ホーキンソン、馬場、富樫、吉井が語る“情けなさ”を露呈したアジアカップ…「全部鍛え直し、二度と繰り返さない」
ホーキンソン、馬場、富樫、吉井が語る“情けなさ”を露呈したアジアカップ…「全部鍛え直し、二度と繰り返さない」
◆■ターンオーバーを多発してベスト8ならず
レバノンに73-97で大敗を喫したあと、吉井裕鷹が絞り出した短い言葉がすべてだった。
「この内容では今日の試合のことは語れません。情けないです。日本が強くなるためには一から考え直して、全部を鍛え直さなければなりません。それだけです」
富樫勇樹も口を開いた。「今までもアジアで勝ってきたわけではありません。実際のところは、まったくといっていいほどアジアで結果を残せていない状態が続いていました。今回はトムさんが言うようにグループ1位を目指していましたが、うまくいきませんでした。結果がすべてです」
富樫は「結果がすべて」と口を開いた [写真]=fiba.basketball
日本は準々決勝進出決定戦でA組3位のレバノンに敗れて、ベスト8進出を逃した。ミスから崩れてやりたい展開ができず、内容は完敗だった。
出足から得点源の富永啓生が徹底マークされる中、吉井がドライブを仕掛けて対抗。レバノン戦の前に吉井自身が「これまではホットになった選手を使い過ぎていたけれど、そのバスケでは勝ち上がれない。そこに固執しないで、もっと幅を効かせたバスケを模索している」と課題を語っていたように、3ポイントを打つスペースを広げるべく、ペイントアタックからゲームに入ったことは改善の兆しが見えた部分だった。
しかし、次第に強度が高いディフェンスに押されて攻め手を欠き、相手のトランジションゲームにかき回されて速攻を連発されてしまう。前半でターンオーバーは11を記録し、そこから相手に18得点(うち速攻で16点)も献上。オフェンスでは相手のスティールを狙うディフェンスの前にボールがつながらず、ディフェンスでは相手のピックに簡単に引っ掛かり、戻りも遅く、綻びが大きくなってしまったのだ。
唯一、対抗できたのは、第2クォーターに富樫勇樹が投入されてゲームを組み立て、残り2分半に41-44と3点差まで詰めたところと、最大26点のビハインドから、若手のジェイコブス晶やジャン・ローレンス・ハーパージュニアをコートに送り、第3クォーター終了時に17点差まで持ち直したところか。試合を通して、ターンオーバーが15もあっては勝ち目がなかった。
◆■チーム作りの過程ではあるが見直す点は山積み
ミスが多発した原因をホーバスHCは「相手のオンボールディフェンスのフィジカルに負けてしまい、そこからペイントアタックができずにおかしくなりました。今日はフィジカルのバスケに負けて足が止まりました」と分析する。
アジアカップで勝利したのはシリアとグアム戦のみで、ディフェンスでプレッシャーをかけられたイランとレバノンには力が及ばなかった。今大会は若手が多くメンバー入りしたことで、チームの連携がうまくいかなかったことは事実だ。今後のことを考えればいつまでも経験者ばかりに頼っていられず、チームの新陳代謝と底上げは必要なことであり、ホーバスHCの言葉を借りれば、「今はチーム作りのプロセス」であることは間違いない。
世代交代の難しさも実感することになった(写真はホーバスHC)[写真]=fiba.basketball
ただ、いわゆる「ベストメンバー」を揃えられなかったのは日本だけではない。グループフェーズで敗れたイランは世代交代中の真っ只中で、レバノンに関しては、チームの顔で司令塔のワエル・アラクジが大会直前になって参戦できないアクシデントがあり、負傷者も出ていた。
レバノンは『死の組』と呼ばれたA組において、最終の韓国戦で粗さが目立った攻防を露呈し、エース格2人を負傷で欠いた韓国に、22本もの3ポイントを57.9パーセントいう高確率で許して完敗を喫した。そこで、ミオドラグ・ペリシッチヘッドコーチは「試合に臨むハングリーさで韓国に負けた。ここから先は負けたら終わり。ディフェンスをしない選手は試合には起用しない」という檄を飛ばし、選手たちの目を覚ましている。韓国のスモールセンターに抑えられた帰化選手のディドリック・ローソンは、日本戦で汚名返上に燃えていたほど。日本戦で見せたトランジションゲームは、大会中に立て直しを図って発揮したものだった。
