「半導体株は割安」と断言! 15年で20倍に爆騰した投資信託のマネージャーが「強者への集中投資」こそ正解と語るワケ

ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025の「世界株部門(テーマ型)」で最優秀賞を受賞した投資信託が「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」(野村アセットマネジメント)だ。半導体関連株に特化した運用で、2019年~2024年までに基準価額を5倍以上に伸ばしており、上昇率は今回の「投信グランプリ」で評価対象となった投信の中で断然トップ。圧倒的な成績の秘訣を、運用担当者の加藤明さんに聞いた。(ダイヤモンド・ザイ編集部)
15年で20倍以上も基準価額が上昇!
なぜ半導体株はこんなにも伸びるのか?
――半導体株に着目した投信はほかにもあるなかで、抜きん出た成績を記録してきた理由は何でしょうか。

加藤明(かとう・あきら)さん ●野村アセットマネジメント シニア・ポートフォリオマネージャー。日系運用会社を経て、2021年に野村アセットマネジメント入社。グローバル株式のポートフォリオマネージャーとして米国の成長株を中心に10年以上の運用経験を有する。「野村グローバルAI関連株式ファンド」の運用も担当。
加藤 一般的なテーマ型投信では、半導体関連のソフトウェア株なども投資対象に含まれることが多いのですが、この投信は半導体メーカーや半導体製造装置メーカーといった、より狭義の半導体株に特化しています。
これは、半導体市場の特性を踏まえた戦略です。半導体は技術革新のペースが速く、常に高い成長が期待できる分野です。あらゆる分野でデジタル化や電動化が進展し、その需要はますます拡大しています。一方で、参入障壁が高いという特徴もあります。多額の設備投資や特許の問題などから新規参入が難しく、市場は寡占化が進みやすい傾向にあります。
そのため、この投信では、成長著しい半導体市場において、高い競争力を持つ大手の企業に厳選して投資を行うことで、効率的なリターンを目指しています。
――長年にわたって高いパフォーマンスを維持している点がすごいですね。
加藤 設定されたのは2009年8月で、すでに15年以上の運用実績があります。基準価額は、分配金再投資後で設定時の20倍以上に成長しています。もし、設定来から毎月10万円ずつ積立を続けていれば、合計の積立額1880万円に対し、評価額は1億7000万円になっている計算です(2025年3月末時点)。長期にわたって半導体株に特化して運用されているファンドは珍しく、その点も当ファンドの強みと言えるでしょう。
高成績の最大の要因は、半導体市場そのものの成長力です。過去50年以上にわたり、半導体市場は世界のGDP成長率の2~3倍という高い成長率を維持してきました。スマートフォン、クラウド、電気自動車、5G、そして現在のAIブームなど、ありとあらゆる技術革新に半導体が必要とされ、需要が拡大してきたといえます。各時代の成長テーマにおいて高い競争力を持つ大手企業に厳選して投資することで、市場の成長と寡占化の恩恵を享受してきました。
――具体的にはどんな半導体株に投資しているのでしょうか。
加藤 基本的な考え方として、その時々の成長テーマの中で、高い競争力を持つ大手の企業に集中投資しています。現在の大きなテーマは、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)です。
具体的には、AI関連では、高性能なGPU(画像処理半導体)で圧倒的なシェアを誇るエヌビディア 、AIサーバーをつなぐ通信機器向け半導体に強いブロードコム 、最先端半導体の製造をほぼ独占しているTSMCなどが挙げられます。
IoT関連では、スマートフォンや自動車などに搭載される半導体の高性能化に貢献するクアルコムや、そうしたデバイスにメモリを供給するマイクロンなどに注目しています。
高シェア企業への集中投資こそが
半導体株投資の正解となる理由は?
――組入銘柄数は2025年3月末時点で24銘柄と、あまり多くないですね。組入比率1位のエヌビディアが29%を占めています。

