“お膝元”で先代ブルーも見よう! 空自「松島基地航空祭」で見られる保存機まとめ
- 【展示機はどこに?】
- <キミ、本当は何番なの? 初代ブルーインパルスの使用機種:F-86F-40 (92-7789)>
- <同じ番号の機体が2機ある!?「最後の有人戦闘機」と言われた:F-104J (36-8535)>
- <国産初の超音速ジェット練習機:T-2 (59-5192)>
- <2代目ブルーインパルスで活躍した機体:T-2 (29-5176)>
- 【機体の一部を活用した訓練機材・モニュメントなど】
- <かつては展示機だった T-6G 52-0129>
- <パイロットの救出訓練に使用:T-2のコックピット部分 (79-5141)>
- <津波で被災した唯一の「ブルーインパルス機」 T-4の尾翼 (26-5804)>
- <出張展示で全国へ! 元ブルーの用廃機:T-4(46-5725)>
松島基地 2022年8月28日撮影 29-5176 三菱 T-2 航空自衛隊
航空自衛隊松島基地航空祭が、2025年8月31日(日)に開催されます。ブルーインパルスのホームベースとして有名な松島基地ですが、基本的には戦闘機パイロットの訓練基地。これまでにはT-6やT-33A、F-86F、T-2、F-2Bが配備され、数多くの戦闘機パイロットを育ててきました。また、救難隊のUH-60JとU-125Aも配備されています。
地元松島でのブルーの展示飛行にも注目ですが、同時に見ておきたいのが基地内に展示されている保存機たち。基地内には広報用展示機や保存指定機として4機が保管されているほか、訓練使用機材や震災によって用途廃止(用廃)となった機体のモニュメントといった「機体の一部」も展示されています。航空祭を前に、一度おさらいしておきましょう。
【展示機はどこに?】
正門奥のブルーインパルスハンガー脇にF-86F戦闘機「機体記号:92-7789」、F-104J戦闘機「36-8535」、T-2練習機「59-5192」の3機が、格納庫内にブルーインパルス塗装のT-2練習機「29-5176」が保存されています。
【展示機紹介】
<キミ、本当は何番なの? 初代ブルーインパルスの使用機種:F-86F-40 (92-7789)>
F-86Fは、航空自衛隊の創成期から1960年代の主力であった昼間戦闘機。初代ブルーインパルスの使用機種としても知られていますが、F-86Fのブルーインパルスは浜松基地の所属。T-2への機種更新してから、松島がブルーインパルスの拠点となりました。
展示機には、尾翼に「92-7789」という機体記号が刻まれていますが、実は「92-7789」は実在しない機体。本当の番号は「82-7789」だといわれています。「82-7789」は1958年に領収され、1978年に用廃となった機体。尾翼にはかつて松島基地に所在していた第7飛行隊のマーク(青地で4を表したもの)が描かれています。また機首先端部左側には、震災時の津波到達位置が赤ラインで記入されており、松島基地の被災の記憶を物語っています。
© FlyTeam Cスマイルさん松島基地 2018年7月11日撮影 ノースアメリカン F-86F-40 セイバー 航空自衛隊
<同じ番号の機体が2機ある!?「最後の有人戦闘機」と言われた:F-104J (36-8535)>
F-104Jは、アメリカ・ロッキード社が開発したマッハ2級の戦闘機。デビュー当初にはミサイル万能論が隆盛を極めたこともあり、「最後の有人戦闘機」と呼ばれました。航空自衛隊では単座のJ型を210機、複座のDJ型を20機を導入し、1962年から1987年まで運用。うち14機は退役後に無人標的機に改造され、訓練で使われました。
展示機は1963年に納入され、1983年に用廃となった機体。固定武装として20mm機関砲を機首左下に備えていますが、展示機の砲口はカバーで塞がれています。また尾翼には、千歳基地第203飛行隊の部隊マークが描かれています。実は、宮崎県の新田原基地にも「36-8535」と書かれたF-104Jが展示されていますが、その機体は「46-8656」の番号を書き換えたもの。松島基地の展示機が本物の「36-8535」です。
© FlyTeam てくろくさん松島基地 2023年8月27日撮影 36-8535 三菱 F-104J スターファイター 航空自衛隊
<国産初の超音速ジェット練習機:T-2 (59-5192)>
T-2は、1971年に初飛行した国産初の超音速ジェット練習機。1960年代後半ごろのパイロット養成体系では、F-104等の超音速ジェット戦闘機パイロットの育成が難しいことから開発された機種です。全96機が製造され、その多くは松島基地の第21/22飛行隊に配備されました。
展示されている「59-5192」は、1985年から2004年まで運用され用廃となった機体で、2008年から松島基地に展示。当初はF-1戦闘機と同様の迷彩が施されていた機体でもあります。尾翼には松島基地第21飛行隊のマークが描かれています。
