ウォーレン・バフェットは今年、大成功を収めている

ウォーレン・バフェット

  • 2025年に入ってから、S&P500は2%下落している一方で、バークシャー・ハサウェイの株は16%上昇している。
  • バークシャーは膨大なキャッシュを保有し、評判も高いことから、資金の逃避先として投資家から支持されている。
  • バフェットは、市場の混乱をうまく利用することで知られている。後継者問題についても巧みに準備を進め、投資家に安心感を与えている。

ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)率いるバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)は2025年に好調なスタートを切った。株価は年初来16%上昇し、2%下落したS&P500を圧倒している。

株価の急騰により、バフェットの純資産は230億ドル(約3兆4500億円)増えて1650億ドル(約24兆7800億円)に達し、ブルームバーグ・ビリオネア指数でビル・ゲイツ(Bill Gates)を抜いて6位にランクインした。

94歳のビジネスアイコンであるバフェットと彼の会社は、混乱した市場から資金の避難先を求める投資家に支持され絶好調だ。資産価格が暴落し、経済が悪化すれば、彼は伝説的なバーゲンハンターとして再びチャンスをつかむと見込まれている。

また、バークシャー傘下の自動車保険会社ガイコ(Geico)の業績回復も歓迎されているほか、時が来ればバフェットの後継者が能力を発揮することも期待されている。

「頑丈で安定した船のような存在」

Lountzis Asset Managementの創設者兼社長で、長年にわたるバークシャー株主であるポール・ルンジス(Paul Lountzis)は、「バークシャーは今、不確実性の海に浮かぶ頑丈で安定した船のような存在だ」とBusiness Insiderに語っている。

バークシャーは2024年12月末時点で3200億ドル(約48兆円)以上の現金、米国債、その他の流動資産を保有し、株式の評価額は2700億ドル(約41兆円)を超えている。ルンジスはこのバランスシートを「ジブラルタルの岩(揺るぎない安定した存在)」のようだと評価した。

バフェットは、衰退する繊維工場だったバークシャーの経営を引き継ぎ、60年間で時価総額1兆ドルの巨大企業へと変貌させた。シーズ・キャンディー(See’s Candies)、プレシジョン・キャストパーツ(Precision Castparts)、BNSF鉄道(BNSF Railway)など、多様な業界の企業を次々と買収したほか、アップル(Apple)、コカ・コーラ(Coca-Cola)、アメリカン・エキスプレス(American Express)といった優良株に数十億ドル規模の投資を行ってきた。

バフェットが会社を率いるようになってから、バークシャー株の価値は500万%以上も急騰した。同期間のS&P500の上昇率約3万9000%を大きく上回っている。バークシャー株は60年間にわたり、年間約20%の複利で成長しており、これはS&P500の成長速度のほぼ2倍に相当する。

1980年3月31日以降の累積変化率。

億万長者の慈善家となったバフェットは、バークシャーを慎重に経営することで知られており、短期的な利益よりも長期的な成功を重視している。

投資運用会社Cheviot Value Managementのポートフォリオ・マネージャーで、長年バークシャー株を保有してきた投資家でもあるダレン・ポロック(Darren Pollock)は、「不確実な世界において、投資家はバークシャーが提供する確実性に高い価値を見出している」とBusiness Insiderに語っている。

「金融市場の過熱感が冷めると、安定性と信頼性を備えた企業に資金が流入しやすい」

また、調査会社CFRA Researchのシニア・バイス・プレジデントであり、長年バークシャーを分析してきたキャシー・サイファート(Cathy Seifert)は、「市場の変動や地政学的リスクが高まる中、安全性の高い資産への逃避が起きている」と指摘し、バフェットが築いた「広大な帝国」が投資家にとって安全な避難先と見なされていると分析した。

厳しい市場から利益を生み出す

バフェットはバリュー投資家であり、本来の価値よりも割安になっている企業や株式を見出し、買い集めることを得意としている。この手法が最も効果を発揮するのは、市場価格が急落し、買い手が少なくなったときだ。

投資会社Gabelli Fundsのポートフォリオ・マネージャーであるマクレー・サイクス(Macrae Sykes)はバフェットについてこう語っている。

「厳しい市場環境においてこそ、資本配分の腕前を最大限に発揮することを何度も証明してきた。雑音に惑わされず、本当の価値を見極める卓越した能力を持っている」

例えば、金融危機の際に、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、ゼネラル・エレクトリック(General Electric)、マース(Mars)、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)、スイス・リー(Swiss Re)といった企業との間で、極めて有利な取引を成立させている。

バフェットは、2008年から2009年にかけて、これら5社との取引に合計210億ドル以上を投じ、総額260億ドル相当のポジションを確保した。その結果、2009年末までに年間21億ドルの利息と配当を生み出すこととなった。

そして現在、バークシャーが保有する巨額の「現金クッション」は、「割安な投資機会が訪れた際に、圧倒的な資金力を発揮する」とポロックは述べている。

バークシャーが保有する流動資産額の推移。

バフェットの忍耐力、鍛錬、そしてバブルや流行の株に飛びつかない姿勢は、これまでの実績にもつながっている。ドットコムバブルが崩壊し、2000年から2002年の間にS&P500が年間平均14%の下落を記録した時、バフェットは高価なテクノロジー株を売却し、実績のある企業の株に再び投資するようになった。それにより同時期のバークシャー株は平均10%の成長を遂げた。

バフェットを40年間にわたって追い続けてきたメリーランド大学のファイナンス教授、デイヴィッド・カス(David Kass)によると、バフェットが経営を引き継いでからのバークシャー株は、S&P500が下落した12年間のうち10年間で「市場を大きくアウトパフォーム」したという。