外債とエヌビディア投資で最高益、次は国債に照準-いよぎんHD

(ブルームバーグ): 外国債券運用や米半導体メーカーエヌビディア株への投資が奏功し、3期連続で過去最高益を更新したいよぎんホールディングス(HD)が、運用資金を日本国債にシフトしようとしている。

  いよぎんHDは長期にわたる超低金利の環境下で日本国債への投資を抑えてきた。三好賢治社長は愛媛県松山市の本社でブルームバーグのインタビューに応じ、長期国債の利回り(金利)動向などを見極めながら、投資の再開に踏み切る用意があると述べた。同社は伊予銀行の持ち株会社。

Iyogin Holdings

  日本銀行が金融引き締めの一環として国債購入の縮小に動いたことなどから長期国債を中心に金利が急上昇し、海外で高利回りを追求してきた国内金融機関は国債市場への回帰を模索している。こうした中、難しい市場環境でも着実に収益を上げてきたいよぎんHDの有価証券運用に地方銀行業界などからの関心が集まる。

  三好氏は日銀のターミナルレート(政策金利の最終到達点)を1.5%と想定し、10年国債金利は2%程度が上限とみている。購入については「1.7%か1.8%くらいから買い下がっていくイメージ」と述べ、足元で1.4%台の金利が上昇するのを待って徐々に再開したい考えを示した。貸出金や預金、他の有価証券構成も見ながら、ポートフォリオの半分程度を占める可能性もあるとした。

  三好氏は「今の局面ではまったく買っていない」と言うが、国債本格投資の準備は整っていると明かした。その一つが電子取引システムの統一化だ。従来の株式や外国債券などに加え、国債も同じシステムで取引できるようにした。より機動的な売買が可能になるという。

  3月末の有価証券ポートフォリオ残高(時価)は約1兆8000億円で、国債残高はその1割以下の約1700億円。そのうち770億円は物価連動国債となっている。

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地銀再編あれば主導

  三好氏は他の地銀との統合や再編について、そのような計画や考えは現時点ではまったくないとしながらも、将来的な可能性までは否定しない考えを示した。一般論として人口減少を踏まえると、100ほどある国内地銀は「オーバーバンキング」だとして、「尻に火がつくという動きが加速するのではないか」と予想している。

  仮に中国・四国地方で再編の動きがあった場合は、「中核になっていきたい」と主導的な立場で加わる姿勢だ。「そのためには経営体力をつけておく必要がある」として、時価総額をさらに高める努力が必要であるとも指摘した。

ヘッジなし外債が奏功

  同社の前期(2025年3月期)の有価証券関係損益は利益が前の期から倍増した。多くの金融機関が米国債運用で苦戦する中、円安局面を捉え、為替ヘッジなしの外債売却で多額の利益を上げた。 

  エヌビディア株投資も貢献した。いよぎんHDの担当者によると、20年に1ドル=105円近辺で投資を始め、為替差益も含めた保有株の価値は10倍程度になっているという。前期中に同社株の一部売却益を計上した。いよぎんHDは政策保有株の売却を進める一方、日米の個別株への純投資を始めている。

  米国債やエヌビディア株の売却益は、トランプ米政権発足後の市場混乱に備えてポートフォリオを縮小する中で発生した。三好氏は「ポジションを落としたら益がでてしまうという状況になった」と振り返る。分散投資の効果であり、市場部門で大きな利益を狙っている訳ではないと強調する。

いよぎんHDの有価証券パフォーマンス推移

  ヘッジなし外債について三好氏は「相当なリスクを取っていると思われるかもしれないが、そうではない。株などと逆相関でうまくバランスを取っている」と説明。仮に円高に振れても、その際は米金利が低下している可能性が高く、為替でのマイナスを保有債券の値上がりで相殺できるとみている。

  いよぎんHDは米国債を中心に3月末で約3000億円(時価)のヘッジなし外債を保有。ヘッジ付き外債も約5000億円の残高がある。ヘッジなしは流動性を重視し、主に米国債に投資。ヘッジ付きにはジニーメイ(連邦政府抵当金庫)債なども含まれるという。

  同社は市場部門で外部からの採用実績はないものの、三好氏は来る者拒まずの姿勢だ。多様な視点を持つ人材を取り入れることにより「もっとリスクに敏感になるのでは」と述べた。

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(外債に関する情報などを追加し更新します)

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