加藤 半導体市場は製品のコピーが難しく、参入障壁が高いという特徴を持っています。そのため、市場の寡占化が進みやすく、資金力と技術力がある強い企業がさらにシェアを拡大していく傾向にあります。そのため、高成長な市場でありながら、競争環境悪化のリスクが低い特殊な市場構造です。
過去15年を見ても、指数の構成上位銘柄はほとんど変わっていません。このような市場の特徴から、当ファンドでは、成長テーマの中で高い競争力を持つ大手の企業に集中投資する戦略をとっており、結果として組入れ銘柄数が多くないということになります。
――この1年あまり、半導体株は生成AIのブームで急上昇した印象もあります。バブルではないのでしょうか?
加藤 たしかに、短期的な過熱感が見られる銘柄も一部にあることは否定できませんが、市場全体としてバブルであるとは考えていません。PERなどの指標で見ても、半導体株は市場全体と比較して割高な水準にはなく、むしろ成長性が過小評価されており、割安とさえ言えます。半導体関連株の上昇は、市場の構造的な成長と企業の収益力に裏付けられたものであり、バブルとは性質が異なると考えています。
もちろん、半導体市場にも景気変動や在庫調整といったリスクは存在します。トランプ関税が半導体市況に与える短期的な影響についても精査が必要です。それでも、長期的な成長トレンドを大きく変えるものではないと考えます。
――中国発の生成AIであるDeepSeekの登場は米国の半導体株にマイナスとならないのでしょうか?
加藤 DeepSeekは、大規模言語モデルを小型化して使いやすくする技術という面では、非常に良い技術革新であると考えています。既存の大規模言語モデルは、正確な診断はできるものの、時間がかかりすぎたりコストがかかりすぎたりという課題がありました。DeepSeekは、例えるならフルスペックの「大学病院」に行く前の「かかりつけ医」のような役割です。
DeepSeekの登場は、AIの利用者を増やす可能性があります。結果として、より高性能な半導体の需要を拡大する方向に働くと思われます。実際に、半導体メーカーの担当者に話を聞いても、DeepSeekが業界にとってネガティブとの意見は出ておらず、むしろ歓迎する声が多い状況です。
したがって、DeepSeekは米国の半導体株にとって、必ずしもマイナス要因ではなく、むしろプラス要因となる可能性もあると考えています。
――長年にわたって高成長を続けてきた半導体市場ですが、今後も成長は続くのでしょうか?
加藤 長期的な視点で見れば、半導体市場にはまだまだ大きな成長の可能性があると考えています。半導体市場は、2025年から2030年にかけて50%強、拡大すると見込まれています。やはり大きな魅力は、どんな成長テーマにも半導体は必須であるということです。AI、IoT、自動運転、クラウドも宇宙開発も、あらゆる分野に半導体は不可欠であり、より高性能な半導体が求められるトレンドは変わらないでしょう。
様々な製品の付加価値を決めるものとして、半導体がより重視される傾向は続いていくはずです。そういった意味で、中長期での成長は大いに期待できると思います。半導体市場が過去50年以上にわたって高成長を続けてきたといっても、半導体株が世界の時価総額に占める割合は依然として小さく、まだ成長する余地は十分に残されているといえるでしょう。この投信も、高成長が続く半導体市場からの恩恵を最大限反映できるよう運用を続けていきます。
◆世界株部門(テーマ型) 最優秀賞 「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」とは 半導体や半導体部品、半導体製造装置の製造・販売を行う企業のみに特化して投資。設定は2009年8月で、15年以上の運用実績がある。米国だけでなく、台湾やオランダ、韓国などの企業も投資対象だ。上昇率は、今回対象となったすべての投資信託の中で断然トップ。半導体市場の成長が投資信託の成長に直結し、高い成績を記録し続けてきた。
ダイヤモンド・ザイ NISA投信グランプリとは
ダイヤモンド・ザイでは1年に1回、「NISAで買える本当にイイ投資信託」を部門別にランキングし、上位のファンドを表彰している。人気や知名度ではなく、データを最重視した完全実力主義のアワードだ。「1.どれだけ上がったか(上昇率)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの独自基準で評価を行う。また、非常に人気があり多くのお金を集めているにもかかわらず成績が振るわない投資信託も、「もっとがんばりま賞」として発表している。
<ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025> [2025年]受賞投資信託30本一覧
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