【一覧表あり】石破茂首相の執念「現金給付」、配る経費も必要 コロナ禍以降14回の「事務費」を調べたら
政府・与党が参院選の公約だった現金給付を実現させるため、立憲民主党と協議する姿勢を示している。コロナ禍の2020年度以降に政府が行った計14の現金給付を本紙で集計したところ、支給総額20兆9723億円に対し、計4818億円の事務費がかかっていたことが分かった。政府の現金給付では、少なくない事務費に加え、実務を担う地方自治体の負担が増えるという問題もある。(石井紀代美)
◆印刷費、郵送費…これまでも批判され
石破茂首相は4日の衆院予算委で、立民との協議で現金給付の実施に意欲を示した。「給付金、減税、その先の給付付き税額控除について真摯(しんし)に協議をさせていただきたい」とする立民の野田佳彦代表の問いかけに、首相は「その通りにしたい」と応じた。
政府の現金給付は、コロナ禍の1人一律10万円の特別定額給付金が行われた20年度以降、計14事業を数える。給付金事業では申請書の印刷費や郵送費など膨大な事務費がこれまでも国会で批判されてきた。そこで、本紙は担当する内閣府への取材や会計検査院の報告書などから14事業の事務費を集計。決算額が確定していない事業では、予算額を使用した。
8日、自民党の両院議員総会後、首相官邸で記者の質問に答える石破茂首相=芹沢純生撮影
事務費が最も大きかったのは、計12兆6790億円を配った特別定額給付金で、912億円かかった。2024年に岸田文雄政権が実施した定額減税(1人当たり4万円)と同時に行われた事業では、非課税世帯などへの給付計6846億円に対し、事務費は690億円だった。
◆「減税」にもデメリットの例が
内閣府の担当者は本紙の取材に「事務費に加え、自治体から不満の声があることは知っているが、受給者からは高く評価する声もある」と答えた。
7月の参院選で与党が現金給付を訴えてきた一方、野党各党は消費税減税を主張してきた。コロナ禍のドイツや英国のように、減税後に一部商品の値段が想定通りに下がらなかったり、税率変更によるレジシステムの改修費が発生したりするなど消費税減税にもデメリットはある。
第一生命経済研究所の熊野英生氏は「物価高対策としての給付と減税が、費用対効果などを含めて本当に妥当なのかどうか吟味する必要がある」と指摘する。
8日、自民党の両院議員総会後、首相官邸で記者の質問に答える石破茂首相=芹沢純生撮影
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