トヨタライズに何があったのか? 販売から6年経ってもSUV販売NO.1のワケ

ライズの全長は3995mm、全幅も1695mmと、5ナンバー枠に収まるコンパクトなボディサイズ。最小回転半径も4.9〜5.0mと軽自動車並み

 トヨタライズは、2019年11月の発売から6年が経とうとしているのに、2025年1~7月の新車販売ランキングでSUV販売NO.1となぜこんなに売れているのか? そこで、売れている秘密を探っていきたい。

文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部、ダイハツ

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1カ月平均約7910台を販売する強さの秘密は?

ライズの全長は3995mm、全幅も1695mmと、5ナンバー枠に収まるコンパクトなボディサイズ。最小回転半径も4.9〜5.0mと軽自動車並み

 今はSUVの人気が高く、国内で新車として売られる小型/普通乗用車の約35%を占める。特に全長を4500mm以下に抑えたコンパクトSUVの販売が好調で、SUV全体に占める割合は50%を超えている。

 なかでもコンパクトSUVはSUVの販売ランキングで上位に入る。2025年1~7月の登録台数が最も多いSUVは、トヨタライズで1か月平均は約7910台だった。2位はトヨタヤリスクロスで約7630台、3位はトヨタカローラクロスで約5580台、4位はホンダヴェゼルで約5350台と続く。

 ここで注目されるのは、2025年1~7月のSUV販売1位になったライズだ。ライズの発売は2019年11月だから、すでに5年9か月が経とうとしている。販売2位のヤリスクロスは2020年8月、3位のカローラクロスは2021年9月、4位のヴェゼルは2021年4月で、ライズはこれらの車種よりも設計が古い。それなのにSUV販売ランキングで1位になった。これは凄いことだ。

価格は1.2Lガソリン車が2WDの180万7000~215万2700円。1Lターボは4WDのみで、207万9000~241万3400円。ハイブリッドは226万3800~244万2000円

 ライズの販売が好調な理由として、衝突試験に関する認証不正問題で、ライズハイブリッドが出荷を停止させたことが考えられる。2023年5月に停止して、2024年7月に再開した。その反動で2025年に増えたのではないか。

 確かに出荷停止でライズは登録台数を下げたが、2023年の1か月平均は約5420台で、対前年比は78%だった。2024年の1か月平均は4270台で、対前年比は79%だ。

 出荷停止で売れ行きが落ち込んだのは事実だが、1か月平均4000台以上を安定的に販売してきた。しかも前述の通り、2024年7月には出荷を再開したから、2025年には正常に戻っていた。出荷停止の反動は既に薄れていた。

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 そうなるとライズの高人気は、商品力によるところが大きい。最も注目されるのはボディサイズだ。全長は3995mm、全幅は1695mmに収まり、5ナンバー車になる。

 ちなみに5ナンバーサイズのSUVは、ライズと姉妹車のダイハツロッキー、スズキのクロスビーとジムニーシエラ&ノマドのみだ。ヤリスクロス、カローラクロス、日産キックス、マツダCX-3などは、全長は短くても全幅が1700mmを超えて3ナンバー車になる。「5ナンバーサイズのSUVに乗りたい」と考えるユーザーにとって、ライズは貴重な選択肢だ。

 また外観が水平基調のデザインだから、ボンネットが少し見えて、ボディの先端や全幅も分かりやすい。側方や後方の視界も優れ、縦列駐車や車庫入れをしやすい。最小回転半径は4.9~5.0mだから、小回りの利きも良好だ。

 その一方でグリルのサイズが大きなフロントマスクなど、ボディはコンパクトで運転しやすくても外観の存在感は強い。RAV4に似た野性味のあるアウトドア感覚も備える。SUVにはカッコ良さも求められ、ライズではそのニーズも満足させられる。

 そしてライズは、SUVのなかでは価格が安い。直列3気筒1.2Lノーマルガソリンエンジンを搭載するグレードの場合、ベーシックなX・2WDは、衝突被害軽減ブレーキやLEDヘッドランプを標準装着して価格が180万700円に収まる。