このように、若返ろうと、ケガ人が出ようと、大会に出れば、コートに立つ12人こそが「代表チーム」なので言い訳はできない。実際のところ大会を通して気になったのは、スキルとフィジカル面のすべてで劣っていたことだ。強度の高いディフェンスに当たられるとボールハンドルができず、打開することもままならない。戦術においてもオフボールでの動きに乏しく、ワイドオープンが作れない。レバノン戦の前半でカッティングなど見せて改善の兆しを見せたが、ワイドオープンを作る動きに関しては、すぐにでもテコ入れをする必要がある。
富樫や吉井が発したように、「これまでもアジアで勝ってきたわけではない」「全部を鍛え直さなければならない」という事実と向き合い、ホーバスHC自身から、戦い方を見直さなければならない。ワールドカップ2027のアジア地区1次予選は3カ月後の11月に迫っている。
◆■ホーキンソンと馬場によるキャプテンの総括
以下はキャプテンを務めたジョシュ・ホーキンソンと馬場雄大による大会を振り返ってのコメント。
ジョシュ・ホーキンソン「もっと高みを目指したかったが…W杯予選に向けての経験を活かす」
ダブルキャプテンの一人、ホーキンソン [写真]=fiba.basketball
相手のプレッシャーに最初から対応できず、スティールされてターンオーバーが出て、自分たちの形が作ることができませんでした。
アジアカップに臨むにあたっては、もっとできると思っていましたが、ベスト8に進めませんでした。結果でいえば、もっと高みを目指したかったというのが本音です。ただ、日本代表としての先を見ると、11月からワールドカップの予選が始まります。このアジアカップの結果は次の大会に持ち越されることはなくて、この大会で完結するので、そこはワールドカップ予選に向けて経験になったし、次に向けてもっともっと自分たちが成長しないといけない。アジアカップでの経験は、若い選手たちにとって大切なものになったと思います。
トムさんからは、「この1ヶ月半、代表チームとして活動して、日本のために一生懸命に取り組んでくれて、本当にありがとう」という言葉がありました。この大会は負けて終わってしまいましたが、この1回の負けというのが僕たち日本代表の価値を決めるわけではないですし、選手たちも『日本を代表して戦うことにどれだけ価値のあることか』ということも分かっています。トムさんは「この経験を次にどう活かすかが大事」という話をしてくれました。僕もそう思いますし、この経験を活かして次に進んでいきたいと思います。
馬場雄大「自分たちの責任は大きい。二度と繰り返さないように準備をする」
馬場は対戦チームの気持ちがこれまでと違ったと実感 [写真]=fiba.basketball
レバノンが走るチームだということ、カッティングで手が出てくることはスカウティングをして分かっていましたが、実際にやってみると粗いところはありましたが、予想以上でした。そこからミスが出てきてしまい、自分たちの流れがつかめませんでした。
僕たちのチームは若くて、トムさんもチーム作りを探っていたと思います。そこで経験ある僕らのような選手が自覚を持ち、トムさんの信頼を得てメンバーに入ったのですが、情けない形で終わったので、自分たちの責任をすごく実感しています。
一つのリバウンドやミスといった、細かいところが徹底できていません。気持ちの面でも押されて遂行できませんでした。今後は細かいところまで遂行できるチームにしていかなければなりません。
大会を通しては、日本代表に対して、相手の気持ちが今までと違った気がします。日本が勝ちだしているからこそ、本当に強い国として見始めたというのをすごく感じました。その中でも勝つことが課されていましたが、勝てませんでした。この結果を二度と繰り返さないように、これからはしっかりと準備をして、自分たちのやることをもう一度、見つめ直したい。
取材・文=小永吉陽子
【動画】日本vsレバノン ハイライト
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