「オルカン」「日経225」が下がり「S&P500」が浮上する三菱UFJ銀行の売れ筋、株式市場の復調でバランス型は?

「オルカン」「日経225」が下がり「S&P500」が浮上する三菱UFJ銀行の売れ筋、株式市場の復調でバランス型は?

各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、三菱UFJ銀行のデータをもとに解説。

三菱UFJ銀行の投信売れ筋ランキングの2025年7月は、トップ3が前月と同様だった。トップに「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」、次いで、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」になっている。第4位には前月第7位だった「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」が上がり、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)と「eMAXIS Slim国内株式(日経平均)」は後退した。また、前月第9位だった「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」が第7位となり、トップ10圏外から「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)」が第10位にランクインした。

「S&P500」が浮上して「オルカン」「日経平均」が沈む

三菱UFJ銀行の売れ筋ランキングで「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が前月の第7位から第4位にランクアップし、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は第4位から第5位に、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」は第5位から第6位に後退した。6月は「オルカン」「日経平均」が順位を上げ、「S&P500」が順位を下げたため、その逆になったかっこうだ。7月には、米「S&P500」や「NASDAQ総合」をはじめ、ドイツ「DAX」、英「FTSE100」、そして、日本の「TOPIX(東証株価指数)」まで史上最高値を更新し、8月にはついに日本の「日経平均株価」も最高値に達した。世界的な株高が続いているが、中でも米国は世界の株高をけん引しているような上昇を続けている。自ずと米国株人気が高まったものと考えられる。

国内の投資家にとってなじみ深い3つのインデックスである「S&P500」、「全世界株式(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)」、そして、「日経平均株価」に連動するインデックスファンドの推移を「オルカン」の設定時である2018年10月末から振り返ると、「S&P500」の強さが際立ち、「日経平均」をボトムとして「オルカン」は、その中間にある。長期の資産形成手段である積立投資で使う株式ファンドは「オルカン」か「S&P500」の2択という見方がされているのは、この過去7年程度のパフォーマンスの印象が強いためだろう。

ただ、「eMAXIS Slim」シリーズで3本のインデックスファンドの基準価額の推移を比較してみると、2018年10月末を起点にすると2021年3月までは3本のインデックスファンドの動きはほぼ重なっている。「日経平均」がやや出遅れているが、2021年3月時点では3本はほぼ同じ水準だった。この時、「ロックダウン(都市封鎖)」で世界経済をまひさせた「コロナ・ショック」(2020年3月)からの脱出が始まっている。ワクチンが普及することで徐々に平常化が進み始めている。そして、米国株の「一人勝ち」も始まった。過去約7年のうち、米国株の強さが際立っているのは、約半分の期間に過ぎないということは忘れてはならない。前半の3年半は国内株も含めて似たようなパフォーマンスだった。

加えて、ファンドのパフォーマンスの合は、海外資産と国内資産を比較する際にはドル円という為替の影響がある。2018年当時、1ドル=110円程度で2021年まではほぼ横ばいだったが、2022年には年平均で約131円、2023年は約140円、2024年は約151円へと段階的な円安が進む。ドル円の影響で「S&P500」や「オルカン」は「日経平均」に対して2021年と2024年では35%~40%程度の為替メリットを受けていることになる。2025年になって1ドル=148円程度にやや円高方向に動いているが、今後ドル円がどのように動くのかは十分に注意したい。

2018年10月末を起点にすると、2025年7月末時点で「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」はプラス242%(元本は3.4倍)、「オルカン」はプラス190%(同2.9倍)で、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」のプラス110%(同2.1倍)を大きく上回っている。投資する銘柄によって運用成績に大きな違いが出る。これはあくまでも過去の結果だ。これからは、どの資産が良い結果につながるのか、よく考えたい。

株高局面に追いつかれた形のバランス型ファンド

7月のランキングで「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」が引き続きトップにはなったものの、パフォーマンスの面では「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」や「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」といった株式アクティブファンドの優位性が目立ち始めている。

そもそも「MUFGウェルス・インサイト・ファンド」は、ポートフォリオのリスク水準に着目した資産配分を行うバランスファンドとして設計されている。「標準型」の目標リスクは年率10%程度、「積極型」は同14%程度だ。株式市場が下落して先行きが不透明になると、その安定したパフォーマンスが評価を高めるが、一転して株価が上昇するような局面では株式ファンドに対して上昇率が見劣りすることになる。

4月の急落場面ではバランス型の強みが感じられたが、6月以降8月まで続いた株高局面では徐々に株式ファンドにパフォーマンスで追いつかれ8月13日時点ではついに「積極型」でも基準価額の水準が並ばれた。今後、株式市場が安定した上昇局面を維持するものであれば、徐々に株式ファンドがバランス型をアウトパフォームする動きになるはずだ。株式市場がはらむ不透明さや先行きへの不安が、どの程度払しょくされているのか? 今後のバランス型への人気は株式市場の見方に左右されよう。

執筆/ライター・記者 徳永 浩

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。