© FlyTeam 木公さん松島基地 2022年8月28日撮影 59-5192 三菱 T-2 航空自衛隊
<2代目ブルーインパルスで活躍した機体:T-2 (29-5176)>
T-2は、1982年から1995年までブルーインパルスでも使用。展示飛行を実施していました。「29-5176」もブルーインパルスとして活躍し、T-4導入に伴いブルーから撤退した後も、塗装を変えずに松島基地で教育訓練に使用されていました。しかし、2003年10月に用廃に。航空自衛隊の歴史を後世に遺す保存指定機として、現在もブルーインパルスハンガー内に保管されています。なお、“ブルーインパルス担当機の見どころ”である右エンジン排気口のスモークパイプは取り外されています。
© FlyTeam てくろくさん松島基地 2023年8月27日撮影 29-5176 三菱 T-2 航空自衛隊
【機体の一部を活用した訓練機材・モニュメントなど】
松島基地は、2011年3月に発生した東日本大震災によって大きな被害を受けた基地。当時同基地に所属していたF-2やT-4も津波によって水没し、中には修復できずそのまま抹消された機体もあります。
同基地ではその抹消機の一部を「モニュメント」にしているほか、訓練用として機体の一部が使用されています。ここからは、そうした機体の一部が展示されているものについても、合わせてご紹介します。
<かつては展示機だった T-6G 52-0129>
地上展示機の並ぶエプロンに出て、管制塔より右手を眺めると、プロペラと主翼を外したT-6Gの胴体部分を見ることができます。このT-6Gは、かつて正門奥に置かれていた広報展示機。2017年ごろの台風の際に破損したため、現在は消火・救難訓練に用いられているようです。垂直尾翼には「52-080」と記入されていますが、本当の番号は「52-0129」号機だといわれています。
© FlyTeam 木公さん松島基地 2022年8月28日撮影 52-0080 ノースアメリカン T-6G テキサン 航空自衛隊
<パイロットの救出訓練に使用:T-2のコックピット部分 (79-5141)>
T-6Gと同じエリアには、T-2(79-5141)の機首部分が置かれています。この機体は1977年に領収され、1996年に用廃になったもの。現在はパイロット救出訓練のために機首部分だけが残されており、現在でも使われています。遠くにあり、なおかつ小さいですが、今年の公開でも見ることができることでしょう。
© FlyTeam Mame @ TYOさん松島基地 2018年8月26日撮影 79-5141 三菱 T-2 航空自衛隊
<津波で被災した唯一の「ブルーインパルス機」 T-4の尾翼 (26-5804)>
2011年3月11日の東日本大震災の際、ブルーインパルス本隊は九州新幹線開業セレモニーでの展示飛行を控え、芦屋基地に展開していたため難を逃れました。しかし基地に残されていた予備機「26-5804」は津波によって被災し、抹消。同機の垂直尾翼が、第11飛行隊隊舎前にモニュメントとして設置されています。
© FlyTeam てくろくさん松島基地 2023年8月27日撮影 26-5804 川崎 T-4 航空自衛隊
<出張展示で全国へ! 元ブルーの用廃機:T-4(46-5725)>
当初ブルーインパルスで使われた11機のT-4は、3機が事故や津波被害にて抹消され、残る8機は2019年度末までに全機が用廃となりました。8機の元ブルー機のうち、4機は熊谷、浜松、名古屋、岐阜で展示中。もう1機は展示準備中と報じられています。「46-5725」は、展示されなかった残りの3機のうちの1つ。垂直尾翼のみを台車に乗せ、各地での広報活動時に出張展示が出来るようにしてあります。今年の航空祭でも、例年同様に射出座席とエンジンをワンセットにして展示されることでしょう。
© FlyTeam SIOUX13さん松島基地 2024年8月25日撮影 46-5725 川崎 T-4 航空自衛隊
<津波損傷機 F-2B(23-8110) >
東日本大震災の際に押し寄せた津波により、当時第21飛行隊に所属していた18機全てのF-2Bが被災。うち13機を修理して復帰させていますが、残りの5機は修理できず抹消されました。「23-8110」はそのうちの1機で、前席コクピット部分を切取って学生教育用のコクピットトレーナーとして活用されています。2024年度には本機のドラッグシュート格納部を含む垂直尾翼部分を使った移動式モニュメントも造られており、今年も展示されることでしょう。
© 山本晋介F-2Bのコクピット © 山本晋介F-2Bの尾翼 © 山本晋介F-2B尾翼の解説
ブルーインパルスの展示飛行が目玉の航空祭ですが、展示品の背景には東日本大震災の爪痕が隠されています。航空自衛隊やブルーインパルスの歴史だけでなく、震災を受けて当時、ここで何が起こっていたのかを思い出し、次の世代に伝えていくきっかけになればと思います。