LIXIL【5938】配当利回り5%、株価は今後どうなる? 高値から半値まで下落 大型の構造改革は完了、事業利益1100億円へ

株価は金利と逆行 高値から半値に, 水栓やトイレで世界的シェア 海外M&Aで拡大, 海外で大苦戦、10年で最終赤字3回 手放した子会社でなぜ損失?, 大型の構造改革は完了 中期に事業利益1100億円を視野

LIXIL【5938】配当利回り5%、株価は今後どうなる? 高値から半値まで下落 大型の構造改革は完了、事業利益1100億円へ

株価は金利と逆行 高値から半値に

LIXIL(リクシル)の株価は金利との逆行が顕著です。2020年以降は各国で新型コロナウイルスへの対応から金融緩和に舵を切り、金利が世界的に低下しました。LIXILの株価は急伸し、21年9月には3365円の高値を付けます。住宅関連の事業を展開している同社にとって、金利の低下は業績拡大の思惑が働きやすく、買いが集まったとみられます。

経済が正常化に向かうと、インフレなどから各国で利上げの機運が高まります。世界的に金利が上昇し、日本も24年3月にマイナス金利を解除しました。LIXILの株価は反対に下落が強まり、現在は1700円台後半と、21年の高値3365円から半値水準で取引されています。

【LIXILの株価チャート(過去5年間)】

・株価:1787円(2025年8月4日終値)

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出所:Tradingview

株価の下落を受け、配当利回りは高水準です。今期は1株あたり90円の配当金を予想しており、配当利回りは5%を超えています。これは東証プライム市場の加重平均2.36%(25年7月)を大幅に上回る水準です。

【LIXILの予想配当利回り(2026年3月期)】

・予想配当金:90円

・予想配当利回り:5.04%

出所:LIXIL 決算短信

なお、配当金は課税の対象です。税率は約20%で、配当金が90円なら手取りは約72円まで減少します。

しかし、NISAなら非課税で配当金を受け取れます。個別株式は成長投資枠で年240万円まで購入でき、LIXILなら足元の株価で1300株まで取得できます。計画どおりなら、配当金は1300株で11万7000円となり、本来は課税される2万3400円の税金も生じません。

高い配当収入が期待できるLIXILですが、気になるのは業績の行方でしょう。金利の高止まりは、単に株価に影響しているだけでなく、業績にも影を落としています。今後はどのように成長させる計画なのでしょうか。見通しを解説します。

水栓やトイレで世界的シェア 海外M&Aで拡大

業績の前に、まずは概要を押さえましょう。

LIXILは住宅設備および建材の大手メーカーです。2011年に同業5社(トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリア)が統合して誕生しました。「アメリカンスタンダード」や「グローエ」、「イナックス」などのブランドでトイレやキッチンなどの設備、外装やドアなどの建材を製造します。また、「アイフルホーム」や「GLホーム」などのブランドで工務店フランチャイズも展開しています。

シェアは国内トップクラスで、水栓金具やトイレは世界でも有数です。LIXILは2000年代後半から海外M&Aを積極化し、北米・アジアのアメリカンスタンダードや独グローエなど、世界的な企業を相次いで買収しました。この押し上げ効果もあり、海外売上高比率は25年3月期で34.9%と、10年3月期(同2.7%)から飛躍的に上昇しています。

【地域別売上収益(25年3月期)】

・日本:9791億円

・アジア:1747億円

・欧州:1663億円

・北米:1711億円

・その他:136億円

出所:LIXIL 有価証券報告書

主力事業はトイレや浴室設備の「ウォーターテクノロジー」と、エクステリアや住宅関連サービスの「ハウジングテクノロジー」です。また、26年3月期からはキッチン・洗面とインテリアを統合した「リビング」の3セグメント体制となっています。

【セグメント情報(25年3月期)】

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出所:LIXIL 有価証券報告書

海外で大苦戦、10年で最終赤字3回 手放した子会社でなぜ損失?

