ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザック」がさらに進化! 発表されたばかりの新型「WZ-1」を氷の上や一般道で試乗して“安心感”を覚えたワケ
VRX3を上回る性能を持った新スタッドレスタイヤ「ブリザック WZ-1」
2025年9月から順次発売予定のブリヂストンの乗用車・SUV/4×4用スタッドレスタイヤ「ブリザック WZ-1」を履いたヤリスに乗り、アイス路面を試乗しました。現行モデルの「ブリザック VRX3」と比較して、どのような点が進化しているのでしょうか。本記事では、ドライ路面を試乗した様子もお届けします。

今回試したブリヂストンの乗用車・SUV/4×4用スタッドレスタイヤ「ブリザック WZ-1」
今回試したブリヂストンの乗用車・SUV/4×4用スタッドレスタイヤ「ブリザック WZ-1」気温が上がったあとで凍結するという独特の気象状況が、日本の冬道のハードルを上げています。そんな環境で競い合って育ったスタッドレスタイヤはドライ、ウエット、スノー、シャーベット、アイスなどのさまざまな路面を走り抜けることができるようになりました。
【画像】「ブリザック WZ-1」のトレッドパターンと、WZ-1を履いたクルマで氷上やドライ路面を走行した様子を見る(21枚)
その中でも、2021年に登場したブリヂストン「ブリザック VRX3」は、ツルツルのアイス路面でもしっかりグリップし、ドライ路面でも正確なハンドリングで安心して乗れるスタッドレスタイヤのお手本のようなタイヤといえます。
ここまで性能が上がればもう十分だと思っていましたが、なんとそのVRX3を上回る性能を持った新スタッドレスタイヤ「ブリザック WZ-1」が誕生したのです。
ENLITEN(エンライトン)というブリヂストン独自の商品設計基盤技術により、タイヤの基本性能を徹底的に鍛え磨き、全方位で性能を引き上げ革新的に進化させています。さらに究極のカスタマイズということで、エッジを効かせるためにあるパートの性能を引き上げることもしています。
筆者(こもだきよし)は発泡ゴムの進化が今回の性能アップの主役ではないかと読んでいます。これまでも発泡ゴムの進化に合わせてトレッドパターンを工夫し、パターン剛性をデザインしてきましたが、今回は一気に飛躍した感じです。
タイヤとアイス路面の間に生まれる水膜が滑る原因と言われていますが、この水膜を発泡ゴムの細かい気泡で吸水していました。今回採用した「Wコンタクト発泡ゴム」は、残った水をさらに親水性向上ポリマーでつかむことで氷上でのグリップを向上させているというのです。
「VRX3」で十分と思いきや、比べると「WZ-1」の高いグリップ性能が光る
ここは目に見えない世界なので、実際に試すことでしかその性能を確認する方法がありません。今回は、アイススケートリンクを借りて現行型であるVRX3と、新しいWZ-1の比較試乗をしました。試験車両はトヨタ「ヤリス」でタイヤサイズはともに185/60R15 84Qです。

「ブリザック WZ-1」を履いたヤリスでスケートリンクを試乗中の様子。VRX3と比較すると、滑った状態でも“よく粘る”のが体感できた
「ブリザック WZ-1」を履いたヤリスでスケートリンクを試乗中の様子。VRX3と比較すると、滑った状態でも“よく粘る”のが体感できた最初は現行型ブリザックのVRX3からスタートします。アイス路面でもビクビクすることなく走れ、期待通りに曲がります。止まるときも「おっとっと」と焦ることなく安心感があります。
一方、新型ブリザックのWZ-1に乗ると、ゼロ発進からグリップが良いのがわかります。これなら降雪地帯の信号発進でもタイヤが空転する頻度が減りそうです。また、加速途中のアクセルコントロールもしやすかったです。
ブレーキ性能はガツンとABSを効かせてしまっても効くのですが、ABSが効いた状態から少しずつブレーキペダルを緩めていったときの制動感の上昇がVRX3より高く感じられました。
タイヤの一番得意なスリップ率のところを使うことができれば、もっと制動距離を短くできそうです。これはクルマ側の問題かもしれませんが、ABSの制御プログラムをもっと細かくし、タイヤに合わせることができればより安全になると思いました。
氷上とは思えないグリップ力を体感 限界線を超えてもコントロール幅が広い
スケートリンクでは、2車線道路の交差点を曲がるようなシチュエーションのコーナリングも試しました。
アクセルのオン/オフにより走行ラインが膨らんだり戻ったりしますが、ちょっとアクセルを踏み気味にしてハンドルをいっぱい切ると、グリップ限界を超えて滑り出すのは、従来品のVRX3も新スタッドレスのWZ-1も同じです。しかし滑った状態でもまだグリップが残っている感じでよく粘っているという印象なのがWZ-1です。

WZ-1はVRX3と比較し、氷上ブレーキ性能11%短縮、氷上旋回(ラップタイム)4%短縮を実現した
WZ-1はVRX3と比較し、氷上ブレーキ性能11%短縮、氷上旋回(ラップタイム)4%短縮を実現したここでアクセルを戻すか、ハンドルを戻すことによってグリップを回復させますが、回復するときのグリップは氷上とは思えない力強さです。
氷上でのタイヤの摩擦円の大きさを感じると同時に、この限界線を超えたところでもスポンと抜けてしまうのではなく、まだグリップが残っているので安心感があります。つまりコントロールできる範囲が広いということです。
クルマが走るには広いとはいえないアイススケートリンクでは、せいぜい20km/hプラスくらいしか出せません。ということで氷上性能のほんの一端しか体験できていませんが、WZ-1の性能が大きく飛躍していることは確認できました。
路面温度の高いドライ路面でケース剛性の高さを実感 ロードノイズも小さい
また、夏の暑い日に一般道を走る機会を得ました。スタッドレスタイヤにとっては酷な走行でしたが、ヤリスと日産「アリア」(235/55R19 101Q)での試乗は、スタッドレスタイヤとは思えないしっかり感に驚きました。

「ブリザック WZ-1」を履いたアリアでドライ路面を試乗中の様子。ロードノイズ、パターンノイズともに気になることはなかった
「ブリザック WZ-1」を履いたアリアでドライ路面を試乗中の様子。ロードノイズ、パターンノイズともに気になることはなかったトレッドがヤワではなく、ドライ路面でしっかり踏ん張っていました。当たりは丸いのですが、ケース剛性(骨格部)がしっかりしているという感触もありました。その分、スタッドレスタイヤにしては乗り心地が硬めに感じます。
アリアはバッテリーEVなのでタイヤ騒音も聞こえやすいのですが、高速道路を走行してもゴォーというロードノイズもシャーというパターンノイズも気になることはありませんでした。
実際に使うユーザーが喜びそうなWZ-1の性能は、4年経過しても性能低下が小さいということではないでしょうか。氷上ブレーキ性能では、4年経過しても新品のVRX3の性能を上回るという実験結果が発表されています。
ブリザックはWZ-1に進化して、さらに安心感が長く続くスタッドレスタイヤになっているようです。