セ界独走!佐藤輝明は三冠王も間近…《なぜ阪神だけがこんなに強い?》下柳剛が明かす昨年との「決定的な違い」

2025年シーズンのプロ野球、セ・リーグは阪神タイガースの一強という珍しい現象が起きている。2位以下に貯金がないという状態で、7月に早くもマジックが点灯。

この現象を野球評論家の下柳剛氏が分析。昨シーズンからの積み重ね、そして適材適所の役割分担。投打がかみ合っている理由を紐解いていく。

撮影/吉場正和

好調の要因は、投手陣の「最適な役割分担」

阪神タイガースが破竹の勢いで勝ち進んでいる。区切りの100試合を終えた時点で61勝37敗2分の貯金24。2位に12ゲーム差をつけてダントツの首位だ。7月30日の時点で早くも点灯したマジックは32に減った。この圧倒ぶりからして、2年ぶりのセ・リーグ制覇は固いと言える。

好調の要因はなんといっても投手陣の仕上がりのよさだろう。打撃陣も好調だが、3得点以下で勝利している試合も多い。なんといってもチーム防御率がジャスト2.00(100試合終了時。以下成績の数字は同)というぶっちぎりのまとまりのよさが目を引く。

昨シーズンも投手陣のレベルは高かったが、夏場以降の勝負所にリリーフ陣の登板過多によるしわ寄せが来た感は否めない。その点、今年から指揮を執る藤川球児監督はシーズン出だしの時点で様々なピッチャーを試した。

育成ドラフトで獲得した工藤泰成を開幕2戦目から中継ぎで起用したり、ドラフト1位の伊原陵人を中継ぎ、先発で投げさせたり、前年2試合の登板にとどまった岩貞祐太をリリーフ起用したり。湯浅京己が戻ってきたことも大きい。このように、多くの投手を様々なパターンで試すことにより、最適な役割分担を見つけていった。

中でも大きかったのは、先発候補だった及川雅貴をリリーフ転向したこと。46試合に登板し5勝3敗1S27Hの防御率0.81。これがハマり、さらにリリーフ陣にゆとりが生まれた。

結果、抑えの岩崎優も適度に休ませられるようになることで、全体のパフォーマンスも向上したように見受けられる。その証拠にケガ人がいない。唯一、交流戦中の6月6日のオリックス戦で側頭部にライナーを受け緊急搬送された石井大智も、7月1日に復帰し即登板、きっちり0点に抑えその後も調子のよさを維持、39試合に登板し防御率0.23というとてつもない数字を残している。

タイガース投手陣の成績のよさは個々の力量があるのももちろんある。だが、先発、中継ぎ、抑えと全体で好循環を保ちながらシーズンを進められていることが最大の成功要因だろう。

石井大智/Photo by Gettyimages

「チカナカ」コンビの出塁率が打線を牽引

ピッチャー陣が踏ん張って勝ちを拾う。勝利数が増えればチームの雰囲気も向上して打撃陣も活発になってくる。打撃面では、特に1、2番の出塁率の高さが際立つ。

1番の近本光司は.354(リーグ2位)、2番の中野拓夢の出塁率は.362(リーグ1位)。しかもこの2人が今シーズンはよく走る。盗塁数は近本が26(リーグ1位)、中野が14(リーグ5位)。

昨シーズンはリーグ5位だったチーム盗塁数が、今シーズンは81。2位の中日に20個の差をつけるダントツの数字を残している。その数字を牽引する彼らの躍動が、続く3番森下翔太、4番佐藤輝明、5番大山悠輔の打力を活かしている。

サトテル覚醒!昨年との「最大の違い」

クリーンナップの3人は昨シーズンそれぞれファーム調整を強いられるなど、苦しい時間を過ごした。その時の経験がいま活かされているようにも感じる。

特に4番の佐藤のホームラン数28はセ・リーグの中でも図抜けている。打点72もダントツ(ちなみに2位が森下の62、3位が大山の53)。ヘタすれば三冠王も狙えるかという位置につけているからこの後も楽しみだ。

昨年との違いは、どのボールもブンブン振り回すことがなくなったということ。バッティングカウントでは強振もするが、追い込まれたカウントでは変化球を拾う技術も身につけたことで得点力が上がった。

佐藤輝明/Photo by Gettyimages

その成長度合いを感じたのが8月1日の神宮でのヤクルト戦。延長10回、2アウト2塁の場面でヤクルトの6番手、大西広樹と対峙。初球、2球目とストレートをファールし、3球目の釣り球となる高めのストレートを見送って1ボール2ストライク。

ここで投じられた勝負球のフォークボールをすくい上げてライトオーバーの決勝タイムリー2ベース。見送ればワンバウンドになりそうなフォークを、右手でポーンとひっかけるだけであそこまでスコーンと飛ばす。持ち前のパワーを自分の中でコントロールできるようになっている。

プロフィール 

長崎県出身。1990年ダイエーにドラフト4位で入団。1996年、日本ハムへ移籍。先発・中継として活躍し、60試合以上登板が4度という鉄腕ぶりを発揮した。2003年に阪神へ移籍し、黄金期の中心ピッチャーとして9年で5度の二桁勝利。2005年には史上最年長で最多勝を獲得した。2013年の現役引退後は解説者として活躍する一方で、釣りやアウトドアなど趣味をいかした番組にも多数出演。                               柳に風【下柳剛公式チャンネル】https://www.youtube.com/@yanaginikaze

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