【申請しないともらえません!】シニア世代が対象の「給付金」や「手当」を5つピックアップ!

「年金に上乗せ支給されるお金」や「働く高齢者を支援する給付金・手当」

65歳以降も働く人が増加中。雇用保険関連の給付金・手当3選, 再就職手当(65歳未満), 高年齢雇用継続給付, 高年齢求職者給付金(65歳以上), 老齢年金に上乗せされる給付金・年金2選, 年金生活者支援給付金, 年金制度改正で「働き損」解消へ?在職老齢年金の見直しポイント, 老後資金の準備は「現役の今」がスタートライン

【申請しないともらえません!】シニア世代が対象の「給付金」や「手当」を5つピックアップ!

真夏日が続く8月。連日の猛暑で冷房を使う時間が増え、気づけば電気代が想像以上にかさんでいるという声も多く聞かれます。さらに、物価の上昇も家計にじわりと響き、限られた年金で暮らすシニア世帯には厳しい状況が続いています。

そんな中、実は高齢者向けに用意されている給付金の中には、「申請しないと受け取れない」制度があることをご存じでしょうか。

たとえば、年金生活者支援給付金など、条件を満たしていても申請していなければ支給されないケースもあります。この記事では、申請が必要なシニア向けの給付金制度について、対象者や要件をわかりやすく解説します。

もらい忘れを防ぎ、暮らしに少しでもゆとりを生むために、今一度制度を確認してみましょう。

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65歳以降も働く人が増加中。雇用保険関連の給付金・手当3選

65歳以降も働き続けるシニアは増加傾向にあります(※)。

しかし、シニアの就労を支援する制度が整備されつつある一方で、60歳を境に平均給与は男女ともに下がる傾向にあるのが現状です。

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、各年齢階級別の平均給与は以下の通りです。

・55歳~59歳:男性 712万円・女性 330万円

・60歳~64歳:男性 573万円・女性 278万円

・65歳~69歳:男性 456万円・女性 222万円

・70歳以上:男性 368万円・女性197万円

加えて現役時代のように希望通りの仕事を見つけたり、スムーズに再就職したりすることが難しいケースも少なくないでしょう。ここでは、働き続けたいシニアを支える雇用保険の手当や給付金を3つ選んでご紹介します。

※内閣府「令和7年版高齢社会白書」における、各年齢階級別でみた就業者の割合

65~69歳:男性 62.8%・女性 44.7%、70~74歳:男性 43.8%・女性 27.3%、75歳以上:男性 17.3%・女性 8.5%

再就職手当(65歳未満)

再就職手当は、早期の再就職を促すための手当です。失業後、再就職もしくは事業を始めるまでの期間が短いほど、より多くの手当を受け取ることができます。

再就職手当の支給要件

・対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人

・支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給

再就職手当の給付率

・手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なります。(1円未満の端数は切り捨て)

再就職手当の額

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なお、再就職手当を受け取り再就職先で6カ月以上雇用され、かつ再就職先での6カ月間の賃金が離職前の賃金よりも少ない場合は「就業促進定着手当」の対象となります。

高年齢雇用継続給付

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で働き続ける人を対象とした給付金です。60歳になった時点と比べて賃金が一定割合下がった場合に支給されます。

高年齢雇用継続給付:支給要件

・対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者

・支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合

高年齢雇用継続給付:支給率

・支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額

※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%

【早見表】高年齢雇用継続給付(2025年4月1日以降)

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出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

老齢年金を受給しながら、厚生年金に加入して「高年齢雇用継続給付」を受け取る場合、在職による年金の支給停止に加え、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する金額が支給停止となる点に留意しておく必要があります。

※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%

高年齢求職者給付金(65歳以上)

高年齢求職者給付金とは、65歳以上の雇用保険加入者が失業した際に、一時金として支給されるものです。

高年齢求職者給付金【誰がもらえる?】支給要件

・対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人

・支給要件:下記の全ての要件を満たした人

高年齢求職者給付金:給付金額

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出所:厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」

