【粋な東京街歩き】老舗の新定番を求めて“浅草”へ
撮影・黒川ひろみ 文・池田祐美子
浅草寺の門前町として世界中からツーリストが訪れる観光地。江戸から続く、この地を代表する老舗の新たな試みが人気を博しています。
【粋な東京街歩き】老舗の新定番を求めて“浅草”へ
《梅園》
浅草を代表する老舗甘味処のひんやりおやつ
浅草寺の別院・梅園院の一角で1854年に創業した甘味処。初代から継承されている元祖あわぜんざいは、石臼でもちきびをついて作るのも当時のまま。“梅園といえばあんこ”を自負するなめらかな舌触りのこしあんは、注文ごとに練り上げる。今春、復刻版として登場したのが、こしあんアイスと北海道産の粒小豆を使った小倉アイス。やさしい甘さと懐かしい風味で、散策途中のスイーツ補給におすすめ。
《七味唐辛子本舗 やげん堀 新仲見世本店》
1625年創業、徳川家御用達の七味唐辛子
今年、創業400年を迎えた、江戸時代から続く七味唐辛子の店。徳川家光への献上品としても重宝された、由緒正しき江戸名物だ。その場で7種類のスパイスを調合して販売するスタイルは、目でも楽しませてくれる。今春お目見えした〈七味唐辛子えびせんべい〉は、お茶請けにもお酒との相性もいい。カリッと軽やかな食感でえびの旨みが口中に広がり、唐辛子のほどよい辛味が後から追いかけてくる。
《常盤堂 雷おこし本舗 雷門本店》
参拝土産に雷おこしのニューウェーブを
浅草寺の総門である雷門の真横に位置し、江戸時代末期から伝統銘菓の雷おこしを作り続ける。230年受け継がれた味を大切にしつつ、現社長が取り組んだのが今の時代に合わせた食感やフレーバーだ。カリッとハードな食感から、サクッと柔らかく、なめているととけるような仕上がりに。キャンディ包みがかわいらしい、ひと口サイズのおこし〈チュララ〉は、若い世代や外国人にファンを増やしている。
《荒井文扇堂》
普段使いにも合う、二段張り扇子が人気
江戸の粋を表現した扇子の美しさに、通りを行き交う人が足を止める。明治時代から続く店の暖簾を守るのは、5代目の主人・荒井良太さん。紙選びやデザイン、仕立ても手がける。遊び感覚で作ったという二段張り扇子は色違いの2種の和紙を張ったもの。和紙の間の隙間を風が抜けるイメージで、和装に限らず普段使いにもしっくりとなじむ。涼やかに夏を過ごすアイテムに取り入れてみてはいかが?
せっかく来たなら「浅草演芸ホール」へ
浅草演芸ホールで江戸気分を味わう
江戸時代に庶民の娯楽の場として親しまれたのが、落語や講談などを気軽に楽しめる寄席。都内に4軒ある劇場の中で、最も広い340席を備えるのが「浅草演芸ホール」だ。初めてだと躊躇するが、落語を聞いたことがなくても予約なしで利用がOK。自分の都合で入退場も可能だ。仕事帰りにふらりと寄るなら「夜割」というお得な料金プランもある。今春、真打に昇進した5名の落語家をとっかかりに、足を運んでみるのもいい。
『クロワッサン』1145号より