ライズハイブリッドZグレードの内装。先進的なデジタルメーターなどはないが、スイッチやディスプレイなどのレイアウトが上手くまとめられており、使いやすいコクピットだ

 買い得なG・2WDは、アルミホイールやエアコンのオート機能などを備えて195万8000円だ。ヤリスクロスでは、最も安価なノーマルガソリンエンジンのXでも204万6000円だが、ライズなら充実装備の買い得グレードが200万円以下に収まる。

 この価格は、コンパクトカーのヤリスに1.5Lノーマルガソリンエンジンを搭載するG・2WDの197万4500円と同等だ。ライズはSUVだが、同サイズのコンパクトカーと同等の出費で購入できる。

 ライズには、エンジンが発電を行ってモーターが駆動するストロングハイブリッドも用意される。Zグレード同士で価格をノーマルガソリンエンジンと比べると、ハイブリッドの価格アップは28万9300円に収まる。

Sペダルはアクセルペダルだけで加減速をコントロールできるシステム。アクセルを離すと減速し、ブレーキランプが点灯

 一般的にトヨタをはじめとするハイブリッドの価格は、ノーマルガソリンエンジンに比べて35万~60万円の上乗せだから、ライズではハイブリッドも割安だ。しかもライズハイブリッドでは、購入時に収める税額がノーマルガソリンエンジンよりも約5万円安いため、実質価格差は約24万円に縮まる。

 そのためにライズでは、販売総数の約55%をハイブリッドが占める。ハイブリッドを割安に設定したことも、ライズが人気を得た理由だ。

■トヨタライズの価格とラインナップ

X:2WD(1.2L)=180万7000円、4WD(1Lターボ)=207万9000円

G:2WD(1.2L)=195万8000円、4WD(1Lターボ)=223万5200円

Z:2WD(1.2L)=215万2700円、4WD(1Lターボ)=241万3400円

Gハイブリッド(1.2L+モーター):2WD=226万3800円

Zハイブリッド(1.2L+モーター):2WD=244万2000円

ディーラーの営業マンに聞く、ライズが売れてる理由

小さいお子さんがいるファミリーには使いやすい

 ライズの人気が高い理由をディーラーの営業マンに尋ねると、以下のように返答された。

 「ライズはボディが小さいが、車内は意外に広い。お客様がヤリスクロスも試乗され、後席や荷室の使いやすさでライズを選ぶことも多い。またライズは納期が全般的に短い。ハイブリッドを含めて、常に3か月前後で納車できる。ヤリスクロスは納期が約6か月で、改良が実施される時は、4か月ほど前から受注が止まることもある。ダイハツが生産する(OEMの)ライズとルーミーは、安定して販売できる」。

 販売店が指摘した通りライズは実用性が高い。例えば身長170cmの大人4名がライズに乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半だから、広々感はないものの後席に座る乗員の足が前席の下にスッポリと収まる。荷室の機能も含めて、ファミリーカーとして使う時の居住性は、3ナンバー車のヤリスクロスと同等かそれ以上だ。

前後席間距離も900mmあり膝元空間も余裕がある

 また今のトヨタ車は全般的に納期が長く、受注を停止している車種も散見されるが、ガソリン車は2~3か月、ハイブリッド車は3~4か月程度と納期は短いほうなので購入しやすいことも人気の理由だろう。

 以上のようにライズは、5ナンバーサイズのボディによる運転のしやすさ、コンパクトな割に広く実用的な室内空間、SUVながらヤリスなどのコンパクトカーと同等の求めやすい価格設定、適正な納期など、さまざまな理由に基づいて好調に売れている。

荷室長755mm、荷室幅1000mm、荷室高865mm、荷室容量369LとコンパクトSUVクラスではトップレベルの大容量を誇る。2段可動式のデッキボードや後席を倒してフラットなスペースにすることで、多様な荷物に対応

 日本のユーザーに寄り沿う良品廉価によりクルマ造りは、長年にわたり軽自動車を手掛けてきたダイハツならではだろう。ライズを見ると、ダイハツが今のトヨタの欠点を効果的に補っていることが理解できる。

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