アウディ新型「Q5」日本導入、問われるSUVの価値

アウディ ジャパンは、2025年7月24日にミドルサイズSUVの「Q5/Q5スポーツバック」と、その高性能モデルとなる「SQ5/SQ5スポーツバック」の最新モデル日本導入を発表した(写真:三木 宏章)
ドイツ・アウディを手がけるアウディ ジャパンは、2025年7月24日より、フルモデルチェンジを受けたミドルサイズSUVの新型「Q5」シリーズの国内販売を開始した。
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2009年に登場した第1世代以来、都会的で洗練されたデザインや、スポーティで上質な走りなどが好評のQ5シリーズ。第3世代となる新型では、次世代ハイブリッドシステム「MHEV plus」の採用がトピックだ。独自の48Vマイルドハイブリッド機構は、エンジン出力をアシストするだけでなく、一定状況下では100%電気で走るEV走行も実現。走りのパフォーマンスと燃費性能を両立するという注目の次世代内燃機関を採用する。
また、より洗練されたイメージとなった外観や、実用性と快適性を向上させたインテリアや荷室など、各部をアップデートしていることも注目点。ここでは、そんな新型Q5シリーズについて、プレス向け発表会で実際に現車を見た印象も含め、その新たな魅力などについて紹介する。
Q5の歴史と新型のラインナップ

初代および2代目のQ5(写真:三木 宏章)
Q5シリーズは、前述のとおり、第1世代が2009年に国内デビュー。世界的に人気の高い全長5000mm未満のミドルサイズSUVのなかでも、スタイリッシュな内外装や上質な走りなどで高い評価を受け、アウディ ジャパンによれば、「グローバルで160万台」を販売。また、各部をより進化させ、2017年に国内導入された第2世代も、グローバルの販売台数「110万台」を記録し、人気モデルとしての地位を確立する。
その最新モデルとなるのが第3世代のQ5シリーズだ。ちなみに、本国ドイツでは2024年9月に発表されているから、日本へは約1年遅れの導入となる。

日本導入されるQ5およびQ5スポーツバック(写真:アウディ ジャパン)
ラインナップは先代を踏襲。SUVスタイルのスタンダード仕様「Q5」と、クーペ風ボディの「Q5スポーツバック(Sportback)」、それらのスポーツグレードとなる「SQ5」「SQ5スポーツバック」といった主に4タイプを用意する。大きな特徴は、パワートレインを一新したことだ。アウディが新世代内燃機関と呼ぶ「PPC(プレミアムプラットフォームコンバッション)」を初採用。これは、冒頭でも述べた「MHEV plus」という最新のマイルドハイブリッドシステムを搭載していることがポイントだ。
一般的に、マイルドハイブリッドシステムは、発進時や加速時などにエンジンの出力をアシストするといった役割が主だ。トヨタ「プリウス」のようなハイブリッド車と違い、100%モーターだけで走行するEV走行に対応しないことがほとんど。そのぶん、モーターやバッテリーなどを小型のユニットにすることが可能で、国産車でも、軽自動車やコンパクトカーなど、ハイブリッド・ユニットの搭載スペースが限られている車種に採用されることが多い。
マイルドハイブリッドながらEV走行を実現

マイルドハイブリッドシステムについてのプレゼンテーション資料(写真:三木 宏章)
一方、アウディの新システムは、マイルドハイブリッドシステムながら限定条件下でのEV走行も可能としている。バッテリーの充電状況が良好であれば、例えば、市街地の信号待ちから発進する際など、ゆっくりとアクセルを踏むことでエンジンが始動せず、モーターだけの動力で走行することが可能だという。アウディ ジャパンによれば、その後、車速が伸びるとエンジンが始動し、その動力で走行するが、その際「ドライバーが気づかないほど切り替えがスムーズ」なのだという。
EV走行もできるマイルドハイブリッド。従来、あまり例のないシステムだが、その秘密は「48V」システムを採用していることにあるようだ。近年、欧州メーカーの多くが採用するのが48Vのマイルドハイブリッド。これは、電動モーターなど構成部品の電圧を48Vに設定した仕様で、国産車のマイルドハイブリッド車のほとんどが12V仕様なのに対し、より高い電圧となる。つまり、より高い電力の供給が可能なため、電動モーターなどのユニットに、よりハイパワーな仕様を使えるということになる。

