「年金だけで生活できます」そんな人は何割いるのか?65歳以上「無職夫婦世帯」の貯蓄額や生活費つき
定年後に「増える出費・減る出費」の一覧
「年金だけで生活できます」そんな人は何割いるのか?65歳以上「無職夫婦世帯」の貯蓄額や生活費つき
「現役引退後は悠々自適に年金生活を楽しみたい」と思っている方もいるでしょう。理想を叶えるためには、それなりの年金収入が必要です。
2025年7月に公表された厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給だけで100%生活できている高齢者世帯は43.4%であることがわかりました。
つまり半数以上の高齢者世帯が、年金収入だけで生活できていないことになります。
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
実際に仕事を引退している「65歳以上・無職の夫婦世帯」の家計収支を見ていきましょう・
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【65歳以上】無職夫婦世帯「ひと月の生活費」は平均でいくらか
一般的に、老齢年金の受給開始年齢は65歳となっています。60歳から65歳までのタイミングで、仕事から完全に引退する人も多いでしょう。
総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、標準的な65歳以上の無職夫婦世帯の家計収支は次のとおりとなりました。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)
収入平均:月額25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円
支出平均:月額28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
・食料:7万6352円
・住居:1万6432円
・光熱・水道:2万1919円
・家具・家事用品:1万2265円
・被服及び履物:5590円
・保健医療:1万8383円
・交通・通信:2万7768円
・教育:0円
・教養娯楽:2万5377円
・その他の消費支出:5万2433円
■うち非消費支出:3万356円
・直接税:1万1162円
・社会保険料:1万9171円
赤字平均:3万4058円
・ひと月の赤字:3万4058円
・エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
・平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%
平均的な世帯の場合、平均して3万4058円の赤字となっているようです。
収入25万2818円のうち、公的年金などの社会保障給付は22万5182円。一方で支出合計は28万6877円にのぼります。
毎月3万4058円の赤字が発生するのであれば、年金以外に貯蓄の取り崩しなどで不足分を補填していくことになるでしょう。
もちろん生活費は世帯によって大きく異なります。ただし「定年退職すると生活費は減るだろう」と楽観視するのは少々危険です。退職後に増える出費もあることを押さえておきましょう。
定年後に「増える出費・減る出費」の一覧
定年退職を迎えたあと、減る出費もあれば増える出費もあります。
公益財団法人 生命保険文化センターによると、以下のような出費が挙げられます。
定年後に増える出費の例
・近所づきあいの交際費
・趣味や生きがいのための費用
・配偶者の国民年金保険料(配偶者が60歳になるまで)
・国民健康保険料
定年後に減る出費の例
・住宅ローン(完済する場合)
・会社員としての交際費・食費
・スーツ、ワイシャツ、ネクタイなどビジネス被服代
・子どもの教育・扶養費用(成人・独立の場合)
・厚生年金保険料
・雇用保険料
・健康保険料
定年後も関係なく発生する出費の例
・食費や光熱・水道代など生活費
・家賃
・住居費(固定資産税、リフォーム費用など)
・生命保険や損害保険の保険料
・介護保険料
必ずしも定年退職と連動するわけではない費用もありますが、盲点とならないようしっかり予習しておきたいですね。
では、今の65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)はどれほどの貯蓄を備えているのでしょうか。
【65歳以上】無職夫婦世帯はどれほど貯蓄があるのか
世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)について、平均的な貯蓄額を総務省の統計から見ていきます。
世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄の種類別貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯)
世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の貯蓄額は、最新データで2504万円となっています。
直近のトレンドを見ると、徐々に増加傾向にあることがわかります。
・2018年:2233万円
・2019年:2218万円
・2020年:2292万円
・2021年:2342万円
・2022年:2359万円
・2023年:2504万円
なお、資産の内訳としては通貨性預貯金(※主に普通預金)が多くなっているものの、有価証券の割合も過去より高まっています。
ただし貯蓄全体の約6割が、比較的リスクが低い預貯金として保有されているようです。
65歳以上の貯蓄事情は、定年退職金や相続の有無なども大きいですが、現役時代からコツコツ積み上げてきたものも大きいでしょう。
続いて、より確実な老後の収入源となる「公的年金」について、今のシニア世代がどの程度受給できているかも見ていきます。
老齢年金はいくら?厚生年金・国民年金の平均事情
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、平均的な老齢年金の受給額をみていきます。
生活費や貯蓄額と同様に、個人差が大きいことに留意しましょう。
【老齢年金世代】国民年金・厚生年金「平均月額と個人差」
国民年金(老齢基礎年金)の平均
・〈全体〉平均年金月額:5万7584円
・〈男性〉平均年金月額:5万9965円
・〈女性〉平均年金月額:5万5777円
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均
・〈全体〉平均年金月額:14万6429円
・〈男性〉平均年金月額:16万6606円
・〈女性〉平均年金月額:10万7200円
国民年金のみを受給する場合は男女ともに5万円台、厚生年金を上乗せで受給する場合は男性で16万円台、女性で10万円台となりました。
現役時代の収入や加入年数によって大きく変わるため、ねんきんネットやねんきん定期便を活用して、世帯単位で把握しておきたいですね。
まとめ:老後にむけて
年金だけで100%生活できる世帯は、全体の43.4%のみです
出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
若い世帯ほど、年金に頼るという考え方が少なくなっているのではないでしょうか。
今の65歳以上世帯の貯蓄額も確認しましたが、順調に貯蓄を進められるかどうかは世帯状況により異なります。
できるだけ早いうちから、将来に向けて計画を立てていきましょう。老後の対策として、やみくもに貯蓄をするのはあまりおすすめできません。
・年金や退職金の見込額を知る
・老後の支出額をシミュレーションする
・足りない金額と老後までの期間を逆算し、月々の積立額を決める
このような目標設定が大切になるでしょう。
参考資料
・総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)」
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
・公益財団法人 生命保険文化センター「セカンドライフの生活費は現役時代とどう違う?」