「学校で朝ごはんを提供する」という報道に、現役教師が「本気でそれ、褒める話?」“親の責任”と教育現場の限界を訴える
「学校で朝ごはん」というニュースを見たが…現役教師の違和感が話題に(photoACより「エルボンズ」さん撮影、イメージ画像)
「学校で朝ごはんを提供」というニュースを見たとき、「素晴らしい取り組みだ」と感じた人も多いかもしれない。だが、その裏側にある“本当の問題”に、X(旧Twitter)上で鋭く切り込んだのが、現役教師でありながら不動産投資についてSNSでも情報発信を行う〈タクト先生〉(@ikuji_takuto)だ。
「“親として終わっていませんか?”──。あまりに強い言葉に感じたかもしれませんが、それだけ深刻なんです」。そう語るタクト先生に、投稿の真意と現場のリアルを取材した。
「美談」に感じた違和感。教育現場で起きている“肩代わり”
投稿の発端は、学校で朝食を提供するという報道だった。X上では「助かる家庭も多い」「ありがたい」といった肯定的な反応が多く寄せられていたが、タクト先生はそこに大きな違和感を抱いた。
「問題なのは、“教員が準備するのか”ではないんです。なぜ学校がそこまでやることになっているのか。その異常さに気づいてほしい」
本来、家庭で担うべき“最低限の育児”すら学校が肩代わりし、社会全体がそれを「ありがたい」と受け入れてしまっている――この構造自体がすでに限界にきているというのだ。
「親の役割放棄」で教育が崩れるのでは…(photoACより「FineGraphics」さん撮影、イメージ画像)
「親の役割放棄」で教育が崩れる。現場の叫び
「子育ては親だけの責任じゃない」という意見もあるが、それと「親の責任放棄」は別問題だ。
「“仕事が忙しいから”の一言で、朝食も、生活習慣のしつけも、すべて学校任せ。問題が起きれば学校が悪いとされる。教師が教育に集中できる環境は、もう崩壊しています」
親の“成長機会”が奪われ、子どもだけが育っていく危うさ。タクト先生は「親も子育てを通して成熟するべきなのに、そのチャンスすら手放している」と警鐘を鳴らす。
「支援」は万能薬ではない。必要なのは“価値観”の転換
では、どうすればこの状況を変えられるのか。タクト先生は「もはや制度や支援の段階ではない」と断言する。
「支援を増やせば増やすほど、親はますます“自分の責任”から逃げる構造になってしまっている。問題の本質は、“働くことが正義”“お金が全て”という価値観にあります」
“子どもと向き合う時間”を「投資」だと捉えられる社会へ。その価値観の転換こそが、教育現場と子どもたちを守る鍵になると訴える。
「学校は福祉機関ではありません」と訴えるタクト先生(photoACより「rinne_yuyu」さん撮影、イメージ画像)
教師は福祉職ではない。“本来の教育”を取り戻すために
タクト先生は最後に、教育現場・保護者・社会全体へのメッセージとして、こう締めくくった。
「学校は福祉機関ではありません。教師に求められているのは、教育です。保護者は“子どもと向き合う責任”を、もう一度自分の中に取り戻してほしい。甘え合いの連鎖を断ち切る時が来ています」
SNSでは賛否両論が巻き起こったが、それだけ多くの人がこのテーマに「揺れている」証拠でもある。親とは何か、学校とは何か。今こそ、社会全体で考え直すときなのかもしれない。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)