・支給額

65歳未満が受け取る「失業手当」は4週間に一度ずつ失業認定を受けてから給付されますが、この高年齢求職者給付金は一括で支給される点が大きな違いです。

老齢年金に上乗せされる給付金・年金2選

シニアの暮らしとかかわりが深い公的年金には、本来の老齢給付(老齢年金)を補完する制度がいくつかあります。

今回はこのうち、老齢年金を受給中の人が一定要件を満たす場合に「年金に上乗せされる」2種類の給付を紹介します。

年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給中で一定の所得要件を満たす人が受け取ることができるお金。老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金それぞれに給付金が設けられています。

ここではシニアの暮らしと関連が深い「老齢年金生活者支援給付金」にフォーカスします。

老齢年金生活者支援給付金の支給要件

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出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」について

・65歳以上の老齢基礎年金の受給者

・同一世帯の全員が市町村民税非課税

・前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は88万7700円以下(※2)である。

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない

※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額

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出所:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額(2025年度)は月額5450円です。

上記はあくまで基準額であり、実際の支給額は月額5450円を基準に保険料納付済期間により計算され、下記①と②の合計額となります。

①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月

②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1151円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

例)国民年金保険料を全期間(40年間)納付した場合、2025年度は「月額5450円=年額6万5400円」の給付金が支給されます(昭和16年4月1日生まれまでの方は計算が異なります)。

加給年金

「加給年金」は「年金の扶養手当(家族手当)」のような制度です。

老齢厚生年金を受給中の人が年下の配偶者や子どもを扶養する場合、一定要件を満たすとに年金に上乗せして受給できる年金です。

加給年金の支給要件

厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)

65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)

※ または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年

それぞれ、上記で示した時点で、「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合に年金に上乗せして支給されます。

ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)、退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受給する権利がある場合、または障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などを受給している場合、配偶者加給年金は支給されません。

加給年金の給付額

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出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

2025年度「加給年金」の年金額(年額)は以下のとおりです。

・配偶者:23万9300円

・1人目・2人目の子:各23万9300円

・3人目以降の子:各7万9800円

また、老齢厚生年金を受給している人の生年月日により、配偶者の加給年金額に3万5400円~17万6600円の特別加算額が支給されます。

加給年金は対象となる配偶者が65歳になると支給は終わります。ただしその配偶者が老齢基礎年金を受け取る場合、一定の要件を満たせば老齢基礎年金に「振替加算」されます。

年金制度改正で「働き損」解消へ?在職老齢年金の見直しポイント

内閣府が公表した「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数と就業率はいずれも上昇傾向に。

男女別に見た、各年齢層での就業者の割合は以下の通りです。

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出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

・65~69歳:男性62.8%、女性44.7%

・70~74歳:男性43.8%、女性27.3%

・75歳以上:男性17.3%、女性8.5%

一般的な年金受給スタート年齢である「65歳以降」も、働き続けるシニアは増加中です。

なお、2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、在職老齢年金制度の見直しが盛り込まれました。

これにより、2026年4月から、厚生年金をもらいながら働く際に「年金が減額される基準額」が月51万円(※2025年度の金額)から62万円へ引き上げられます。

収入増による年金カットを懸念していたシニアの「働き控え」が緩和され、より柔軟な働き方が可能になると期待されており、厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。

老後資金の準備は「現役の今」がスタートライン

公的年金だけでは、理想的な老後生活を送るのが難しくなっている今、申請すれば受け取れる給付金には漏れなく目を通しておきたいものです。

かつては、60歳で仕事を引退し、公的年金を頼りに老後を過ごすことが一般的とされていました。しかし現在では、65歳を超えても働き続ける人が増えており、年金だけでは生活費が不足する世帯も少なくありません。

だからこそ、現役世代のうちから老後に備えた準備をコツコツと始めることが大切です。

具体的には、毎月の固定費を見直すことや、資産運用を取り入れることなど、すぐに始められることがたくさんあります。少額からでも積み重ねていけば、将来の安心につながります。

理想の老後を実現するためにも、「まだ先のこと」と先延ばしにせず、一日でも早く行動を始めてみましょう。

参考資料

・内閣府「令和7年版高齢社会白書」第2節 高齢期の暮らしの動向1 就業・所得

・国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」

・厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

・厚生労働省「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」

・厚生労働省「再就職手当のご案内」

・厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」

・厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

・日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

・日本年金機構「か行 加給年金額」

・日本年金機構「加給年金額と振替加算」

・厚生労働省「令和7年版高齢社会白書」

・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」