ストラテジストが「バブルではないが、買われすぎ」と断言する、日経平均最高値4万3,000円の“賞味期限”
(※写真はイメージです/PIXTA)
本記事は、マネックス証券株式会社が2025年8月14日に公開したレポートを転載したものです。
本記事のポイント
・最高値を更新した日経平均 修正は必至と見る
・問題は市場が見込む増益転換シナリオの蓋然性
最高値を更新した日経平均 修正は必至と見る
日経平均が史上最高値を更新した。「今週のマーケット展望」(8月12日付『日経平均の今週の予想レンジは4万1000円~4万2500円』)で述べていた通りの展開なので、想定通りといえばそれまでだ。
「三連休明けの東京市場では日経平均の最高値更新が見られそうだ。
今週は事実上のお盆休み。市場参加者も減って東京市場は夏休みムードの色濃い展開となるだろう。決算発表が一巡し、材料不足感が否めないものの、材料難・薄商いのなか、意外高となることも珍しくないので、日経平均は最高値更新のあと、どこまで高値を追えるかが注目される。
しかし、8月10日配信記事『株価、一時900円以上値下がりも、「令和のブラックマンデー再来」を回避させた「日銀の姿勢」【ストラテジストが解説】』でも書いた通り、今の株価は業績等のファンダメンタルズ面からやや買われ過ぎだ。外国人の連続買い越し記録も途絶えたこともあり、日経平均の最高値更新で目標達成感が出たあとは、利益確定売りに押される展開をメインシナリオと考えている」
8月13日付の日本経済新聞にもコメントが掲載された。
米株式市場でハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数が連日で最高値を更新する中、「出遅れていた日本株にもこの流れが波及している」(マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト)。
ナスダックだけではない。S&P500も、さらにいえばドイツ・DAX指数などははるか先を行く。世界的な株高のなかで、相対的に割安感があった日本株の出遅れ修正が起きただけである。
[図表1]SP500(白)、日経平均(青)、独DAX指数(橙)の推移 出所:Bloomberg
前回から指摘している通り、ファンダメンタルズから算出する理論株価との乖離は大きく広がった。テクニカル的な過熱感もあって、修正は必至と見る。
[図表2]日経平均実際値と理論値の推移 出所:QUICKデータから筆者作成
問題は市場が見込む増益転換シナリオの蓋然性
しかし、これもいつもいっていることだが、「市場が常に正しい」ということを金科玉条のように唱える人がいて、そういう面も確かにあるにはある。結局のところ、市場は正しかったり間違ったりする、というのが筆者の意見だが、今の市場が「正しい」とすれば、それはどのように正当化されるのだろう。
金利は上がっていない。これはサポート要因だ。そして前回述べた通り、為替が円安基調を維持している。円安の背景としては前回のレポートで述べた米国への投融資=日韓併せて9,000億ドルという巨額のドル調達需要がある。これがいちばん大きな要因だろう。そしてトランプ関税の影響も思ったほど大きくないという楽観。これらを統合すれば、市場はいまの業績予想コンセンサスを信じていないということになる。
足元、日本経済新聞社ベースの日経平均の予想EPS(1株当たり純利益)は前期比マイナス6%である。このEPSを長期金利1.5%(+リスクプレミアム)で割り引くと、日経平均の理論株価は3万7,650円程度である。
[図表3]EPSを現在の金利水準で評価し直した場合の日経平均の適正価格 出所:日本経済新聞社データより筆者作成
ところが実際の市場では日経平均は4万3,000円台まで買われた。その株価が正しいと仮定すれば市場は、7.5%の増益を織り込んでいることになる。
あり得ないシナリオではないので、今の株価はテクニカル的な過熱感や見た目の割高感はあるものの、決してバブルなどではない。問題は市場が見込む増益転換シナリオの蓋然性である。夏ももう終わりだが、ここからの相場の焦点はまさにその点である。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
※本記事はマネックス証券 チーフ・ストラテジスト広木隆氏のストラテジーレポート『日経平均4万3000円の正当性』を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。また、投資による結果に編集部は一切責任を負いません。投資に関する決定は、自らの判断と責任により行っていただきますようお願いいたします。