投資家が重視する「企業の実力を測る」4つの武器

個別銘柄を見抜くミクロ視点の極意, PERは「稼ぐ力」から見る割安度 , PBRは「持ってる資産」から見る割安度, 高配当投資では「配当利回りの推移」に注目すべき理由, 理論株価とは? 株の「適正価格」を見抜く考え方

高配当株を選ぶには、“企業の実力”を測る目が必要です(写真:hqrloveq/PIXTA)

「配当が多い=お得」と思っていませんか? でも、そこには意外なリスクも。長く安心して持てる高配当株を選ぶには、“企業の実力”を測る目が必要です。
本記事は『驚異のバク益高配当株 サラリーマンが月10万円の不労所得でお金の不安から解放される「黄金ポートフォリオ」 のつくり方』より一部抜粋・再編集。
投資家バク氏が、高配当株の投資判断に役立つ4つの視点を解説します。

個別銘柄を見抜くミクロ視点の極意

この記事では、ミクロ視点での相場分析について説明します。ここでの「ミクロ視点」とは、投資対象として気になる個別企業の株価が割高なのか、割安なのかを見極めることです。

【画像で見る】三菱商事のPER推移を見ていくと、割安な時期がはっきりとわかる

たとえば、相場全体が割安に見えると「今が買い時」と感じるかもしれませんが、注意が必要です。相場全体の動きと、個別銘柄の動きが常に連動しているとは限らないからです。日経平均株価はあくまで“平均値”にすぎません。たとえ日経平均が下落していても、個別株ではほとんど値下がりしていない、あるいは上昇している銘柄もあります。逆に、相場全体が割安とされていても、個別銘柄を見ればまだまだ割高なケースも少なくありません。

特に高配当株投資では、個別銘柄の状況を見極めることが重要です。利回りだけで判断せず、その株が“本当に割安か”を見極めてから買うことで、リターンを最大化できます。その分析に役立つのがファンダメンタルズ分析です。これは、企業の業績や財務状況をもとに株価を評価する方法で、長期投資との相性が良く、高配当戦略にも不可欠です。

具体的には、PERやPBR、営業利益、自己資本比率などの指標を使って、企業の本質的な価値を把握し、将来的に株価がどのように動くかを考察します。私が重視しているのは、以下の4つの指標です。

PER(株価収益率)
PBR(株価純資産倍率)
配当利回り
理論株価

これらを通じて、株価の割高・割安を多角的に判断し、納得して買える銘柄を見極めていきましょう。次章から、それぞれの指標について詳しく解説します。

PERは「稼ぐ力」から見る割安度 

株価が割安なのか割高なのかを判断するための指標として、PERとPBRがあります。PERとは「株価収益率」のことで、英語の「Price Earnings Ratio」を略したものです。株価が1株あたりの純利益(EPS)の何倍なのかを示す指標で、一般的に15倍が目安とされています。15倍よりも高くなるほど割高、15倍よりも低くなるほど割安と考えられています。ただし、15倍はあくまでも目安です。計算式は、株価÷1株あたりの純利益(EPS)です。

私はPERを使って、現在の数値だけで判断するのではなく、過去からの推移や競合他社と比較して割安か割高かを分析しています。例えば、以下の画像は三菱商事の過去3年のPERの推移です。 

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(『驚異のバク益高配当株 サラリーマンが月10万円の不労所得でお金の不安から解放される「黄金ポートフォリオ」 のつくり方』より)

下限が5.0倍、上限が15.0倍の間で動いています。下限の5.0倍に近づくほど、割安になっていると考えられます。一方で、2024年からは10.0倍まで下落すると反発しており、2025年2月1日現在のPERは10.30倍くらいなので、過去1年で考えると現在は割安になっていると判断できます。

PBRは「持ってる資産」から見る割安度

日経平均PBRでも解説しましたが、「PBR」は株価純資産倍率で、株価が1株あたりの純資産に対して何倍なのかを示す指標です。計算式は、株価÷1株あたりの純資産(BPS)で、1倍を目安に、1倍よりも低くなるほど割安、1倍よりも高くなるほど割高と判断します。

私はPBRもPERと同じように、単体で判断するのではなく、過去からの推移や競合他社と比較して判断しています。以下の画像は三菱商事の過去3年のPBRの推移です。下限が約0.8倍、上限が約1.7倍の間で推移しています。単純に考えると、下限の約0.8倍に近づくほど割安です。

