杉村太蔵、人生の最大のラッキーは「外資系証券会社に勤められたこと」 “人脈は金脈”と語る理由

 著名人に「お金」に対する思いや考え方を聞く不定期シリーズ「私とお金」。第2回は杉村太蔵さん(45)。2005年、26歳で当時史上最年少の国会議員に。議員になる前は、時給800円のビルの清掃バイト中にスカウトされた外資系証券会社に入社し、金融の知識を身につけたという異色のキャリアも持つ。現在は地方の商店街活性化にも取り組んでいるそうです。明るく前向きな杉村さんに、【後編】では、地方創生事業、投資に必要なことなどについて、ずばり聞きました。

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――現在取り組んでいる地方創生事業とはどのようなものでしょうか。

 新規事業の立ち上げを中心に商店街の活性化に取り組んでいます。今は北海道旭川市と山口県下関市の2カ所の商店街で行っています。今はまだ2カ所だけですが、可能性にあふれる日本の地方都市を底上げしていきたいと思っています。地方の魅力をもっと広め、人々の雇用を増やしたい。

■ろくな投資家がいなかった

 商店街の出店には、敷金も礼金も保証金も一切不要で、厨房機器も標準装備。いつやめても違約金がかかりません。出店のハードルを下げて意欲ある出店者を募っています。最初の半年間は売上金に対して20%の施設使用料だけ頂くことにしています。こういう条件であれば「思い切ってやってみよう」という気持ちになると思います。こんなチャンスを地方にたくさんつくるというのが投資家の役割だと僕は考えたんです。社会をよくするためにお金を使うということです。だから私は胸を張って投資家だと言えるわけです。本来投資家はそうあるべきで、日本がなぜにこの30年間成長しなかったかというと、日本にろくな投資家がいなかったからなんです。みんな自分のリスク回避と自分の利益ばかりを考えて投資をしてきた。だから失われた30年だったんです。

――お金が貯まりにくい人とはどのような人でしょうか。

 私が強く申し上げたいのは、もっともお金が貯まりにくい人の典型は「東京で賃貸物件で一人暮らしの人」です。とにかく家賃が高い。これからもどんどん厳しくなるでしょう。40代で年収400万円未満で、もし田舎にご実家がある方であれば、東京で高い家賃を払ってお暮らしになるより、ふるさとに帰って生活するほうがいいと思います。地方だと家賃も食材コストも安く抑えられ豊かな生活ができると思います。

 体力もある20代の若いうちは都市部で挑戦してもいいと思います。東京には優秀な人がいっぱいいます。体力もあり頭も良くて、性格もいい。そんな人はごろごろいて、そういう人に仕事が集まっていきます。東京で勝負をしたい、生き残っていきたいと思ったら専門性を身につけて磨いていくことです。自分の強みを見つけて、自分にしかできないことを伸ばしていくことです。40歳を過ぎたら、自分の得意とする1つの分野で90分間話せること、またはそのテーマで3万6千文字の論文を書けなかったら東京で暮らすのは厳しいですよ。自分に武器がないということですから。

■「教えていただける」

――資産形成や投資に必要なこととは?

 僕はとにかく恵まれていたと思います。いまだに小泉純一郎さんや武部勤さんから声をかけていただいたり、かわいがってもらったり。分からないことがあったら、教えてもらえる人が近くにいて、気軽に相談できる人もいます。「教えていただける」というのは、資産形成においても投資においても非常に大切なこと。「お前には話したくない」なんて思われるような生き方をしている人はどんどん人脈が減っていきます。そういう人は金脈が細っていると思います。人脈は金脈ですから。

 僕はただただ自分を助けてくださる全ての方に感謝をしながら敬意を示して生きてきました。僕の人生の最大のラッキーは、清掃員時代にスカウトされて、そのビルの中にある外資系証券会社に勤められたことです。

 僕の土台になっているものは、すべてあの会社で叩き込まれました。清掃の仕事からいきなり外資系証券会社に就職ですから、もちろん任されたのは底辺中の底辺のような仕事。アナリストの下にいるジュニアアナリストのアシスタント業務です。でも僕は嬉しかった。その部署の全員の雑用を日々こなしていたおかげで、ほぼすべてのアナリストと繋がることができました。みなさんにすごくかわいがっていただいたし、知識もいっぱいつけることができました。

 あれから20年ほど経った今でも彼らとの交流は続き、今やっている地方創生事業も彼らと考えて事業化しました。彼らの存在は僕の財産です。巡りあわせに本当に感謝しかありません。

――明るく素直なキャラクターが生きているのかもしれません。

 妻は結婚する時に「この人と結婚したら食いっぱぐれることはない」と思ったそう(笑)。確かに僕は前向きだし、意欲的だと思います。人にも恵まれ、人を大事にしています。資産形成に重要な「心の健康」をキープするために人間ドックと並行して、定期的に心療内科で医師に診てもらって、心の健康もチェックをしています。自覚はなくても見えないところで心にストレスがかかる仕事です。どんな時も笑顔で元気で生活できるように心がけています。

(構成/ 編集部・大崎百紀)

杉村太蔵(すぎむら・たいぞう)/1979年8月13日、北海道旭川市生まれ。2005年9月、第44回衆議院議員総選挙で最年少当選(当時)を果たし国会議員に。労働問題を専門に、特にニート・フリーター問題など若年者雇用の環境改善に尽力する。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程所定単位取得退学。TBS系「サンデージャポン」の準レギュラーコメンテーター、フジテレビ系「サン!シャイン」木曜日のスペシャルキャスター。テレビ出演などメディアで活躍するかたわら、(株)ここはれての代表取締役社長として新規創業支援を中心とした新しいまちづくりを提唱し、2022年7月には北海道旭川市に「旭川はれて屋台村」を、2024年1月には山口県下関市に「唐戸はれて横丁」を開業した。趣味はテニスと釣り。3児の父。