【10年ひと昔の新車】ランドローバー レンジローバーの「世界で最も豪華で快適なSUV」は健在だった
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ランドローバー レンジローバーだ。

ランドローバー レンジローバー(2012年:4代目フルモデルチェンジ)

スタイリングは現行型と似ているが、より滑らかで流線的になった。空気抵抗係数(Cd値)は0.34に向上している。
レンジローバーが第4世代にフルモデルチェンジされた。来年(編集部註:2013年)には導入が予定されている日本仕様でも、車名からヴォーグは外される。SUVとしては世界初のオールアルミニウム製モノコックボディ構造を採用し、現行型から大幅に軽量化されたことにより、走りのパフォーマンスはどう変わったのだろうか。
従来型のレンジローバー ヴォーグといえば、数あるSUVの中にあっても別格のプレステージ性をアピールする1台だ。それは同時に、2.6トン(!)を超えるボディを500psオーバーを発するスーパーチャージャー付きエンジンで強引(?)に走らせるなど、環境性能などとは無縁の存在というイメージでもあった。
だが、今の時代はこうしたモデルにさえ大きな変貌を求めている――そして、2002年のデビュー以来、10年ぶりにフルモデルチェンジが行われた。
日本でも単なる「レンジローバー」へと名称が変更される模様の新型は、見てのとおり明らかに従来型の雰囲気を受け継いだルックスだ。けれども、そのボディ骨格にはSUVとしては世界初のフルアルミニウム構造が採用され、それだけで一気に180kg以上(!)も軽くなった。そのほか、シャシや駆動系、シート構造や樹脂製アッパー テールゲートパネルの採用など軽量化への取り組み個所はあらゆる部位へと及び、ガソリンモデルでの比較では最大345kgにおよぶ重量削減が果たされた。

最高級の素材を用いたインテリア。安全&快適装備も満載。ATのセレクターはユニークなダイヤル式だ。日本仕様は右ハンドルとなる。
こだわり続けてきたオフロード性能も変わらない

軽量化だけでなく多段化されたATの効果もあるのか、オンロードでもオフロードでも走りの感触は従来型よりも遥かに軽かった。
最強のスーパーチャージャー付きモデルで走り始めると、なるほどその感触は従来型よりも遥かに軽い。それもそのはずで、その0→100km/h加速タイムは、同エンジン同士でも0.8秒速い5.4秒。そこには、軽量化の効果のみならずATが6速から8速へと多段化された影響も含まれるが、新型の加速感は文句なく軽やかでスムーズだ。
オンロードでのハンドリングも、正確性と軽快感を増した一方で、今回もイヤというほどにその実力の高さを教えられたのが、歴代モデルがこだわり続けてきたオフロード性能だ。モロッコで開催された国際試乗会でのルート上には、砂丘から険しいヒルクライム、大雨が大地を削り取ったかのようなガレ場など、さまざまな種類のオフロードがタップリ用意されていた。
が、新しいレンジローバーは従来型に勝るとも劣らない逞しさで、そんなシーンを楽々と乗り切ってしまう。しかも、足まわり/駆動系のセッティングやエンジン/トランスミッションの制御を包括的に切り替える独自のシステムの「テレイン レスポンス」には、そのモード変更が自動で行われるロジックも加えられた。
レンジローバーは、ここに来て「世界で最も豪華で快適なSUV」というフレーズに、またもしっかり磨きをかけたのだった。

写真のV8ガソリン+S/Cをトップに、V8ガソリン&ディーゼル、V6ディーゼルなどを搭載。トランスミッションはいずれも8速AT。
●全長×全幅×全高:5005×1985×1865mm
●ホイールベース:2920mm
●車両重量:2520kg
●エンジン:90度V8 DOHC+S/C
●総排気量:4999cc
●最高出力:375kW(510ps)/6500rpm
●最大トルク:625Nm(63.8kgm)/2500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・105L
●JC08モード燃費:5.3km/L
●タイヤサイズ:275/40R22
●当時の車両価格(税込):1670万円