Q5のエンジンルーム(写真:三木 宏章)
実際にQ5の場合、アウディによると「システムを構成するPTG(パワートレインジェネレーター)は、最大230Nmの追加駆動トルクと最大18kW(24HP)の出力を生成する」という。また、ハイブリッドシステムには、減速時にバッテリーに充電を行う回生機能もあるが、PTGでは「最大25kWのエネルギーを回生する」能力も持つ。出力が高いだけでなく、使った電力を補う能力も高いというわけだ。
なお、新型が搭載するパワートレインは、Q5とQ5スポーツバックの両方に、204PSを発揮する2.0L・4気筒ガソリンターボ車と2.0L・4気筒ディーゼルターボ車を設定。また、SQ5とSQ5スポーツバックには、より大排気量の3.0L・V型6気筒ガソリンターボを搭載し、367PSもの最高出力を発揮する。そして、これらすべてのパワートレインにMHEV plusを搭載する。つまり、Q5の全タイプが発進時などにEV走行ができ、高い燃費性能を実現するのだ。

Q5のリアビュー(写真:三木 宏章)
しかも、加速時などにエンジンをアシストするマイルドハイブリッド本来の機能が、俊敏な加速性能などにも貢献する。新型Q5シリーズでは、これらに加え、独自の4輪駆動機構「クワトロ(quattro)」や7速Sトロニックトランスミッションなどもマッチング。定評のある上質で洗練された走りにスポーティさをプラスしたうえに、燃費性能も良好という、まさに多様な魅力を備えた新世代のハイブリッドSUVに仕上がっているといえるだろう。
外観について

新型Q5のサイドシルエット(写真:三木 宏章)
一方、エクステリアでは、より立体的で彫りの深いボディラインを採用。ヘッドライトとテールライトをつなぐショルダーラインを直線的にすることで、車両をより長くみせるとともに、力強くダイナミックなシルエットを演出する。また、アウディ車の特徴といえるシングルフレームグリルはより幅広くなった印象。その下に位置するエアインテークもより大型となり、シャープな造形のヘッドライトとのマッチングで、より個性的で洗練されたフェイスデザインに貢献する。
一方、リヤデザインは、高い位置にあるリヤバンパーや鋭く傾斜したリヤウィンドウにより、シャープでスポーティな印象を強化する。また、ボディラインと一体化したLEDリヤコンビネーションライトには、オプションでデジタルOLEDリヤライトを選択することも可能だ。これは、通常のテールライトとしての機能に加え、好みの点灯パターンを選択できる「スタティックテールライトシグナチャー」機能も搭載した仕様。また、発進時などに、後方から近づく車両に自車の存在を知らせるコミュニケーションライト機能なども採用する。

Q5のリアセクション(写真:三木 宏章)
新型では、ほかにも、「リヤウィンドウプロジェクションライト」も追加(タイプ別設定)。これは、ブレーキ時にリヤウィンドウ上部にあるルーフスポイラーの下にグラフィックを投影することで、ブレーキライトの警告表示を強調する機能だ。新型では、こうした最新技術を用いた灯火系ユニットを採用することで、さらなる安全性能の向上も図っている。
なお、ボディサイズは全長4715mm×全幅1900mm×全高1655mm。先代モデルと比べ全幅は同じだが、全長を20~35mm伸ばし、逆に全高は10mm低く設定する。新型では、これらディメンションの変更により、全体のフォルムをよりスポーティに演出。また、後述する室内の居住性や使い勝手の向上などに貢献している。
内装について

