
もちろん、先延ばし癖のような、よりライトな悩みに関するヒントを得るのには役立つでしょう。日々のちょっとした課題に、素早くヒントをくれるツールとしては優秀です。
しかし、もし対話によるセラピーを求めているのであれば、かならず生身の人間、それもプロの専門家に相談すべきです。
3. 医療アドバイス:診察にはなり得ない

「頭痛でググったら、余命1カ月と宣告された」という古いジョークがありますが、これはChatGPTのようなAIプログラムにも当てはまります。
ChatGPTは、医療専門家の代わりになれるレベルには到底達していません。本物の医師と同じ訓練を受けていないというだけでなく、身体的な症状を一切診察できないからです。
病院に行くのは気が進まないものですし、好きな人はほとんどいないでしょう。しかし、健康に不安があるのなら、診断やアドバイスをChatGPTに頼らないでください。
ChatGPTは「診断はできません」とか「専門家に相談してください」と断りつつも、何らかの提案を続けてしまうことがあります。
忘れてはならないのは、こうしたプログラムは既存のインターネット上の情報を利用しているだけで、あなたの健康状態について独自に医学的に正しい見解を形成することはできない、という事実です。
4. 法律アドバイス:付け焼き刃の知識は危険

法制度や訴訟手続きは、非常に複雑で主観的な判断を伴うものです。そのため、AIチャットボットを情報源やヒントとして使うことは、メリットよりも害をもたらす可能性があります。
基本的な情報を探しているだけならまだしも、それ以上のことを求めるなら、弁護士や法律の専門家、法学者に相談することを検討すべきです。
幸い、ChatGPTの開発者もこの点は認識しており、法律に関する質問をすると、免責事項が表示されることがよくあります。もし基本的な法律情報をChatGPTで調べる場合は、不正確な情報を提供していないか、かならずほかの情報源でダブルチェックしてください。
5. 詳細なリサーチ:検証は必須

「リサーチ」という言葉は、数回のGoogle検索から、数カ月にわたる綿密な調査まで、幅広い意味を持ちます。
ChatGPTが役立つのはその一端だけであり、ほかの目的で使うべきではありません。簡単な質問の答えを探すことと、レポートや論文を執筆するために使うことには、天と地ほどの差があるのです。
引用が不要な軽いリサーチであれば、ChatGPTを使ってもいいでしょう。しかし、その場合でも、提供された情報は必ずほかの情報源で裏付けを取るのが賢明です。ChatGPTが不正確な情報を提供したり、回答に「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」を混ぜたりすることは珍しくありません。
より高い精度を求めるなら、2025年2月に登場したChatGPTの「Deep Research」ツールを試す手もあります。これは、より長く、より詳細なリサーチ業務のために設計された機能。研究論文や学術誌などから有益な抜粋を見つけ、リソースを収集するのに非常に役立ちます。
OpenAIによれば、Deep Researchは「リサーチアナリストのレベルで報告できる」とのこと。
しかし、たとえDeep Researchを使ったとしても、ChatGPTが提示する情報源、引用、統計データはすべてダブルチェックすることが重要です。
AIチャットボットは依然としてエラーを起こす可能性があり、生成された内容をすべて信じるリスクを冒すべきではありません。どんなリサーチであれ、データを使う前には必ずほかの場所で検証しましょう。
6. 金融市場の予測:伝言ゲームになりがち

来年の金利、ある株の将来の価格、あるいは暗号資産の暴落など、金融に関する予測にChatGPTを使うべきではありません。
個人投資の人気が高まるにつれ、金融予測は経済界で大きな注目を集めるトピックとなりました。ネット上には、金融専門家から趣味のブロガーまで、無数の金融予測が溢れています。
では、無限の知識を持つように見えるChatGPTなら、たしかな金融予測ができるのでしょうか? 答えは「ノー」です。
ChatGPTに株価の未来を予測させても、それは現在のデータを使ってAI自身が熟考した予測ではありません。単にウェブページから情報を探し出し、見つけたことを伝えているだけ。これでは、エコノミストの予測記事を自分で読むのと本質的な違いはないのです。
さらに、ChatGPTは間違いを犯し、無自覚に不正確な情報を提供する可能性があります。金融予測はそもそも推測に基づいていますが、その情報を得るためにチャットボットを介在させることは、トラブルの元になりかねません。
たとえば、ChatGPTが信頼性の低いウェブページからデータを引用した場合、何の裏付けもない金融予測を信じてしまうかもしれません。そして、その根拠のない情報に基づいて金融取引を行い、大きな損失を被る可能性があるのです。
ChatGPTは世界中で何億人ものユーザーを抱える、最高のAIチャットボットの1つです。基本的なリサーチには役立ちますが、もしその回答を基に投資のような重要な判断を下すなら、内容は徹底的に精査すべきです。
ChatGPTには欠点や限界がある一方で、多くの点で非常に有用であることも証明されています。
簡単な調査、素早い計算、アイデア出し、計画立案など、このツールを有効活用する方法はたくさんあります。
ただ、忘れてはならないのは、このツールはまだ完璧ではなく、あらゆる問題に対する万能の解決策となるほど進化はしていない、ということです。
Source: OpenAI