続いて業績です。LIXILは構造改革の推進中で、コア事業への集中を進めてきました。20年に伊ペルマスティリーザや国内小売事業(ホームセンター)を売却したほか、25年4月には米国浴槽事業の一部譲渡や、同年7月には外装材(サイディング)事業の終了を決定しています。これに伴い、売り上げは減少傾向にあります。

利益も停滞の傾向で、直近10年では3度の最終赤字を経験しています。うち2回は海外M&Aが主因で、16年3月期は取得直後の独グローエで発覚した子会社の不正会計に伴う損失が、19年3月期は11年に買収したペルマスティリーザの不振が足を引っ張りました。24年3月期の赤字は、国内外の金利上昇による需要の減退が主な要因です。

なお、ペルマスティリーザは20年に売却しますが、24年3月期の赤字の一因にもなっています。ペルマスティリーザの実質的な売却代金の一部は、同社のキャッシュフローに応じて段階的に支払われる契約でした。しかし、キャッシュフロー条件を満たすことができなくなり、回収見込みがなくなったことから、当期に損失が生じる事態となりました。

25年3月期は最終黒字に復帰します。国内は新築向けで売り上げが減少したもののリフォーム向けが好調だったこと、海外は欧州および中東で売り上げの改善や構造改革が進んだことがけん引しました。もっとも、利益の水準は依然として低位にとどまります。

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出所:LIXIL 決算短信より著者作成

大型の構造改革は完了 中期に事業利益1100億円を視野

苦戦の続くLIXILですが、見通しはどうでしょうか。

今期(26年3月期)は増収増益の計画です。国内は引き続きリフォームが好調な想定で、中東やインドも売り上げへの貢献を見込みます。もっとも、金利の高止まりや人件費高騰などから、世界的な住宅設備の不況は継続する想定をしており、本格的な回復は翌期以降に持ち越される予想です。

【LIXILの業績予想(2026年3月期)】

・売上収益:1兆5400億円(+2.3%)

・事業利益:350億円(+11.7%)

・営業利益:300億円(+1.1%)

・純利益:80億円(+299.7%)

※()は前期比

※事業利益…売上収益から売上原価、販売費および一般管理費を控除して算出

※純利益は非継続事業を含む(その他は継続事業のみ)

※同第1四半期時点における同社の予想

出所:LIXIL 決算短信

今期は第1四半期まで決算が公表されています。売上収益は前年同四半期比1.4%減ながら、事業利益は同1310.6%増(14.1倍)と大幅な回復となり、最終赤字は9.1億円まで縮小しました(前年同四半期は58.6億円の純損失)。国内で新築向けが想定より堅調で、海外も欧州や中東で採算が改善したことが追い風でした。

続いて、さらに長期の見通しも確認しておきましょう。25年3月期の決算では大まかな方向性に言及しました。売り上げの拡大と並行し、収益性の改善や販管費の抑制に取り組むことで、28年3月期に事業利益1100億円を目指す内容です。

【業績の見通しおよびイメージ(~28年3月期)】

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出所:LIXIL 決算説明会資料

収益性の改善で核となるのが事業ポートフォリオの変革です。米国事業は浴槽事業の整理や協業で赤字からの脱却を目指します。また、トランプ関税政策に伴い安価な中国製品の流入が減る想定から、衛生陶器も収益性が改善する見込みです。国内はリフォーム事業を強化しつつ、デジタル技術を活用して採算の改善を図ります。ブランド別では利益率の高い「グローエ」に注力し、コア市場の欧州や成長市場の中東・インドなどで拡販する計画です。

今期は、先述のサイディング事業の撤退のほか、欧州の拠点再編などを終える見込みで、これにより大型の構造改革はおおむね完了します。計画どおり、LIXILは復活できるのでしょうか。投資家の注目が集まります。

若山 卓也/金融ライター

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。