厚生年金を “年間240万円以上” もらってる人はいったいどのくらいいるのか? みんなの平均月額も確認
年金振込通知書のチェックポイントは?
厚生年金を “年間240万円以上” もらってる人はいったいどのくらいいるのか? みんなの平均月額も確認
お盆を控え、帰省や旅行の計画を立てている方も多いのではないでしょうか。夏の賑わいを感じる一方で、老後の生活資金について漠然とした不安を抱えている方もいるかもしれません。
公的年金は、老後を支える重要な柱ですが、その仕組みや実際の受給額について正確に理解している人は少ないのが現状です。
日本の年金制度は国民年金と厚生年金の2階建て構造になっており、加入状況によって受給額に大きな差が出ます。
この記事では、複雑な年金制度の仕組みをわかりやすく整理し、厚生労働省が公表した最新データをもとに、実際の受給額がどのくらいなのか、具体的な数字を交えて解説します。ご自身の将来設計を考えるきっかけとしてご活用ください。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
日本の公的年金制度の基本構造
日本の公的年金制度は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。
それぞれの基本的な仕組みを整理してみましょう。
国民年金(1階部分):加入対象・保険料・受給額
・加入対象:日本に住む20歳以上から60歳未満の全ての人が原則加入
・年金保険料:全員一律(※1)
・老後の受給額:40年間欠かさず納めれば満額(※2)
※1 国民年金保険料の月額:2025年度 1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2025年度 6万9308円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者
厚生年金(2階部分):加入対象・保険料・受給額
・加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入
・年金保険料:収入に応じて決まり(※5)、給与からの天引きで納付
・老後の受給額:加入期間や納めた保険料により個人差あり
・被保険者:第1号~第4号に分かれる(※6)
※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
次章では、それぞれの平均年金月額を、厚生労働省の資料をもとに見ていきます。
シニア世代の「平均年金月額」を確認 国民年金と厚生年金の平均受給額は?
厚生労働省年金局が公表した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金と国民年金の平均的な年金月額を確認してみましょう。
厚生年金・国民年金の平均年金月額(2023年度末現在)
厚生年金の平均年金月額
・男女全体:14万6429円
・男性:16万6606円
・女性:10万7200円
(国民年金部分を含む)
※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。
国民年金の平均年金月額
・男女全体:5万7584円
・男性:5万9965円
・女性:5万5777円
国民年金については、保険料が全国一律で設定されているため、受給額に大きなばらつきは出にくくなっています。その影響もあってか、平均的な月額は男女問わず5万円台にとどまっています。
なお、2025年度における国民年金の満額(1人分)は月額6万9308円とされていることから、国民年金のみで年間240万円(月額20万円)以上の年金を確保するのは、かなり難しいでしょう。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せされる形で支給され、加入者の収入に応じて保険料・受給額が変動する仕組みです。そのため、年金額には個人差が出やすいのが特徴です。
では、実際に「月額20万円以上」の年金を受け取っている人はどのくらい存在するのでしょうか。
厚生年金を「月額20万円以上」受給しているのは全体の何割?
本章では、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額分布を見てみましょう。
厚生年金の受給額ごとの受給権者数
国民年金を含む厚生年金で「月額20万円以上」の年金を受け取っている人の割合は、全受給者のうち16.3%にとどまっています。つまり、およそ8割以上の人が月額20万円未満で暮らしているというのが実情のようです。
この数字は、あくまで厚生年金を受給している人のなかでの割合です。仮に、国民年金のみを受給している方々も含めて全体を見渡すと、「月額20万円以上」の年金を得ている人の割合は、さらに低くなるものと推察されます。
「年金振込通知書」のチェックポイント
公的年金の支給額は、毎年度、物価や現役世代の賃金動向などをもとに見直されています。
2025年度については、4月分から年金額が改定され、前年度比で1.9%の増額となりました。
年金は2カ月分を後払いで受け取る仕組みのため、実際に増額された金額が振り込まれるのは「6月13日(金)」からになります。
なお、年金を金融機関で受け取る場合は、支給にあわせて「年金振込通知書」が送付されます。
年金振込通知書は以下の内容が記載されています。
年金から天引きされる税や社保が記載される「年金振込通知書」
(1)年金支払額
1回に支払われる年金額(控除前)
(2)介護保険料額
年金から天引きされる介護保険料額
(3)後期高齢者医療保険料、国民健康保険料(税)
※特別徴収される場合に記載される
年金から天引きされる「後期高齢者医療保険料」または「国民健康保険料(税)」
(4)所得税額および復興特別所得税額
年金支払額から社会保険料(※1)と各種控除額(※2)を差し引いた後の額に5.105%の税率をかけた額
※1 社会保険料:社会保険料とは、特別徴収された介護保険料、後期高齢者医療保険料または国民健康保険料(税)の合計額
※2 各種控除額:扶養控除や障害者控除など
(5)個人住民税額および森林環境税額
年金から特別徴収(天引き)される個人住民税額および森林環境税額
(6)控除後振込額
年金支払額から社会保険料、所得税額および復興特別所得税額、個人住民税額および森林環境税額を差し引いた後の振込金額
(7)振込先
年金が振り込まれる金融機関の支店名(※営業所、出張所などを含む)
(8)前回支払額
令和3年10月から、年金振込通知書に前回の定期支払月に支払った金額
各支払期における天引き額(特別徴収額)は、変更される可能性があるため、注意が必要です。
この振込通知書は基本的に年1回送付され、振込額や口座に変更がなければ、その後の支給月には通知は届きません。
ゆとりのあるセカンドライフを目指して
この記事では、公的年金制度の2階建て構造から、厚生年金と国民年金の平均受給額、そして厚生年金の受給額分布まで、具体的なデータを用いて解説しました。
特に「月20万円以上の年金受給者は全体の16.3%」という事実は、公的年金だけで豊かな老後を送ることが難しい現実を示しています。
老後生活を安心して送るためには、公的年金に加えて、ご自身で資産を形成していく自助努力が欠かせません。若いうちから資産運用を始めたり、iDeCoやNISAを活用したりするなど、将来を見据えた行動を今から起こすことが大切です。
この記事が、皆さまの将来のマネープランを見直すきっかけとなれば幸いです。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「年金の繰下げ受給」
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・日本年金機構「年金振込通知書」
・日本年金機構「加給年金額と振替加算」