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(『驚異のバク益高配当株 サラリーマンが月10万円の不労所得でお金の不安から解放される「黄金ポートフォリオ」 のつくり方』より)

2024年からは1.0倍〜1.1倍付近まで下落した後反発しています。2025年2月1日現在のPBRは1.07倍なので、過去1年で考えると現在は割安水準になっていると考えられます。ただ、2024年以前と比較すると、さらに下落する可能性もあるため、少しだけ買っておく戦略も考えられます。

PBRも絶対的な指標ではないため、過去の水準と比較することが大切です。必ずしもPBRが1倍よりも高いから割高、1倍よりも低いから割安ではありません。

高配当投資では「配当利回りの推移」に注目すべき理由

高配当株に投資するうえで重要なポイントの一つが、配当利回りの推移を確認することです。

配当利回りとは、株を買った金額に対して、どれだけ配当金を受け取れるかを示す割合です。計算式は以下の通りです。

配当利回り =(1株あたりの配当金 ÷ 株価)× 100

たとえば、株価が500円で、1株あたりの配当金が20円であれば、

20 ÷ 500 × 100 = 4%となり、配当利回りは4%です。

この数値が高ければ高いほど、投資金額に対する配当リターンが大きく、低ければリターンも小さくなります。ただし、配当利回りは株価や配当金の変動によって変わる点に注意が必要です。

株価が上昇したり、配当金が減配された場合は配当利回りは下がり、逆に株価が下がったり配当金が増配されれば配当利回りは上昇します。

ここで気をつけたいのは、「配当利回りが高いからといって良い銘柄とは限らない」という点です。例えば、以下の2社を比べてみましょう。

A社:業界トップで業績好調、将来性のある業種で財務も堅調。1株配当50円、株価4000円 → 配当利回り1.25%

B社:業界4番手で業績悪化傾向、将来性に不安があり財務も悪化気味。1株配当50円、株価800円 → 配当利回り6.25%

一見するとB社のほうが配当利回りが高く、お得に見えるかもしれません。ですが、B社は今後減配や無配に転じるリスクも高く、安定的なリターンは期待しづらい状況です。一方でA社は配当利回りこそ低いものの、安定した業績と堅実な財務体質により、将来的に増配の可能性すらあります。

このように、配当利回りが高い=お得という単純な判断は危険です。特に配当利回りには企業の業績や財務内容、成長性などが含まれていないため、それだけを見て投資判断を下すのは避けましょう。

私自身は、PERやPBRと同様に、過去から現在にかけて配当利回りがどのように推移してきたかを見るようにしています。安定的に高い水準を保っている企業なのか、一時的に上がっているだけなのかを見ることで、より的確な投資判断ができるからです。

理論株価とは? 株の「適正価格」を見抜く考え方

理論株価とは、企業の業績や財務状況、EPSやPERなどの指標をもとに算出される「理論的に適正な株価」のことです。聞き慣れないと難しく感じるかもしれませんが、私たちは日常的にも似たような判断をしています。

たとえば、水道水が入ったペットボトルが200円で売られていたら、「高すぎる」と感じて買わないでしょう。それは、水道水は安く手に入るものであり、それに200円を払う価値がないと判断するからです。一方、大谷翔平選手のグローブなら、数百万円でも買う人がいるのは、その希少性や将来の価値を見込んで「適正」と判断されるためです。

株価も同じです。企業の実力(=価値)に対して株価が割高なこともあれば、逆に人気がないだけで割安なこともあります。そこで役立つのが「理論株価」です。これは、市場の人気や感情に左右されがちな実際の株価に対し、客観的に「妥当な水準」を測るための指標になります。簡易的な理論株価は以下の式で求められます。

理論株価 = X年後のEPS ×(1 + EPS成長率)^X × 平均PER

たとえばKDDIの場合、予想EPSが342.3円、5年の成長率が4.43%、PERが13倍であれば、

342.3 × (1+0.0443)^5 × 13 ≒ 5,527円。これが5年後の理論株価となります。もし現在の株価がこれより低ければ「割安」と判断できます。

ただし、理論株価はあくまで過去の実績や仮定に基づく一つの目安に過ぎません。将来の業績や市場環境によって実際の株価は上下するため、過信は禁物です。平均PERだけでなく、過去の最大PER・最小PERなども参考にして、楽観・悲観の幅を持たせた理論株価を出すことで、より現実的な判断ができるようになります。

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