世界のバフェット崇拝者、「資本家のウッドストック」に集結

アーティストのユー・シューさんは、自身が制作したウォーレン・バフェット氏と故チャーリー・マンガー氏のブロンズ像をバークシャーの株主総会に合わせてオマハに持参する

著名投資家ウォーレン・バフェット氏と同氏のバリュー投資のスタイルを熱狂的に支持する人々が、年に一度、近くからも遠くからもネブラスカ州オマハに集まる。中には本当に遠い場所からやって来る人もいる。

中国在住のファンドマネジャー、アイリーン・チャンさんは、今週末に開かれるバフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの年次株主総会に向かっている。個人向け金融サイトを運営するクリストファー・ウォルシュさんはニュージーランドから、パトリック・ローゼンクイストさんはスウェーデンからオマハを目指す。

アーティストのユー・シューさんは、まず台湾から米コロラド州の鋳造所へ足を運んだ。バフェット氏と2023年に亡くなった同氏の盟友でビジネスパートナーだった故チャーリー・マンガー氏のブロンズ像を制作し、ここで鋳造してもらったのだ。ユーさんは借りた車に像を慎重に積み込み、コロラド州東部とネブラスカ州を横断して運ぶという。

毎年何千人もの来場者が、バークシャーの会長兼最高経営責任者(CEO)であるバフェット氏の話に耳を傾け、同じように熱心な投資家たちと交流する機会を求めて年次総会へ向かう。長年にわたり総会に出席してきた一部の人たちによると、集まりはここ数年でますます国際色が豊かになっている。

米国外に住むバフェット氏の崇拝者たちは、現在94歳の伝説的な株式投資家が永遠にそこにいるわけではないことを承知していることもあって、オマハを訪れていると話す。また、バフェット氏が「資本家のためのウッドストック」と呼ぶバークシャーの株主総会に付随して開かれる投資や社交のイベントに関心を持っている人たちもいる。

今年の株主総会は、投資家が貿易戦争や変動の激しい金融市場、そして米国内外の企業が先行き不透明感に直面する中で開催される。オマハに集まる聴衆やテレビで会合を視聴する多くの人々は、この不安な時期を乗り切るためのバフェット氏の賢明な言葉を熱心に待ち望んでいる。

スウェーデンに住むパトリック・ローゼンクイストさんは、今年もバークシャーの株主総会に参加する。写真は以前の総会出席時のもの

米国外からの参加者は、少なくとも1990年代半ば、バフェット氏が株主に宛てた年次書簡で彼らの出席に言及し始めた頃から、オマハの光景の一部となっている。2000年代には、バフェット氏とマンガー氏は米国・カナダ以外からの訪問者のためにレセプションを開いていた。最終的には外国人参加者の数が多くなりすぎて、特別なイベントで彼らをもてなすことができなくなった。

バフェット氏は2010年2月の書簡に「昨年は参加者数は約800人に増え、私が1人につき1つのアイテムにサインするだけで2時間半ほどかかった」と記している。「今年は外国からの参加者がさらに多く見込まれるため、チャーリーと私はこの行事を中止せざるを得ないと判断した。しかし、外国から訪れる全ての参加者を歓迎することに変わりはない」

事情に詳しい関係者によると、バークシャーは今年、株主総会のチケットを要請した株主に対し、25日までに13万8000枚以上を送付し、これには米国外に住む株主約3200人も含まれる。バークシャーはまた、同社株を保有していない人にも席を提供するため、電子商取引サイト「イーベイ」を通じて1組5ドル(約710円)で6000枚以上を販売した。

同社は、週末のメインイベントである5月3日のバフェット氏と他の幹部らによる質疑応答セッションに、そこまで多くの人が姿を見せるとは予想していない。総会への出席資格は、一部の参加者にとっては唯一の目的であるショッピング展示会へのアクセスも提供している。またチケットを求める株主の大半は、最終的に1人で来場する可能性があっても、権利として与えられた4枚全てを求める。

バークシャーの昨年の年次株主総会に出席した人たち

CNBCは、質疑応答セッションを英語と標準中国語でインターネット配信する。これはバフェット氏の世界的な人気を示す一例だ。

自宅から総会の様子を見ることに満足しない人たちもいる。ニュージーランドから長旅をしてオマハ行きを計画する人は、ウォルシュさんが自身のウェブサイト「マネーハブ(MoneyHub)」に投稿した情報を参考にすることができる。そこには、全米鉄道旅客公社(アムトラック)を利用してオマハまでの最後の行程をどう移動するかという情報から、会場で一等席を確保する方法(「列に並ぶのが早ければ早いほど良い席が取れる。ただし、走る必要がある。それも速く。警備員が『走らないで』と注意してくるが」と書かれている)まで、あらゆることに関するヒントが記載されている。

ウォルシュさんは昨年初めてバークシャーの年次総会に出席し、メインイベントを取り巻くお祭り的な雰囲気やバフェット氏を目にする機会に興味を持った。総会の主役であるバフェット氏を一目見るために、また戻ってきたいと考えた。

「(ロックバンドの)ローリング・ストーンズが毎年4月か5月のある日に公演していて、自分が行けることが分かっているなら、行き続けたいと思うだろう」とウォルシュさんは話した。

韓国生まれで中国在住のバリュー投資家であるチャンさんは、バフェット、マンガー両氏を一目見ようと2022年に初めてオマハを訪れた。翌年に戻ってきた際、長年の個人株主たちの集まりに友人が連れて行ってくれた。その経験はチャンさんにとって謙虚な気持ちにさせられるものだった。

「ここにいる人たちは大げさな話し方をせず、業界用語も一切使わない」とチャンさん。「でも彼らの投資リターンを見ると、多くの人がおそらく大半の運用担当者の成績を上回っている。そして彼らは非常に長期的に投資している」

アイリーン・チャンさんと、長年のバークシャー株主で結成されるグループに所属するライル・マッキントッシュさん。写真は過去の年次総会で、グループの名前が書かれた帽子を掲げる2人

スウェーデンの保険ブローカーに勤務するローゼンクイストさんは、自身の投資への取り組み方を変えるきっかけとなったのはバフェット氏とマンガー氏だと評価している。以前はなじみのない企業に短期的に投資していたが、現在は長期的な視点を持ち、バフェット氏の典型的な投資原則の一つである「自分の知っている分野に投資する」というアプローチを守っている。

中国出身で若い頃に米国に移住し、現在は芸術活動のために台湾に住むユーさんにとっては、今回は11回目のバークシャー年次総会となる。何年も前に投資について独学で知識を得る中でマンガー氏の存在を知り、その後、定期的にオマハでの総会に出席する資産運用会社の顧客となった。

今週末の年次総会に合わせて、バークシャーの事業ポートフォリオに含まれるキャンディーやスポーツウエア、その他の商品が販売される見通しだが、ユーさんも少し資本主義的な活動に携わることを目指している。

ユーさんが制作した重さ約20キロのバフェット氏とマンガー氏の限定版ブロンズ胸像は、1体当たり2万4000ドルで入手可能になる予定だ。