Q5のインテリア(写真:三木 宏章)
インテリアでは、運転席と助手席の前に「MMIパノラマディスプレイ」を設置する。搭載する11.9インチの「アウディバーチャルコックピット」と、14.5インチの「MMIタッチディスプレイ」は、インテリアと見事にマッチングするデザインを採用。コックピットにラウンジのような居住性と多用途に対応する高い実用性を両立する。また、オプションには、助手席専用の10.9インチ「MMIパッセンジャーディスプレイ」も用意。助手席のパッセンジャーが、ドライバーの視線を妨げることなく、インフォテインメントシステムを自由に使用することを可能とし、コックピットに座る2人それぞれの快適性などにも考慮する。
シート素材には、全タイプにレザー/アーティフィシャルレザー(合成皮革)を標準装備。新型では、シートの座面から天井までがより長くなり、足下スペースも拡張したことで、より快適な居住性を実現する。

Q5の後席(写真:三木 宏章)
後席には、3人が快適に座ることができるリヤベンチシートを採用。座面の前後移動や背もたれのチルト(傾斜)調整が可能なことで、乗員の体格や好みに応じたセッティングが可能だ。また、可倒式の背もたれをすべて前方に倒すことで、荷室をより広くフラットな空間にすることも可能だ。スタンダードのQ5では、通常の5人乗り仕様で荷室容量520Lを確保。リヤシートを倒すと最大1473Lまで拡大することができる。また、Q5スポーツバックは、通常の5人乗り仕様で荷室容量515L、リヤシートを倒せば最大1415Lの荷室スペースを作ることができる。
さらに新型では、センターアームレスト下の収納スペースを先代よりも広くしたほか、フロントセンターコンソールには15Wの充電パワーを持つ冷却機能付きワイヤレス充電トレイも装備。USB-Cポートも前部と後部に各2カ所、計4カ所に備えるなどで、スマートフォンの充電などに考慮したユーティリティの向上も図っている。
スタート価格は760万円から

Q5とともにA6 e-tronの日本導入が発表された「Audi New Models Special Debut Show」(写真:三木 宏章)
新型の価格(税込み)は、スタンダード仕様が、「Q5 TFSI quattro 150kW advanced(ガソリン車)」で760万円、「Q5 TDI quattro 150kW advanced(ディーゼル車)」が788万円だ。また、スポーツバック仕様は、「Q5 Sportback TFSI quattro 150kW advanced(ガソリン車)」が795万円、「Q5 Sportback TDI quattro 150kW advanced(ディーゼル車)」が823万円だ。さらに、スポーツグレードの「SQ5」は1023万円、「SQ5 Sportback」が1058万円となっている。
さらに、新型Q5シリーズの発売を記念した限定モデル「エディション ワン(edition one)」も設定。これは、Q5とQ5スポーツバックのディーゼル車をベースに、スポーティな装備の「S line(エスライン)」パッケージの装備を採用。マグネシウムグレーのフロントエアインレットや2色の色分けを施した21インチのアルミホイールなど、各部に専用装備を施した仕様だ。価格(税込み)は、「Q5 edition one」が919万円、「Q5 Sportback edition one」で954万円。グローバルでの販売台数が2タイプ合計300台限定という、まさに超レアな特別仕様となっている。
新型Q5シリーズ投入でどうなるのか

Q5スポーツバックのラゲージスペース(写真:三木 宏章)
以上が新型Q5の概要だ。第3世代となった最新モデルでは、とくに、先に述べたとおり、新しいマイルドハイブリッド機構「MHEV plus」を採用したことにより、どのように走りがアップデートされ、また燃費性能が向上しているのかが注目だ。プレミアムなSUVながら、比較的運転しやすいボディサイズ、ファミリー層でも快適に乗れる居住性などに定評があるモデルだけに、新型に対し、市場がどのような反応を示すのかが今後注目だといえるだろう。