ゲオ、社名変更でも「レンタルはやめない」。リユース最大手でも常に「危機感」

リユースが既に「売り上げの6割」, セカスト主軸に「1兆円」へ, ゲオ流、リユースの「勝ち筋」は, 「レンタルビデオ店」は辞めない

ゲオホールディングスが、主力のリユース事業にちなんだ「セカンドリテイリング」に社名変更する。

リユース大手のゲオホールディングスは、2026年10月に社名を「セカンドリテイリング」へ変更する。

「いろんな面で、ちょっと『損』をし始めたかなと」

8月上旬、Business Insider Japanの独占インタビューに応じたゲオホールディングスの遠藤結蔵社長は、社名変更を決断した理由について、落ち着いた声でこう話す。

同社はレンタルビデオ店の「GEO」が広く知られているが、現在の主力事業はリユースショップ「セカンドストリート(セカスト)」や中古スマホ販売の「GEO mobile」などによるリユース事業だ。全体の合算値で店舗数・売り上げともにリユース業界トップを走るなか(約2000店舗、セグメント売上高約2700億円)、社名も実態に合わせた形となる。

なぜ今、社名の一新を決めたのか。レンタル事業は今後も続けるのか。そして、次の成長をどう描いているのか。遠藤社長に直撃した答えは、「危機意識」をにじませる意外なものだった。

リユースが既に「売り上げの6割」

リユースが既に「売り上げの6割」, セカスト主軸に「1兆円」へ, ゲオ流、リユースの「勝ち筋」は, 「レンタルビデオ店」は辞めない

ゲオホールディングスの遠藤結蔵社長。

「ゲオHDという社名が、いまのグループを本当に表しているのか?という大きな疑問がありました。そして、セカンドストリートが多くの方に支持されるようになったことも背景にあります」(遠藤社長)

もともとゲオは、レンタルビデオ店として成長してきた会社だ。「ゲオ」と聞けば、黄色と紺色のあのロゴマークを思い浮かべる人も多いだろう。実際、今やレンタル事業は業界トップシェアだ。ただし、Netflixなどの配信サービスの拡大により市場は縮小しており、売り上げは年々減少傾向にあることも事実だ。

一方で、現在のゲオグループの主力はリユース事業だ。2010年に完全子会社化したセカンドストリートをはじめ、ブランド品を扱う「OKURA」(2019年に買収)、中古スマホなどを扱う「GEO mobile」など、複数のリユース関連事業を展開している。

リユース事業(下のグラフではリユース系+メディア系として表記)は売り上げ全体の6割以上を占めており、会社の「稼ぎ頭」になっている。

リユースが既に「売り上げの6割」, セカスト主軸に「1兆円」へ, ゲオ流、リユースの「勝ち筋」は, 「レンタルビデオ店」は辞めない

2025年3月期決算資料のデータをもとに重要セグメント別に売り上げ構成比をまとめた。レンタル事業は「その他」として計上されている。メディア系にはゲームとスマホなどが含まれる。

かつてはゲオの知名度が高く、セカストの物件取得や採用にもプラスに働いていた。だが、セカンドストリートの認知度も高まり、海外進出も好調な今、グループ名が「ゲオホールディングス」であることが、説明のわかりにくさや、ブランドイメージの混乱につながるケースも出てきた。

「会社名がゲオホールディングスであることが、必ずしもプラスに働くとは限らなくなってきました。特にコロナ禍以降、その傾向を強く感じるようになりました」(遠藤社長)

セカスト主軸に「1兆円」へ

リユースが既に「売り上げの6割」, セカスト主軸に「1兆円」へ, ゲオ流、リユースの「勝ち筋」は, 「レンタルビデオ店」は辞めない

国内外で成長中のセカンドストリート。店舗数は世界1000店を超えた。

新社名となる「セカンドリテイリング(2nd RETAILING)」の「セカンド」は、「second-hand(中古)」に由来している。

「セカンドハンドの商売を、グループ全体で力を入れていこうという思いがあります。もちろん、他にもさまざまな事業はありますが、これからはリユース事業を主軸に据えて成長していきたい」

と遠藤社長は語る。

2035年度までに売上高1兆円の達成を掲げる。2025年3月期の売上高は4276億円であり、10年で2倍以上に伸ばす計画だ。

その原動力として見込んでいるのが、セカンドストリートを中心としたリユース事業の拡大。成長を支えるのは、積極的な出店戦略だ。グループ全体で5000店舗体制の構築を掲げており、2025年3月期時点の2186店舗から倍以上に拡大する見込みだ。

「1兆円という目標は簡単ではありません。ただ、その実現にはリユース事業が最も重要だと考えています。中でも、客単価は低くても来店数が多いセカンドストリートは大きく伸ばせる余地がある。国内外の両方で出店を加速し、市場を広げていきたい」

と遠藤社長は語る。

実際、セカンドストリートの出店計画はグループ内でも最も積極的だ。国内では2028年度までに、海外では2035年度までにそれぞれ1000店舗の展開を掲げている。

ゲオ流、リユースの「勝ち筋」は

リユースが既に「売り上げの6割」, セカスト主軸に「1兆円」へ, ゲオ流、リユースの「勝ち筋」は, 「レンタルビデオ店」は辞めない

撮影:土屋咲花

ただ、リユース市場全体が拡大する中で、競合も増えている。セカンドストリートと同業態としてはトレジャーファクトリーがあり、ブランド品リユースではコメ兵、オンラインではメルカリなど、さまざまなプレイヤーが存在感を高めている。

この競争環境で、どのように差別化していくのか。遠藤社長は「一番大きなニーズを満たすことが重要」と語る。

ゲオHDが考えるその「一番大きなニーズ」とは、“便利さ”と“買取価格の高さ”だ。

「利便性と経済的価値の両方を提供するには、やはりリアル店舗での買取が起点になると考えています。お客様にとって通いやすく、高く買い取ってくれるお店が選ばれる。その体験価値が、結果的に差別化につながると思っています」(遠藤社長)

「利便性」については、出店数の拡大によって対応していく方針だ。では、「高い買取価格」はどう実現していくのか。

遠藤社長は、長期的な視点で二つの方向性を挙げる。

「ひとつは、店舗数の拡大によってシステム投資が可能になり、業務の効率化が進むこと。現場の負担が軽くなれば、少ない人員でも運営できるようになります。結果として、その分のコストをお客様に還元できる可能性があると思っています」

もうひとつは、グローバル展開による価格最適化だ。

「現在は、買い取った店舗でそのまま販売するのが基本です。ただ、今後店舗が海外にも広がれば、より価値の出る国や地域で販売することもできるようになる。日本で買い取った商品を別の国で販売する、といった流通が実現すれば、より高い経済的価値を提供できると考えています」

この考え方は、かつてゲオがレンタルビデオ事業で挑戦してきた取り組みとも重なる。

創業当時、1本1000円が当たり前だったレンタル料金を、多店舗展開と仕組み化で引き下げ、より多くの人が気軽に映画を楽しめるようにした。「高く買い取る」ことも、顧客に価値を返すという意味では共通する。

「レンタルビデオ店」は辞めない

リユースが既に「売り上げの6割」, セカスト主軸に「1兆円」へ, ゲオ流、リユースの「勝ち筋」は, 「レンタルビデオ店」は辞めない

新社名のロゴ。「E」のデザインはゲオのロゴから継承した。

社名が変わるとなれば、レンタルビデオ事業からの撤退を想像する人もいるかもしれない。だが、遠藤社長はそれを明確に否定する。

「やめたいとは全く思っていません。ただ、どうしても続けられなくなる可能性は二つある」

と語る。