みんなの給料に影響する「最低賃金1118円に引上げ」でフルタイムvsパートの給料格差は変わる?

長年の対立構造「フルタイムvsパート」業種別の「給料格差」大きい業界・小さい業界は?最低賃金の引上げでどう変わる?

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みんなの給料に影響する「最低賃金1118円に引上げ」でフルタイムvsパートの給料格差は変わる?

2025年8月5日厚生労働省が発表した「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」中央最低賃金審議会の答申によると、2025年度の最低賃金の全国加重平均は1118円になる見通しとのことです。これは前年より63円の引き上げ、引き上げ額・率ともに過去最大です。

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都道府県ごとの経済実態(物価や賃金水準)に応じて分かれる3つのランク

さらに、「106万円の壁」の撤廃も進行中。賃金の底上げや働き方改革が注目される中、実際にパートとフルタイムでどの程度の給料格差があるのでしょうか?今回は、厚生労働省の最新統計をもとに業種別の実態を解説し、今後の制度改革がもたらす影響についても紹介します。

※本記事では、厚生労働省の統計に基づき、「一般労働者」をフルタイム勤務の人として表記しています。この一般労働者とは、所定労働時間が通常の従業員と同じ人を指し、正社員のほか、フルタイム勤務の契約社員や嘱託職員も含まれます。

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フルタイムvsパートの給料格差「それぞれ給料は増えている?」

2025年7月24日に厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査(全国調査)5月確報」において、2025年5月の月間現金給与総額を見ると、一般労働者とパートタイム労働者の間に依然として大きな開きがあることがわかります。ここでいう「一般労働者」とは、週の所定労働時間が通常の従業員と同じフルタイム勤務の人を指します。正社員に限らず、契約社員や嘱託職員なども含まれるのが特徴です。

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一般労働者の平均給与について

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パートタイム労働者の平均給与とは

これは調査産業計ですが、パートタイム労働者の給与増加率が一般労働者を上回っていることがわかります。背景として深刻な人手不足、特にサービス業などで時給などが上昇しているためと考えられます。しかし、一般労働者とパートタイム労働者では、もらっている給料の金額そのものに約3.4倍の差があり、毎月手元に残るお金にも大きな違いがあることがわかります。

【業種別】給料格差の大きい・小さい業界とは?

給与の内訳(基本給や手当、賞与など)を業種ごとに比較すると、フルタイムで働く一般労働者とパートタイム労働者の間に生じている格差の実態がより明確になります。業種によって「格差が大きい」または「比較的小さい」とされる傾向はあるものの、月収ベースで見ると依然として大きな差が存在しているのが現状です。

「給料格差が比較的大きい業種」

・卸売業、小売業(スーパー、家電量販店、ネット通販など)

一般労働者の給与が約40万円であるのに対し、パートタイム労働者は約11万円と、約3.6倍の差があります。

・金融業、保険業(銀行、証券会社、保険会社など)

一般労働者の給与は約58万円に達する一方、パートタイム労働者は約16万円と、その差は約3.5倍です。

「給料格差が比較的小さい業種」

・医療・福祉(病院、介護施設、訪問看護など)

一般労働者の給与が約34万円であるのに対し、パートタイム労働者は約13万円と、約2.6倍の差があります

・その他のサービス業(美容院、クリーニング、家事代行、娯楽業など)

一般労働者の給与が約31万円であるのに対し、パートタイム労働者は約12万円と、約2.6倍の差があります

つまり、「差が小さい」とされる業種でも、給与額はおおよそ2.6倍程度の開きがあるのが現状です。給料格差が比較的小さい業種として「医療・福祉」「その他のサービス業」などあげましたが、それでも月収ベースでは10万円以上の差があるのが実態としてあります。

「106万円の壁」撤廃で何が変わる?影響と課題

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「106万円の壁」の撤廃で何が変わる?

この給料格差の解消に向け、大きな影響力を持つのが、社会保険の適用拡大による「106万円の壁」撤廃です。いわゆる「106万円の壁」とは、社会保険の加入要件を避けるために、年収を調整して働く人が多かった状況を指します。

しかし、今回の法改正により、段階的に企業規模や賃金の条件が撤廃され、将来的には、週20時間以上働く人は社会保険に加入できるようになる予定です。これにより、短時間労働者でも厚生年金や健康保険の保障を受けられ、将来の年金額の差も縮小されることが期待されています。

今まで収入を抑えていた人が働き方を見直すことで、実質的な賃金格差の縮小につながる可能性もあります。制度の移行は段階的に進められ、2029年までに個人事業所も含めて対象が広がる予定です。

ただし、社会保険料の自己負担が発生するため、手取りが減ると感じる人もおり、制度への理解と周知が今後の課題となります。

まとめにかえて

今回は、厚生労働省の統計をもとに、最低賃金引き上げや「106万円の壁」撤廃によって進む賃金改革と、フルタイムとパートの給料格差について解説しました。

まとめると、

・パートの賃金増加率はフルタイムを上回るも、収入格差は依然大きい

・業種によっては月収ベースで3倍以上の差が存在

・社会保険の拡大により、将来的な待遇格差の是正に期待

制度改革の動きをチャンスと捉え、自分に合った働き方やキャリア形成を前向きに考えていきたいですね。

参考資料

・厚生労働省「プレスリリース令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」

・厚生労働省「毎月勤労統計調査(全国調査)5月確報、第1表 月間現金給与額」

・厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」

・総務省「日本標準産業分類(令和5年7月告示)」